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連勝が止まろうと、首位の座を譲ろうと「また奮起できる!」と平田監督《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
3安打と気を吐いた陽川選手。写真は2018年4月、鳴尾浜でのゴリラポーズです。

 きのう15日に阪神甲子園球場で行われたウエスタン公式戦は、阪神タイガースの19連勝がかかった試合であり、また首位の阪神をゲーム差なしで追うソフトバンクとの、いわゆる“首位攻防戦”でもありました。

 ファームの場合、記録や順位は目的でなく、あとからついてくるものだと言いますが、9月の中盤を迎えて、そういう戦いができることは何よりも励みになるでしょう。うまくなるために練習を重ね、1軍を目指して努力を続けた結果が優勝や個人タイトルなら、それは選手たちにとって最高のご褒美だと思います。

 また、連勝記録はチーム力の証。連なる白星とともに強くなって、個々のレベルも上がっていくような印象を受けました。そんな様子を間近で、グラウンドやスタンドで見ることができない状況が、とても残念。あ、先週末からの試合は甲子園なので観戦可能ですね。

 15日の試合は初回にいきなり3ランで先制され、いつものように追いつくことも逆転することもできず、5対1で敗れた阪神。7月28日以来の黒星となりました。先取点を許すのは8月25日のオリックス戦以来です。しかも5失点というのは連勝中の最多で、8月7日の広島戦と、きのうの2試合しかありません。

 連勝は18でストップしたけど、これまでの球団記録だった10連勝も、ウエスタン・リーグ記録だった13連勝も、ファーム記録だった15連勝も一気に塗り替えたわけです。しかも負けなかった1か月半の19試合で身についた経験と力は貴重な財産。いつか1軍で生かしてくれると信じています。

 そして、この敗戦で首位の座をソフトバンクに奪い返され、ゲーム差1.0の2位に戻りました。対戦成績も12勝13敗2分けで1つ負け越し。とはいえ、きょう16日に阪神が勝てばゲーム差はなくなって、また阪神が首位に立ちます。これが最後の直接対決なので、勝っておきたいですね。

7月28日以来の黒星

 では15日の試合を振り返りましょう。当初は中田賢一投手の先発予定でしたが、14日の雨天中止を受けて二保旭投手がスライド登板しています。ソフトバンクは2年目の大関友久投手で、こちらの打線は4回までノーヒット。それどころか四球もエラーもなく完璧に抑えられました。

 5回に陽川尚将選手が初ヒットの二塁打を放ち、6回にやはり陽川選手のタイムリーが出て、9回には満塁のチャンスも作った打線ですが、結局1点しか取れていません。なんせソフトバンクの4投手から計13個の三振を喫していますからね。要所、要所で…。これでは逆転も難しいでしょう。

 なお2回の守備で、サードを守っていた北條史也選手にアクシデントが発生しています。ファウルボールを追って金網に伸ばしたグラブが金網に当たり、そこで左肩を痛めたかもしれません。左腕を動かさないよう抱えてベンチへ戻った姿は見えました。そのまま交代となり、詳しいことはまだ不明。大事に至らなければいいんですけど、かなり心配ですね。

ウエスタン公式戦》9月15日

 阪神-ソフトバンク 27回戦 (甲子園)

  ソフ 300 100 100 = 5

  阪神 000 001 000 = 1

◆バッテリー

 【ソ】○大関(5勝1敗3S)(5回1/3)-尾形(1回2/3)-嘉弥真(1回)-椎野(1回) / 渡邉陸-九鬼(8回~)

 【神】●二保(4勝2敗)-佐藤蓮-岩田将-鈴木-アルカンタラ-望月 / 長坂 

◆本塁打 ソ:アルバレス2号3ラン(二保)、水谷4号ソロ(岩田将)

◆二塁打 ソ:野村 神:陽川

◆盗塁 神:山本(2)

◆打撃    (打-安-点/振-球/盗/失) 打率

 1]中:江越  (5-1-0 / 4-0 / 0 / 0) .243

 2]三:北條  (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .300

 〃一:荒木  (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .310

 3]一三:板山 (3-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .262

 4]右:佐藤輝 (4-0-0 / 3-0 / 0 / 0) .063

 5]指:陽川  (4-3-1 / 1-0 / 0 / 0) .263

 6]左:高山  (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .214 

 7]遊:山本  (4-1-0 / 1-0 / 1 / 0) .308

 8]捕:長坂  (3-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .216

 〃打:片山  (0-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .191

 9]二:遠藤  (3-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .217

 〃打:榮枝  (1-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .267

◆投手     (安-振-球/失-自/防御率) 最速

 二保   4回 80球 (6-4-2/4-4/2.92) 148

 佐藤蓮  2回 31球 (0-2-2/0-0/6.06) 149

 岩田将 0.2回 8球 (1-1-0/1-1/3.38) 134

 鈴木  0.1回 14球 (1-1-1/0-0/1.80) 143

 アルカ  1回 16球 (0-1-0/0-0/0.00) 152

 望月   1回 9球 (0-0-0/0-0/9.64) 152

      ※“球”は四球と死球の合計

《試合経過》※敬称略

 二保は1回、先頭の明石に四球を与え、続く真砂の左前打などで1死一、三塁として4番・アルバレスに3ランを浴びました。2回は先頭・高田の左前打があったものの後続を断って、3回は連続三振で2死を取ってからアルバレスの中前打、野村の右越え二塁打を許しながらも0点に抑えています。

 ところが4回、増田に四球を与え自身の暴投もあって2死三塁とし、1番・明石の中前タイムリーで4点目を失いました。5回から登板した佐藤蓮は2イニング続けて先頭に四球を与えますが、5回は併殺で切り抜け、6回は犠打と暴投により三塁まで進めるも連続三振で無失点!

 7回は岩田将が山本の好守備や三振で簡単に2死を取ったと思ったら、3番・柳町の代打・水谷が初球を左中間へ!ぎりぎりでフェンスを越えるホームランでした。ここで鈴木に交代。アルバレスの中前打と野村への四球で2死一、二塁とするも中谷は三振で追加点は与えていません。

 8回のアルカンタラは2死後に、投ゴロをつかみ損ねるエラーで走者を出しますが無失点。9回の望月は、この日の投手陣で唯一となる三者凡退で締めました。

 打線はソフトバンクの先発・大関に4回までパーフェクトピッチングを許し、5回に先頭の陽川が初ヒットとなる二塁打を放ちます。左中間フェンスの最上部を直撃する当たりは、そのあとに出たソフトバンク・水谷の打球と同じような感じだったので、非常に惜しかったですね!次の高山が中前打で続くも後続を断たれて得点なし。

 しかし6回、先頭の江越が中前打、1死後に板山が四球を選び一、二塁となったところで大関から尾形に交代。佐藤輝の三振で2死となったあと、陽川が左前タイムリー!なおも一、二塁のチャンスで高山は三振に倒れますが、何とか1点を返した阪神打線です。

 7回は先頭の山本が中前打し、1死後に二盗成功。このチャンスも連続三振で生かせず、2者残塁。8回は嘉弥真の前に三者凡退で、ここまで来たら連勝はストップかなと思ってしまいますよね。さすがに。

 そして9回、ソフトバンクは椎野が登板し、先頭の陽川が、この日3本目となる右前打を放ちます。あとが続かず2死一、二塁となりましたが、代打・片山が四球、代打・榮枝が右前打で満塁!しかし江越は三振で試合終了。いつものように中盤からチャンスを作ったけど…残念な結果です。

「たまたま負けただけ。気にすることはない」

 では平田監督の談話をご紹介します。少し入れ替えたり、削ったりした部分がある点はご了承ください。まず連勝がストップしたことに関して「最後まで粘ってあと一押しというところまで行って、ゲーム的にもみんな集中力を持ってやってくれたので、切り替えてやるだけ」という言葉でした。

 ソフトバンクに首位を譲った点も「結果的にはそうだけど、これで選手たちもまた奮起して、あす(16日)のゲームもまた楽しみ。そういった意味では全然」と平田監督。たまたま負けただけで、何も気にすることはないと話しています。

 先発の二保投手については「間も空いたしね。立ち上がりは4番のバッター(3ランを許したアルバレス選手)もちょっとわからない、手探りなところもあったので。一発食らったあとはよく粘っていたけどね。しょうがない」とのことです。

 打線はチャンスを生かしきれない部分もありましたが、陽川選手は3安打。相手投手によって狙いが違ったのでしょうか?「たまたま。ただコースに逆らわず、ストレートに力負けしないバッティングをしていたので、その辺は調子が上がってくればいいかなという感じだよね。陽川はちょっと当たってきたかな」

 佐藤輝明選手の3三振は「別にいいんじゃないの。三振することをどう思うとかじゃないし、そのために今ファームでやってるんだから。それはもう、また練習するなり、10日間どっちにしても上がれないんだから。今、足の上げ方とかバットの位置とか、いろんなところをやってる。そこは全然、気にもしていない」と平田監督。意に介さず、というところでしょう。

1軍とは意味合いが違う首位攻防戦

 首位攻防戦の真っただ中にいる1軍で、14日の9回に飛び出したマルテ選手の同点3ランを振り返り「やっぱりああいうところで1位にいるチームだなと思うよ。四球、四球でボカーンだろ?それまで拙攻が続いていたと言いながらも、あそこでホームランが出るというのは4番として見事だな。やっぱり見ていて粘りというのは感じるもんね」と絶賛です。

 ただし「ファームは関係ない。ファームは自分たちが1軍の選手を見て、ホームランを打ったからって喜ぶヤツなんかおらんよ」と付け加えています。首位攻防戦という意味では1軍と共通するかと問われても「一緒にしちゃいかんよ。レベルが違うんだから。まあ緊張感があるのはいい。それはいいねん。ただ“首位攻防戦”の意味合いが違うからね」と一蹴。

 さらに平田監督は続けます。「みんな気を抜くことなく、しっかり守って、ただ結果が負けたというだけ。そこは切り替え。あす杉山をどうやって打つか。(佐藤)輝がバーンって打つかもしれん」と。先発予定は藤浪晋太郎投手とソフトバンクの杉山一樹投手。「晋太郎がファームで杉山と投げ合う。非常に楽しみだね」と繰り返しました。

 最後は途中交代した北條選手の件です。「うーん、それが心配やな。トレーナーがチェックしていると思うんだけど。故障か、どうかなというとこやね。詳しくはまだ聞いてないのよ。脱臼かなんか。前もやったことがあるらしいわ。ガッと引っかかったわけ。どうかわからん」と気がかりな様子。

 ベンチに帰った時は、そんなきつい感じじゃなかったとか。でも平田監督は「(同じような負傷を)前にもやっていて、北條は我慢強い、痛みに強い子だから、やっぱり交代しなきゃいけないということは痛くないわけがない」と言います。それだけに、より心配ではありますね。

最後にヒーロースピーチが聞きたい!

 おしまいに、平田監督からのお叱りを覚悟しつつ…また書いてしまいます。きょう16日の試合結果による優勝へのマジックナンバーについて。まず阪神が勝てば阪神にマジック9、ソフトバンクが勝てばソフトバンクに8、引き分ければソフトバンクに9が点灯する計算となりました。

 ただ、前の記事でも書いたように残り試合が9となった時点でのマジックとか9なんて全勝した場合の計算ですから、まあ“あってないような”数字です。とはいえ、やっぱり勝って対戦成績を五分に戻して終わりたい相手。

 そんなソフトバンクとは今季最終戦で、しかも甲子園での試合もこれが今季ラストです。もちろん鳴尾浜でも24日からオリックス3連戦がありますけど、無観客なので…。お客さんがいらっしゃる甲子園で最後に整列して、願わくは誰かのヒーロースピーチを聞いて締めくくりたいですよね。藤浪投手と杉山投手の投げ合いも含めて、楽しみにしています。

《掲載写真は筆者撮影》

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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