元阪神、オリックスの金田和之投手 三菱重工Westのクローザーとして都市対抗へ!
13日に出場チームが出揃った『第93回都市対抗野球大会』。近畿地区でも熾烈な代表争いが繰り広げられました。その中で、きょうは第2代表として2年連続38回目の都市対抗本大会出場を決めた三菱重工Westと金田和之投手(31)を取り上げます。
阪神、オリックスでプレーした金田投手は今季から三菱重工Westに所属し、主に抑えで登板。チームは5月、JABA京都大会で優勝して既に10月の『第47回社会人野球日本選手権大会』出場を決めましたが、そこでも金田投手は4試合に投げて、すべて無失点という内容です。
その際に取材した記事はこちらからご覧ください。→「今がとても楽しい!」と語る元中日・武田健吾選手、元オリックス・金田和之投手の社会人1年目
では都市対抗野球大会近畿地区第二次予選で三菱重工Westが戦った4試合を振り返りましょう。
◆1対0で逃げ切った初戦
14チーム中5チームが本大会に出場できる近畿地区第二次予選で、三菱重工Westは2回戦からの登場でした。よって3つ勝てばもう第1代表となりますが、そううまくいかないのが強豪揃いの二次予選。第2代表はすんなりいった方かもしれませんね。
初戦は5月26日、第1代表決定トーナメントの2回戦(大阪シティ信用金庫スタジアム)で日本生命と顔を合わせました。
《都市対抗 近畿地区第二次予選》
◇第1代表決定トーナメント 2回戦 (5/26)
三菱重工West-日本生命
三菱 000 000 010 = 1
日生 000 000 000 = 0
▼バッテリー
【三菱】鮫島-守安-金田 / 拾尾
【日生】吉高‐舩越 / 立松
▼二塁打 三菱:佐藤
三菱重工West・鮫島優樹投手、日本生命・吉高壯投手の両先発が、毎回のように走者を出しながら要所を締め、6回まで無失点。7回からともに2人目の投手が登板します。
そして8回、三菱重工Westは2番・根来祥汰選手の内野安打などで2死二塁とし、5番・佐藤悠輝選手がタイムリー二塁打を放って先制しました。
その裏、7回から登板の守安玲緒投手が、ヒットや味方エラーなどで2死満塁としたところで金田和之投手に交代。代打を二ゴロに打ち取って9回裏も続投、2死から四球を与えるも最後は遊ゴロで試合終了。
オーバー30トリオ(鮫島投手と守安投手が34歳、金田投手は32歳)で完封リレーです。
◆準決勝は10失点の敗戦…
2日後の第1代表決定トーナメント・準決勝はNTT西日本戦。この試合は中盤までに3対1とリードしながら終盤に大量失点で完敗…。9回に登板した金田投手も5点を失う展開でした。なおNTT西日本は次の決勝でミキハウスに勝ち、第1代表となっています。
《都市対抗 近畿地区第二次予選》
◇第1代表決定トーナメント 準決勝 (5/28)
NTT西日本-三菱重工West
NTT 000 100 135 =10
三菱 002 010 000 = 3
▼バッテリー
【NTT】吉元-萩原-林-宅和-田村-大江 / 辻本
【三菱】竹田‐守安-近久-金田 / 拾尾
▼本塁打 NTT:辻本ソロ(守安)
山田3ラン(近久)
三菱:西岡ソロ(宅和)
▼三塁打 NTT:山田
▼二塁打 NTT:石山 三菱:西岡
3回1死一、二塁から4番・西岡武蔵選手のタイムリー二塁打で2点を先取、4回に1点返されますが、5回にも西岡選手のソロホームランが出て、6回まで3対1とリードしていた三菱重工West。先発の竹田祐投手は6回を投げ5安打1失点でした。
しかし7回に登板した守安投手がソロホームランを浴び1点差。8回は近久輝投手も3ランを打たれて5対3と逆転されます。9回には金田投手がまさかの大量失点…。先頭に二塁打を許し、そこから自身のミス(犠打野選と送球エラー)で無死二、三塁としてタイムリー。
さらに四球で無死満塁として、次は押し出しの死球。そのあと連続三振を奪って2死となるも、満塁で山田選手に走者一掃の三塁打。この回だけで5失点(自責は4)です。
打線は6回以降、ヒットや四球で走者を出しながら併殺などでチャンスを広げられず、10対3の大差で敗れた三菱重工Westは敗者復活戦へ回りました。
◆逆転直後に再逆転!決勝へ
敗者復活の第2代表決定トーナメント・2回戦(準決勝)は6月1日、日本製鉄広畑との対戦。この試合も中盤までに3対0とリードしながら8回に逆転されましたが、直後にまた逆転する勝負強さを見せています。
《都市対抗 近畿地区第二次予選》
◇第2代表決定トーナメント 準決勝 (6/1)
日本製鉄広畑-三菱重工West
広畑 000 000 040 = 4
三菱 100 020 03X = 6
▼バッテリー
【広畑】藤野-島袋-森本-伊藤-神頭 / 小出-福井
【三菱】鮫島-金田 / 拾尾
▼二塁打 三菱:湯口、中山
打線は1回、2番・根来選手の左前打と3番・湯口郁実選手の二塁打で1死二、三塁として4番・西岡選手が先制のタイムリー。5回は1死から9番・中山将太選手の二塁打と四球や内野ゴロで2死一、三塁として湯口選手が2点タイムリー。前半で3対0とリードします。
先発の鮫島投手は7回まで2安打無失点。出した走者は3回と6回、同じ選手に許した内野安打のみ。他は完璧に抑えました。ところが8回、先頭から連打されたあとタイムリー内野安打。1死後、さらに満塁から味方のエラーで2人を還し、ついに同点となります。
ここで鮫島投手は降板。1死一、二塁で金田投手が登板して、すぐに2死を取ったものの一、三塁となり勝ち越しのタイムリーを浴びました。
4対3と逆転されて迎えた8回裏の攻撃は、先頭から連続四球でチャンスを作り、1死後にまた四球で満塁。6番の代打・木村侑輝選手が右前タイムリーを放って2人生還!5対4と再逆転です。これで一、三塁として2死後、重盗成功で1点追加。
イニングをまたいだ金田投手が、9回は三者凡退で締めて逃げ切っています。
◆またも“胴上げ投手”に
そして迎えた4日の第2代表決定戦、相手は1日の第1代表決定戦でNTT西日本に敗れたミキハウスです。今度は3対2というスコアでしたが、6回から今季は先発に回っている鮫島投手が中2日で登板し、そのあと金田投手も2イニングを投げて1点のリードを守り切りました。
《都市対抗 近畿地区第二次予選》
◇第2代表決定戦 (6/4)
三菱重工West-ミキハウス
ミキ 100 010 000 = 2
三菱 210 000 00X = 3
▼バッテリー
【ミキ】高橋 / 井上
【三菱】竹田‐鮫島-金田 / 拾尾
▼本塁打 三菱:西岡2ラン(高橋)
▼二塁打 ミキ:中坪
1回表にスクイズで1点を先取されますが、その裏にすぐ反撃。2死から3番・湯口選手が左前打し、続く西岡選手の2ランで逆転しました。2回にも7番・中山選手の右前打などで2死三塁として1番・根来選手が中前タイムリーを放ち3対1。しかし3回以降は追加点がありません。
一方、先発・竹田投手は2回以降を抑えていましたが、5回に3安打を浴びて1点差とされます。そして6回からは1日に先発登板した鮫島投手が2イニングを0点に抑えると、8回は金田投手がマウンドへ。2四球で2死一、三塁としたものの無失点。9回は3人でピシャリ!1点のリードを守り切って第2代表決定です。
試合が終わった瞬間、マウンドでチームメイトを迎えながら相好を崩す金田投手がいました。また記念撮影で、スタッフから笑いを要求された誰かが盛り上げた時も、普段のポーカーフェイスとはまったく別の笑顔が!本当にいい表情だったんですよねえ。
◆「金田の加入が大きい」と監督
試合後、鮫島投手について聞かれた三菱重工Westの津野祐貴監督(35)は「バッテリーコーチや本人ともいろいろ話して適正を見極めたところ、やっぱり先発でやりたいと鮫島自身も言っていたので、それならと春先から先発でやらせています。しっかりゲームも作ってくれる、いいピッチャー」と答えました。
そのあと、こう続けています。「それと、もうひとつは金田の加入というのが大きいかなと。後ろをしっかり任せられる金田が入ってきたので、鮫島には自信を持って頭から行ってくれと伝えられました」
1点差の展開で8回に投入したことに関しては「鮫島がよかったのでそのまま行かせるか、もしくは金田を入れるか、ちょっと悩んだところはあったんですけど、金田もクローザーとして任せていますし、2イニングも経験済みだったので自信を持って8回から行ってくれと伝えた」のだそうです。
プロでやっていた金田投手がチームに与える影響は?「まだまだ野球に関しての向上心がありますし、グラウンドにも一番早く来て準備するとか。若い選手に自分からアドバイスもしてくれて、若いピッチャーの見本となるような、人間的にもプレーヤーとしても本当に素晴らしいと思います」
あんまり自分からしゃべるタイプではないみたいですけど、アドバイスは積極的に?「わりと、話しかけたら倍くらい返ってくるので(笑)。若い選手も臆さず聞きに行って、聞いたらしっかりアドバイスしてくれているようです」。本人にも聞いてみましょう。
◆全国出場、そして日本一のために
では、都市対抗二次予選で4試合すべてに投げた金田投手のコメントです。決定戦は「8回から行かせたいと言われて、準備していた」とか。いきなり先頭に四球でしたね?「はい、ほんと入りが悪くて。2球で追い込んでからボール球が続いて…反省ですね」
1点差で、本大会出場がかかった登板。どういう心境で?「1点を守って本大会(出場)を決めるためにこのチームに所属させてもらっているので。みんなが勝ちの状態でつないでくれたので、絶対守るぞという気持ちでマウンドに上がりました」
9回はかなり気合が入っていたのでは?「いや8回も入っていましたよ(笑)。ずっと入っていました」。四球2つに焦ることはなく?「正直焦りましたけど」。そうなんですか。やっぱりポーカーフェイスですね。
2戦目は失点してしまいました。「自分のエラーもあったり、負けている展開だったとか、そこで対応できなかったというか。何とか流れを持ってくるピッチングをしようと、真っすぐで押そうと思ったら真っすぐを打たれたので…」
「でも」と続けて「そこで、今度はいろんな球を使っていこうという話が出て、きょうはスライダーなどを有効に使えたかなと。その反省が生きたと思います」と振り返りました。しっかり生かせてよかったですね。
◆アドバイスはできる範囲で?
社会人1年目で都市対抗の本大会出場がかなったことを、どのようにとらえていますか?「チームの目標が日本一ということで、その第一段階の切符を取れたのは大きいですし、それを一番近い目標としてやってきたから、チーム一丸となって取れたのはとてもよかったです」
JABA京都大会の決勝もこの球場で、その時もやはり全国大会出場を決める最後のマウンドで投げました。「そうですね。試合前に待機している時から『JABA大会と一緒やな』という話をチームメイトとしたり。そういうゲンを担いで試合に臨めて、いい結果もついてきたのでよかったです」
一緒に自主トレをやっていた藤川球児さんから、社会人野球の世界へ入るにあたって何か言葉を?「お前の決めた道やから頑張れというのと、中途半端でなく、やるならとことんやれと。そんなに甘くないぞという言葉をいただきました」
ところで、きょう先発した竹田投手にアドバイスなどは?「頑張ってくれ、頼んだぞと(笑)」。それだけですか?津野監督が、若い選手にアドバイスをしてくれているとおっしゃっていましたよ、と言うと少し笑います。
「アドバイスというか、気にかけて声をかけるようにはしていますけど。技術的なことを試合前に言っても仕方ないんで落ち着いてマウンドに上がれるよう会話しながら励まして。そんなくらいです」。逆に、向こうから聞かれることも?「そうですね、練習中とか。アドバイスできる範囲でやっています」
昨年の合同トライアウトで、日本ハムの新庄剛志監督が金田投手を高く評価していました。覚えていますか?「名前を出してもらって励みになりましたし、野球を続けたいと思わせてくれたきっかけでもありますので、感謝していますね」
◆「ホッとしています」
このチームでの自身の役割は何でしょう?「日本一という目標に向かって、後ろでクローザーとして頑張ってくれと、GMや監督やピッチングコーチにも言ってもらったので、チームのために最後のピースにはまるよう、と思ってやってきました」
GMからは最初に“後ろで”と?「はい、最初お話をいただいた時に『後ろで考えている』と言われていたので、それに向けてという感じですね」
それは意気に感じる?「そうですね。1年目で責任重大な後ろというポジションを任せてもらうには、やっぱりチームの信頼も必要ですし、そういう難しいポジションをやらせてもらうというのはやりがい、生きがいになるので」。そう答えたあと、少し微笑みながらポツリと言いました。
「とりあえずホッとしています。今は。決まってよかったです」
これが本音でしょうね。任されたことに応えなければ、と自身に課した責任はとても重かったはず。全国大会である“ダブルドーム”は決まって、肩の荷物がちょっとだけ軽くなったかもしれません。とはいえ、本番は7月と10月。また背負い直して頑張ってください。
夏は東京ドームで、秋には京セラドーム大阪で投げるチャンスをつかみましたね。「楽しみですねえ。プロで使っていた球場で、アマチュアですけど全国大会という舞台で投げられるのは楽しみです」
鹿児島に住むお父さんも、金田投手の奮闘ぶりを時々ご覧になっているとのこと。JABA京都大会は雨天順延で決勝を見られなかったもののJABA九州大会は観戦されたそうで、7月の東京ドームへも「もちろん行きたいです!」とおっしゃっていました。
<掲載写真は筆者撮影>