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名古屋銘菓「なごやん」60周年で味がリニューアル。実際に食べてみた!

大竹敏之名古屋ネタライター
昭和33年誕生の「なごやん」。日用のおやつからおみやげまで幅広く親しまれている

「なごやん」は名古屋人にとってはおなじみのお菓子。カステラ風の生地の中に卵風味の黄味あんが詰まった親しみやすい菓子として、長く、広く愛されています。

製造・販売の敷島製パンもまた名古屋ではなじみ深い老舗。大正9年創業で、「Pasco」(パスコ)のブランド名以上に、地元では今でも「敷島」への愛着を抱いている人は少なくありません。

そのラインナップの中で、パンの看板商品が「超熟」なら、菓子の代表商品が「なごやん」です。1957年、当時はまだ貴重だった卵や砂糖をふんだんに使ったお菓子として開発した「金鯱まんじゅう」が前身で、翌58年に地元でより親しんでもらえるよう「なごやん」と命名されました。

名古屋銘菓はういろうがダントツに有名で、知名度ではこれに「千なり」(両口屋是清)、「納屋橋まんじゅう」(納屋橋饅頭万松庵)、「きよめ餅」(きよめ餅総本家)が続く感じでしょうか。「なごやん」はこれらと比べて地元での認知度は遜色なく、一方でおみやげ需要が高い他の銘菓と比べると自宅用のおやつとして買われる割合が高いお菓子です。つまり、地元民にとっては最も身近な名古屋銘菓といえます。

敷島製パンに聞く! 「なごやん」人気の理由

3月21日~27日は名古屋のシンボル、ナナちゃん人形も「なごやん」仕様に!
3月21日~27日は名古屋のシンボル、ナナちゃん人形も「なごやん」仕様に!

なぜ「なごやん」はこんなに長く愛されているのか? 敷島製パンに尋ねました。

敷島製パン(以下「敷島」) 「“親しみやすいネーミング”“お求めやすい価格”“飽きの来ない素朴なおいしさ”が幅広い世代に愛されている理由と考えています。若い世代からも“おばあちゃんの家に行くといつも出してくれる”など何だかなつかしいお菓子として受け入れられていて、“コンビニのレジ横にあるとつい手が伸びてしまう”など名古屋人の生活に根付いているようです」

― 名古屋・東海の人に特に受け入れられた地理的要因はあったのでしょうか?

敷島  「愛知県の尾張・三河地区は古くからお茶をたしなむ文化があり、多くの和菓子屋が軒を連ねていました。こうした文化を背景に、ご家庭のお茶うけのひとつとして『なごやん』が受け入れられたのではないでしょうか」

― どういう場所で、どういう商品が売れていますか?

敷島  「スーパーが6割を占め、5個入を中心に売れています。総合スーパー16・6%、コンビニ7・7%、ドラッグストア6%、一般店(キヨスク含む)9・7%で、コンビニでは1個入、10個入以上の進物商品は駅の売店でよく売れます。最近は中部国際空港で外国人観光客の方がお土産に購入される機会が増えています」

― 他に最近の傾向は?

敷島  「お茶うけだけでなくコーヒーとも合うという声を聞くことが多くなっています。また、トースターで温める素揚げしてアイスをトッピングするなど、お客様の間で様々なアレンジがこの60年間で生まれています」

60年目にして初のリニューアル!味の変化やいかに?

こんな定番商品「なごやん」がこの3月1日、60周年にして初のリニューアルを果たしたのだそう。一体どんな変更をしたのでしょう?

敷島  「小麦粉を国産100%、うち55%を愛知県産小麦きぬあかりに変更しました。しっとりさ、やわらかさが高まるよう配合を見直し、おいしさがより長続きするようにしました。1966年にひとつひとつ手包みから機械化、2008年に包装紙を変更したことはありましたが、原材料から大幅に見直したのは初めてです」

変わった? おいしくなった? 新生・なごやん、地元っ子の評価やいかに?

60周年を機に初のリニューアル。皮と中身の黄味あんの一体感、しっとり感がアップしたという意見が多数を占めた。価格は5個入り378円(通販価格)
60周年を機に初のリニューアル。皮と中身の黄味あんの一体感、しっとり感がアップしたという意見が多数を占めた。価格は5個入り378円(通販価格)

原材料をより厳選し、なおかつ地元の素材を採用したのは評価したいところ。とはいえ、やはり問題は味です。60年も親しまれてきただけに、変化を好まない人もいるかもしれません。新生・なごやんのお味やいかに? 愛知県在住の20~50代に実食してもらうこととしました。

「久しぶりに食べましたけど、皮もあんもしっとりしていておいしい!」「皮はもっと固く、あんはもっともそもそしていたような記憶が…。久しぶりに食べたけどおいしいですね」「以前は皮の中であんが遊んでいる印象だったけど、皮があんをちゃんと包み込んでいて一体感がある」。

なごやんを食べるのは久しぶり、という人が多かったのですが、皆、記憶の中にある味よりもおいしくなっている、という感想でした。

かくいう筆者も何年かぶりに実食。カステラ生地であんを包む菓子は全国各所にあり、決して特別感はない…いやよくいえば安心感があります。皮とあんとのバランスやしっとり感は、似た系統にある某有名・鳥のお菓子にも優るとも劣らず。むしろ皮の存在感が控えめな分、あんのおいしさがしっかり口の中に広がり、満足感があります。これで1個80円未満(5個入り通販価格)なのですから、日用のおやつとして重宝されるはずです。

60年愛されているのはダテじゃない。地元の人は今までと変わらずお手軽なおやつとして、旅行者の人は相手を選ばない安心感あるおみやげとして、「なごやん」を選んでみてはいかがでしょうか。

(写真撮影はすべて筆者)

名古屋ネタライター

名古屋在住のフリーライター。名古屋メシと中日ドラゴンズをこよなく愛する。最新刊は『間違いだらけの名古屋めし』。2017年発行の『なごやじまん』は、当サイトに寄稿した「なぜ週刊ポスト『名古屋ぎらい』特集は組まれたのか?」をきっかけに書籍化したもの。著書は他に『サンデージャーナルのデータで解析!名古屋・愛知』『名古屋の酒場』『名古屋の喫茶店 完全版』『名古屋めし』『名古屋メン』『名古屋の商店街』『東海の和菓子名店』等がある。コンクリート造型師、浅野祥雲の研究をライフワークとし、“日本唯一の浅野祥雲研究家”を自称。作品の修復活動も主宰する。『コンクリート魂 浅野祥雲大全』はその研究の集大成的1冊。

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