ドラゴンズファン必見!「ドラバカ本」の世界

筆者がもともと持っていた本、古本屋や図書館で見つけた本など、新旧ドラバカ本の数々

選手でも監督でもOBでもないファンが書いたドラバカ本

プロ野球開幕間近!この時期はファンにとって最も幸せな季節です。全球団のファンが等しくひいきチームの優勝を夢見ることができるのですから…! もちろん我らが中日ドラゴンズも今年の目標はリーグ優勝!そして日本一です!! 5年連続Bクラス? そんなのは過去の話です。ファンが見つめる先にあるのは常にチームの輝ける未来です!(すでにちょっとヤケクソ?)

この開幕前の浮き立つ気分を盛り上げるために、今回はドラバカ本の数々を紹介します。ドラバカ本とは、選手でも監督でもOBでもないただのファンが書いたドラゴンズ本のこと。思い入れや思い込みだけで作ってしまった本を指します。

元ネタはこちら 爆笑ネタのオンパレード『虎バカ本の世界』

『虎バカ本の世界 阪神タイガースを「読む」』 /新保信長/2017年/ワニブックスPLUS 新書 純粋(一般のファンが書いたもの)・便乗・うんちく・有名人・内幕・フィクションと6カテゴリ57作を紹介
『虎バカ本の世界 阪神タイガースを「読む」』 /新保信長/2017年/ワニブックスPLUS 新書 純粋(一般のファンが書いたもの)・便乗・うんちく・有名人・内幕・フィクションと6カテゴリ57作を紹介

最初に明かしておきますが、元ネタは新保信長さんの『虎バカ本の世界 阪神タイガースを「読む」』。ご本人に了解を得ての公認パクリ企画です(笑)。

というわけで仁義を切るためにまずは元ネタの方をご紹介。西原理恵子さんの担当編集者として作中にもしばしば登場する新保さんは、熱狂的タイガースファンとしても有名。タイガース関連の本や雑誌は手あたり次第買い集めていて、蔵書は段ボール箱数個分にもおよぶとか。その中からファンが書いた思い入れあふれる傑作・怪作の数々をレビューしたのがこの本です。

帯のコピーの通り“どうかしている”と表現するしかない“愛がダダ漏れ”の逸話が満載。中でも虎ファン専用居酒屋のママさんの回想記『トラの母』にある甥っこのエピソードは驚愕・痛快。立教大学に合格したのに長嶋茂雄の母校と知って何と受験しなおしたというのです。しかも、長嶋が立教卒と知らなかったのも、阪神に肩入れするあまり他の球団、特に巨人の情報をシャットアウトしていたからだというのですから、セルフ情報統制にもほどがあります。

こんなトホホで、でも愛すべき阪神ファンの思いのたけがこれでもかとばかりに57冊分。入れ込みすぎてしまった人たちの症例集として阪神ファンならずとも存分に楽しめる快著です。

ドラゴンズファンの共通意識? 強烈なアンチ巨人志向

さて、ここからがいよいよ本編、ドラバカ本の紹介です。今回の企画のために古本屋や図書館でかき集めたものが多く、何十年と買い集めてきた新保さんの虎バカ本には付け焼刃でとてもかないませんが、それでもなかなか濃い本が見つかりました。

●『ああ中日ドラゴンズ』/鈴木武樹/1971年/白馬出版

著者は1934(昭和9)年静岡生まれの明治大学助教授、翻訳家。他に何冊か野球、ドラゴンズ関連の著者があり、78年に40代で鬼籍に入っています。

球団の歴史を細かくつづったお固い記録系文献なのですが、突如感情をあらわにしての巨人disりがスゴい。しかも、にっくきは日本プロ野球の父とされる正力松太郎。名古屋軍のオーナーだった田中斎(ひとし)を引き合いに、プロ野球の抱える問題点の元凶として徹底的に批判するのです。

いわく「日本では理想を追う正統は栄えず、いつでも場当たり主義が勝利を占める。もし正力に田中のような識見とプロ野球についての理解とがあったとしたら、日本のプロ野球は現在みられるような欠陥企業にはならなかっただろう」「正力が“プロ野球はもうけなくてもよい”という考えから出発したせいで契約金の高騰、赤字財政、金銭面、精神面で現在の惨状に陥った」(文意にのっとり一部要約)。

ドラゴンズにとってジャイアンツは親会社が新聞社同士ということもあってまさに宿敵。ファンのアンチ精神は阪神ファンに負けじと激しく、同書はその根深さをあらためて知らしめてくれます。

●『ドラキチ症候群のVの灯みえた』/さわきなおと/1991年/七賢出版

著者は出版当時30代の名古屋在住フリーカメラマン兼編集者。無名の一般人が著したまさしく純正ドラバカ本です。

全体的にドラゴンズへの一心な思いがあふれ出たほほえましい内容なのですが、こと巨人のこととなると一気に著者の暗黒面が噴き出てきます。中でも若きエースだった桑田真澄に対する毛嫌いはすさまじく、「まさしくあのキタナイ巨人のチームカラーが一番似合う、まったくもってイヤラシイ男である。(中略)あれだけ世間を騒がせてケロッとしているようではとてもいい人間であるとは思えない。まったく野球以前の問題である。どんなカタチであれ、仮に桑田がドラゴンズに入ったなら、ぼくはキッパリとファンを辞めることをこの場で公言しておく」と人間性を全否定。

純朴なファンでありながら、いや純朴であるがゆえドラファンであることよりもアンチ巨人である方が優先されてしまう。セパの情報がまんべんなく行き渡り代表チームも編成されるようになった昨今ではむしろ少数派になりつつあるドス黒いアンチ感情。巨人一強時代の余波がまだまだ根強かった時代性を感じます。

プレミアにサイン 古本屋で見つけたレア本たち

古本屋で見つけたレア・ドラバカ本。『プロ魂 高木守道』は本人のサイン、落款入り。名古屋市内の古本屋では海星堂書店(中区上前津)がスポーツ関連の古書やアイテムが充実している
古本屋で見つけたレア・ドラバカ本。『プロ魂 高木守道』は本人のサイン、落款入り。名古屋市内の古本屋では海星堂書店(中区上前津)がスポーツ関連の古書やアイテムが充実している

●『明日に向かって打て マル仙マークの特選本 中日ドラゴンズファン読本』/1987年/土曜美術社

星野監督就任の87年4月に出版。燃える男が監督として現場復帰し、世紀のトレードで三冠王・落合を獲得、ドラフトでは地元出身の超高校級左腕・近藤真一を引き当てるなどオフの話題をさらい、ファンの期待は最高潮に。その浮き足立った思いがそのまま内容に反映されています。

巻頭はドラファン作家、横田順彌・梅田香子両氏の対談。他はほとんど一般のファンの寄稿や座談会、つまり全編ファンの声のみ。しかも寄稿文の内容がこんな調子。「中日は優勝できる。なぜなら僕の入試が終わったから。なぜか僕が行く日は中日が勝つので、今年はバリバリ応援に行こうと思う。今シーズンの順位は分からないが、ただ言えるのは『中日優勝』の四文字である」(星野仁君・15歳)(文意にのっとり一部要約)。根拠ゼロの楽観に加え「順位は分からないが優勝」って意味不明ですが、それくらい期待に胸が膨らみすぎている証拠でしょう。

選手や監督、球団への取材は一切せずに構成された純度100%のドラバカ本。巻末の選手名鑑の写真はいかにも新聞から切り抜いてきたかのようで、表紙の星野監督の写真も含めて、ちゃんと球団の許可を取っているのか少々心配になるほど手作り感が満載です

ちなみに星野氏の急逝もあってかプレミアがついていて、発刊時980円だったものが古本屋で何と4800円になっていました(!)。

●『プロ魂 高木守道』中日スポーツ総局編/1989年/中日新聞社

球団初の2000本安打達成や革新的なバックトスなど、中日球団の歴史の中で最も偉大な選手といっても過言ではない高木守道。ところがその一代記である本書は、何ともともと郷里の支援者の原稿を元に本人が自費出版するつもりで、それを聞いた中日新聞が「大功労者に自費出版なんかさせてはならん!」と編集・発行することになったのだそう。いぶし銀と称された名セカンドの本は、出版の経緯もなんとも渋いものだったのです。

中日新聞が編集に乗り出したおかげでコメント陣はON、川上哲治、杉下茂、広岡達朗、江夏豊、村山実、若松勉らレジェンドがズラリ。それに交じって同級生や恩師も同等あるいはそれ以上のスペースでコメントを寄せているのが、自費出版計画の名残でしょう。

知られざるイイ話は巨人・堀内恒夫との関係。守道は20代前半の時に堀内から強烈なデッドボールをくらい、その後遺症で何年も打撃不振に陥りました。それを申し訳なく思った堀内は登板すると必ず初球は打ちごろの球を投げ、かたや守道はそれを絶対に打たなかったそう。マウンドとバッターボックスの間で情とプライドのキャッチボールが毎回行われていたのです。

と、まさにドラの至宝の一代記にふさわしい中身の濃い一冊ですが、おそらく中日新聞は守道の代わりに編集制作と販売を請け負う役割だったと思われ、自費出版の延長で関係者中心に配られて部数も限られていたんじゃないかと想像します。実際に私が古本屋で入手したものはサイン・落款入り。かなりレアな1冊であることは間違いありません。

●『ピカイチ交遊録 熱烈ドラゴンズ応援人生』/兵頭洋二/1999年5月/中日新聞社

ドラファン御用達の名物中華料理店「ピカイチ」の店主の本。星野仙一監督の対談を巻頭に、杉下茂、今中慎二、格闘家のピーター・アーツ、さらには若き日の福山雅治などとの交友自慢が基本的な趣旨ですが、PL学園の中村順司監督やプロ野球審判など渋い人選の対談で「へぇ~」なエピソードも。往年の中・高木1、2番コンビが片や打撃妨害出塁歴代1位、かたやヒット性のあたりを次々好捕することから記録員泣かせだった、と当の記録員が明かす対談は読みごたえあり。

かつて応援スタンドの名物だった宇野君人形は著者らが作ったもので、宇野勝選手本人立ち合いの下、寺で入魂の儀を行っていたという事実にもびっくり! ちなみにこれは本にも書かれていないことですが、2代目店主に尋ねたところ、当時人形は兵頭家の仏壇横に保管され、小学生だった2代目は夜中に起きだしてそれが目に入るたびにおしっこチビりそうに怖かったのだとか(笑)。

●『愛しのドラゴンズ! ファンとして歩んだ半世紀』/北辻利寿(きたつじ としなが)/2016年/ゆいぽおと

著者は現在、CBCの論説室長。新人時代、西武との日本シリーズでぼろ負けし暴徒と化したファンに蹴られながら、警官に事情聴取を求められても「同じドラファンは売らん」と突っぱねたエピソードも熱い!
著者は現在、CBCの論説室長。新人時代、西武との日本シリーズでぼろ負けし暴徒と化したファンに蹴られながら、警官に事情聴取を求められても「同じドラファンは売らん」と突っぱねたエピソードも熱い!

著者はCBCテレビの(元)報道記者。ハイライトは落合博満選手の番記者時代で、初対面でいきなり「勉強して来いよ」とスゴまれたのをバネにし、バットを科学的に解析してミートポイントがきわめて小さいことを立証したり、皿洗いまでして落合家に食い込み、信頼を得ていきます。不愛想ながらも気心の通じた相手には礼節をつくす落合の人柄も、一般にはあまり伝わっていないものではないでしょうか。

報道畑ならではの視点も興味深いところ。著者の卒論はジャーナリズムがテーマ。そこで盛り込んだのが江川と世論。入団時のいきさつから悪役のレッテルを張られてきた巨人のエース・江川卓は、プロ3年目の1981年、20勝をあげてタイトルを総なめしながら、投手最高の栄誉・沢村賞を逃します。同賞は記者の投票で決まり、すなわちマスコミは江川をまだ敵役扱いしていたといえます。ところが、これを機に「いくらなんでもかわいそう」と同情論が広まり、それまでのダーティーなイメージが払しょくされる引き金となるのです。ジャーナリズムが作らんとする空気が時に逆に作用する。これは文春砲の小室哲哉不倫報道が世の空気を変えた昨今のケースとも通じるものを感じます。

●『フクシ伝説 うちのとーちゃんは三冠王だぞ!』/落合福嗣/2010年/扶桑社

沖縄キャンプをアポなし取材し、父・落合監督(当時)を直撃するのはもちろん、西川球団社長とも熱く野球談議。人脈も取材力のうちと思えば、フクシ氏の取材力、恐るべし!
沖縄キャンプをアポなし取材し、父・落合監督(当時)を直撃するのはもちろん、西川球団社長とも熱く野球談議。人脈も取材力のうちと思えば、フクシ氏の取材力、恐るべし!

ドラファン、とは違うかもしれませんが、選手でも監督でもOBでもない、という条件には当てはまるのでドラバカ本に入れさせていただきます。ご存じ、落合博満のご子息・福嗣君が大学生の時に出版した1冊、これが意外といってはなんですが面白い!

幼少期から天下のドラ息子の呼び声高かった福嗣君。「撮影中テーブルの上で全裸で放尿した」「とんねるずに“イシバシ、早く食わせろよ”など暴言連発した」「巨人の背番号6・篠塚選手に“その番号パパにやれよ”と凄んだ」「女子アナに“ボクのパパは三冠王だぞ~”とセクハラしまくりだった」など、天真爛漫、豪快無比、傍若無人な伝説の数々の真偽を自ら明かすのをはじめ、天衣無縫なキャラが全編炸裂しています。

何より貴重なのは落合家総出演なこと。ファミリー人生相談はその白眉で、早漏気味と悩む青年に対する博満&信子夫妻の「1回でダメだったら3回でも4回でもやれ!」「で、とーちゃんは出るの?」「・・・・」「その前に膨らんでこないと思う」のやりとりはたまりません。天邪鬼でなかなか本心を明かさない三冠王・落合がこれほど素をさらした記録は他にないんじゃないでしょうか。おバカな企画本のふりをしてなかなかどうしてドラファンにとっては読む価値アリの痛快作です。

女子エースが活躍する懐かしの快作に胸にしみるアンソロジー。ファン必読のドラゴンズ小説

●『勝利投手』梅田香子/1986年/河出書房新社

無名の高校を甲子園優勝へ導いたエースは何と女性だった! 謎の投手の正体を見抜いてドラフト指名に導くのは星野仙一! 小説版『野球狂の詩』水原勇気編ともいうべきドリームストーリーです。

著者は学生時代にミニコミ「星野新聞」を発行していたほどの熱烈な星野ファン。それだけに小説内の星野仙一がとにかくカッコいい。発行の86年12月はまさしく星野監督が誕生したオフで、小説は2年後の優勝を見事予見していたともいえます。

他にも小松、牛島、谷沢、大島ら80年代の名選手が実名で登場して大活躍。試合展開もスリリングで、当時のドラゴンズをリアルタイムで応援していたオールドファンなら、今読んでもその頃のナゴヤ球場の熱気がよみがえるんじゃないでしょうか。

●『ナゴヤドームで待ちあわせ』/太田忠司 他/2016年/ポプラ社

収録5作品だけでなく、ドラファンの名古屋在住書評家・大矢博子氏による巻末の解説もこれまたドラゴンズ愛たっぷり
収録5作品だけでなく、ドラファンの名古屋在住書評家・大矢博子氏による巻末の解説もこれまたドラゴンズ愛たっぷり

名古屋在住だったりドラゴンズの熱狂的ファンだったりの作家5名による小説アンソロジー。各作ともテーマはドラゴンズ、というよりもドラゴンズファン心理。演劇の夢を捨てきれない和菓子職人が自らの人生を同い年の山本昌に重ね合わせる「マサが辞めたら」(太田忠司)、チアドラゴンズのイベントに参加することになったママたちのちょっとめんどくさい女の友情を描いた「ママはダンシング・クイーン」(吉川トリコ)など秀作揃いです。

中でも秀逸なのが「もうひとつの10・8」(深水黎一郎)。プロ野球史に残る世紀の大一番、最終戦にして勝った方が優勝という1994年10月8日の中日-巨人戦。多くのプロ野球ファンにとっては長嶋巨人が「国民的行事」と称したのにふさわしい名勝負として記憶されているのでしょうが、ドラファンにとっては苦く悔しいトラウマ試合。「もしもあの試合…」とドラファンなら誰もが夢見たその思いを題材にした、まさしくファン心理に響く珠玉の作品なのです。

ドラゴンズファン以外は読んでも読まなくてもご自由ですが、ドラファンは全員読むべし!と断固推奨します。

他にもいろいろありますが、とりあえず心に刺さった本をリストアップしてご紹介しました。「書くバカ」「出すバカ」「読むバカ」(by源石和輝アナ・東海ラジオ)が三位一体となって成り立つ野球バカ本。皆さんも熱いファン魂を受け止め、気分をアゲてシーズン開幕にのぞみましょう!

※筆者出演の東海ラジオ『源石和輝ひるカフェ』でも「ドラバカ本の世界」をテーマにおしゃべりしました。オンエアは3月16日。radikoタイムフリーで24日5時までお聴きできます。愛知・岐阜・三重は無料。エリア外はradikoプレミアムに登録すれば聴取可能です。(URLはこちら