危機感を持って臨む日本選手権最終予選 カナフレックス・藤井宏政コーチ(元阪神)

ベーブルース杯・トヨタ自動車戦の前にシートノックを行う元阪神の藤井宏政コーチ。

 今回もまた社会人チームのカナフレックス、そして元阪神タイガース・藤井宏政コーチ(30)の話題です。5月1日から6日まで、岐阜県の長良川球場と大垣市北公園野球場で『第73回JABAベーブルース杯大会』が行われました。優勝すれば、『第46回社会人野球日本選手権大会』への出場が、地区最終予選を経ずに決まる“日本選手権対象大会”の1つです。

 この対象大会は3月の東京スポニチ大会から5月の北海道大会(例年は6月以降)まで11あり、ベーブルース杯大会は毎年ゴールデンウィークの開催です。ことしは5月1日から4日間で予選リーグ、5日に決勝トーナメントという日程だったのですが、出場辞退チームがあって試合開始時間と場所が変わったり、天候に左右されたりしていました。

 まず大会初日が雨で、予選の1試合だけ(Cブロックの明治安田生命vs三菱自動車岡崎)ができず5日へ延期。この時点で決勝トーナメントはいったん6日に変更されたのです。ところが予選リーグ中に、この1試合を大垣市北公園で行い 、同じ日に長良川で決勝トーナメントを行うと変更されました。結果的に5日は雨で、すべて6日へ順延となっています。

 最後に残った予選1試合では、三菱自動車岡崎が勝って獲得ポイント4。これはCブロックの1位で決勝トーナメントに進んだJR東日本東北の3ポイントを上回っているんですよね。社会人野球を取材するようになって8年目、まだまだわからないことがたくさんあります。

カナフレックスとベーブルース杯

 カナフレックスは日本野球連盟にチーム登録して2シーズン目、2015年に初めてエントリーされたのがベーブルース杯大会で、それから毎年参加してきました。日本選手権対象大会は各地区連盟の推薦に基づき、日本野球連盟が承認したチームがエントリーされるというものです。

 この年の対象大会出場はベーブルース杯だけでしたが、翌2016年からは2大会ずつ出ているカナフレックス。1つはベーブルース杯で、もう1つが2016年から2019年までは長野大会(2020年は休止)、ことしが東京スポニチ大会でした。どの大会も予選リーグの成績が1勝2敗か0勝3敗で、決勝トーナメント進出はまだありません。

 ここで、昨年までのベーブルース杯大会を振り返ってみましょう。

 初出場の2015年は私も長良川球場まで見に行きました。なんと初戦の相手が、当時この大会に毎年参加していた中日ドラゴンズのファームだったんですよね。試合前に、球場の外で立ち話をする藤井選手と中日・三ツ俣大樹選手の写真を撮った記憶があります。

 この大会で何度か優勝もしている中日に対し、カナフレックスは6回まで2対2と善戦しました。しかし終盤に入って四球や長打で7点を失い、終わってみれば2対9で8回コールド負け。次の日本通運戦は9回まで戦ったものの0対4で敗戦、最後の東邦ガス戦は16安打を浴びて5対14と今度は7回コールド負け。通算0勝3敗で予選リーグ敗退です。

※ベーブルース杯大会が行われた岐阜県の長良川球場。ことしの写真です。
※ベーブルース杯大会が行われた岐阜県の長良川球場。ことしの写真です。

 でも2015年は近畿最終予選で勝ち残り、創部2シーズン目で『第41回社会人野球日本選手権大会』に初出場しています。組み合わせ抽選会で当時の梁川浩樹マネージャーが引いたのは、なんとまあ開幕試合!西濃運輸に1対3で敗れましたが、自責点1で9回を投げ切ったエースの大西健太投手は大健闘でしょう。

 2016年のベーブルース杯大会では、初戦の三菱重工名古屋に5対2で勝ち!藤井選手は1回に先頭打者ホームランを放つなど4安打の活躍でした。しかし次のJFE西日本戦は0対7で8回コールド、最後はNTT東日本に0対2と2試合とも完封負けで決勝トーナメントが遠いカナフレックスです。

 2017年は、まず新日鐵住金東海REXと対戦。4対4のまま延長戦に入り、タイブレークの10回に一挙5点を追加して9対5で勝ちました。2番の山崎壱征選手が3安打4打点と気を吐いています。ところが残り2試合は、東京ガス戦が2対13で7回コールド負け、Honda鈴鹿戦は2対10で8回コールド負けという結果。

試合とはまったく関係ないのですが…岐阜の駅前広場にある織田信長公の像も、今はマスク着用でした。
試合とはまったく関係ないのですが…岐阜の駅前広場にある織田信長公の像も、今はマスク着用でした。

 2018年の初戦は前年と同じ新日鐵住金東海REXで、1対0の勝ち!宮城慎之介投手(昨季で退部)が3安打完封勝利です。でも2戦目以降は西濃運輸に1対11でコールド負け、最後は鷺宮製作所に3対6で敗れ予選敗退。この年は最終予選を突破して、3大会ぶり2度目の日本選手権出場を果たしましたが、優勝した三菱重工名古屋と1回戦で当たり3対5で負けています。

 そして2019年も、やはり初戦が白星でした。SUBARUとの戦いは4対4で延長戦にもつれ込み、タイブレークの10回表に3点勝ち越されますが、その裏に武田勇樹選手の3ランなどで4点を取り、7対6と逆転サヨナラ勝ち!延長戦に強いカナフレックスですね。その後は三菱重工名古屋に8対16で8回コールド負け、王子に1対5で負けて予選敗退。

 昨年はベーブルース杯大会も日本選手権本大会も実施されなかったので、ここまでの成績は5大会に出場して計15試合を行い、4勝11敗。勝った4試合はすべて大会の初戦です。またコールド負けが7試合ありました。これが何より悔しいでしょう。出場チームは強敵ばかりですけど、ここを乗り越えなければ決勝トーナメントには行けませんからね。

◆東京ガス相手に善戦した新人右腕

 では、ことしの『第73回JABAベーブルース杯大会』の試合結果です。同じDブロックの航空自衛隊千歳が出場を辞退したため、対戦予定だったカナフレックス(2日)、トヨタ自動車(3日)、東京ガス(4日)は不戦勝となりました。それぞれ1勝0敗の状態で残り2試合を行うわけで、カナフレックスは3日の東京ガス戦で開幕です。

 本来ならこれが2戦目で、阪神ファームとの練習試合でも投げた黒岩龍成投手(25)が先発予定でした。しかし大会直前に登板を回避。そのため、先発すべき航空自衛隊千歳戦がなくなり中継ぎに変更されていた迫勇飛投手(21)が、急きょ先発することになったのです。その迫投手、新人とは思えない落ち着きでしっかりゲームを作りました。

第73回JABAベーブルース杯大会

予選リーグ (5/3 大垣市北公園)

東京ガス-カナフレックス

  東ガ 000 020 034 = 9

  カナ 000 000 001 = 1

◆バッテリー

 【東ガ】高橋(6回)-山下(1回)-寺沢(1回)-野村(1回) / 久米

 【カナ】迫(7回0/3)‐青山(2回) / 福田

◆本塁打 東ガ:地引ソロ(青山)

◆二塁打 東ガ:建部、久米、小林 カナ:江頭

◆打撃    (打-安-点/振-球/盗/失)

 1]右:山崎  (3-0-0 / 1-1 / 0 / 0)

 2]遊:米倉  (2-1-0 / 1-2 / 0 / 1)

 3]中:新宅  (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0)

 〃打中:岩崎 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0)

 4]指:北川  (4-0-0 / 2-0 / 0 / 0)

 5]左:森田  (3-0-0 / 0-1 / 0 / 1)

 6]一:吉田  (2-0-0 / 1-0 / 0 / 0)

 〃打一:澤田 (2-1-0 / 1-0 / 0 / 0)

 7]二:武田  (2-0-0 / 0-1 / 0 / 0)

 〃打:江頭  (1-1-0 / 0-0 / 0 / 0)

 8]捕:福田  (3-1-0 / 1-0 / 0 / 0)

 〃打:喜来  (1-0-1 / 0-0 / 0 / 0)

 9]三:田中  (4-1-0 / 0-0 / 0 / 1)

◆投手       (安-振-球/失-自)

 迫 7.0回 32人 124球 (5-2-3 / 5-0)

 青山 8回 14人 56球 (5-2-3 / 4-4)

《試合経過》※敬称略

 1回は三者凡退と上々の立ち上がりを見せた迫。その裏の攻撃で、先頭の山崎が四球を選び、米倉は右前打。新宅のバントで山崎がアウトになり北川は三振に倒れるも、森田の四球で2死満塁のチャンス!しかし吉田の遊ゴロで終了…。この3者残塁が、のちのち悔やまれることになります。

ルーキーの中でも1つ年下、よってチーム最年少の迫投手。
ルーキーの中でも1つ年下、よってチーム最年少の迫投手。

 迫は2回も4番からを3者凡退に切って取り、3回は先頭を内野安打で出しながら後続をピシャリ!4回は再び3者凡退でした。4回までの投球数が、わずか40球というのもすごいですね。

 0対0のまま迎えた5回、迫は2死を取ってから四球と味方エラーで一、二塁として9番・小林に初球を左中間へ二塁打され、2点を失いました。もう1本ヒットを打たれますが追加点はなし。6回と7回は1本ずつヒットを許しただけで他はしっかり抑え、7回を投げて5安打2失点(自責0)。

 しかし8回、2四死球と味方エラーで無死満塁の大ピンチ。5番・楠の一ゴロ野選で1点が入り、なおも無死満塁。ここで迫は降板します。代わった青山が6番・笹川に初球を打たれてタイムリー二塁打。続く富岡の左犠飛で5対0となりました。

8回途中から登板した青山将太投手。
8回途中から登板した青山将太投手。

 9回も青山が続投。1死から3番・地引のソロホームラン、さらに四球とヒットで一、二塁として代打・建部がタイムリー二塁打。2死後に8番・久米の中前タイムリーで2人を還し、この回は4点を追加されます。8回と9回はともに打者9人ずつの攻撃で計7失点です。

 一方、1回の満塁機に先制できなかった打線は、6回まで投げた東京ガス・高橋に対して結局2安打と4四球の走者のみ。2回以降は三塁を踏むことなく終わりました。8回に先頭の田中が左前打して米倉の四球などで2死一、二塁となったものの北川の左邪飛を好捕されて無得点。

 9回裏は、途中出場の澤田が左前打を放ち、代打・江頭はライトへの二塁打で1死二、三塁として代打・喜来の一ゴロの間にようやく1点を返しました!2死一、三塁となって最後は田中が初球を打ち上げて二飛。これで試合終了。なんとか完封は阻止したカナフレックスです。

9回、澤田裕基選手が左前打(左上)、江頭駿選手は二塁打で笑顔(下の右側・二塁で藤井コーチと)、そして喜来友貴選手の一ゴロ(右上)で1点を返しました。
9回、澤田裕基選手が左前打(左上)、江頭駿選手は二塁打で笑顔(下の右側・二塁で藤井コーチと)、そして喜来友貴選手の一ゴロ(右上)で1点を返しました。

福間コーチは「上出来!」と絶賛

 試合後はまず、この日が73番のユニホーム初披露だった福間納投手コーチ(69)に話を伺いました。迫投手のことを聞く前に「試合の流れがね。初回に1点を取れなかったことが…。それで相手ピッチャーを立ち直らせてしまったのが、結果的に見れば敗因やなあ」と福間コーチ。そばにいた山田勉監督(62)も頷きながら苦笑いです。

 そんな中、ルーキーの迫投手が公式戦初先発で8回途中まで投げてくれました。「いやもう、予想以上!予想以上に投げてくれた。実戦向きやな」。球も低めにいっていたのでは?「日頃の練習でも低めを意識しているんでね。きょうの迫はスリーボールになっても怖さがなかった。きょうは本当に最高のピッチングや!」

 さらに福間コーチは「東京ガス相手にこのピッチングができたんやからね。強いチームだから。そこに対して、いい当たりがほとんどなかったのは上出来。2点取られた時(5回の二塁打)くらいや。他は全部いい当たりじゃないもん。エラーがすべて失点につながったのは残念」と続けます。

 とにかく毎試合、ベンチ入り投手が先発予定を除いて4人しかいないという非常に厳しいブルペン事情で、それが悩みの種。急きょ先発が決まった迫投手に明るい光が見えたのでは?「ほんまもう最高や!これだけやれるとは思わなかった」と絶賛の福間コーチ。

背番号73の福間コーチ。写真は4日のトヨタ自動車戦で、ルーキー・高瀬投手のもとへ行った時のものです。
背番号73の福間コーチ。写真は4日のトヨタ自動車戦で、ルーキー・高瀬投手のもとへ行った時のものです。

 締めくくりは「終わってみたら9対1という結果だけど、1点取っていたら変わっていたと思う。試合の流れがね。これが野球です」という言葉でした。

満足感もあり、悔しさもあり

 では迫投手本人のコメントをご紹介します。残念ながら負けてしまったけど、ナイスピッチングでしょう?「そうですね。自分でも頑張った方かなと」。公式戦は初先発?「はい。登板はありますが、先発は初めてです」

 迫投手は東洋大姫路高校から履正社医療スポーツ専門学校を経ての入部で「専門学校では社会人の方ともやらせてもらっていました」とのこと。じゃあそんなに緊張感はなかった?と尋ねたら「いや…自分は練習試合でも前日から緊張してしまうタイプで。周りの先輩からも『緊張してるねえ』って、いじられるくらいなので…。きょうもバクバクでした」と笑います。

 そうは見えなかったですよ。「ほんとですか!」。スリーボールになってからも落ち着いていたと福間コーチも高評価でした。「そうですか。コントロールはちょっと自信あるので」。5回まで無四球ですもんね。「はい!」

試合後の迫投手。このリラックスした表情を見ると、やはり試合中は緊張していたとわかりますね。
試合後の迫投手。このリラックスした表情を見ると、やはり試合中は緊張していたとわかりますね。

 相手の東京ガスについて「やっぱり何かこう、抑えていても抑えている気がしなくて…常にピンチのような感じでした。あと、2点を取られた時は悔しかったです。本当に甘いボールがいってしまったので、そこはきょう一番悔しいところです」と振り返った迫投手。やはり5回の2失点ですね。

 あそこは味方のエラーがあっただけに、抑えてあげられたらよかった?「はい。ごめんねって言われるんですけど、それは仕方のないこと。ここは自分が抑えないと、と思っていたから余計に…」。抑えられたら“ごめんね”が“ありがとう”に変わりますもんね。「申し訳なかったです」

“同期の先輩”からパワーをもらって

 点を取られた直後の6回、7回は初球でストライクが取れ、三振も奪いました。「点を取られたあとは野手にとっても、いいリズムが欲しいところだと思って。もともと野手をしていたから」。そうなんですか?「はい。高校に入って少ししてからピッチャーを始めたぐらい。だから野手の気持ちがわかるので、できるだけ野手がリズムよくいけるようにと心がけていました」

 試合中、ベンチからの声がすごかった!背番号13番の田代竜貴選手(22)が特に。「田代さんはいつも、試合前にも声をかけてくれます。同期入団ですけど僕だけ1つ下なので、そういうところも気遣ってくれて。ベンチに帰ってもすぐ声をかけてくれました」。いい人ですね?「はい、みんないい人です!」。ちょっと笑った顔は末っ子そのもの。

カナフレックスベンチから聞こえる大きな声!その主はルーキーの田代竜貴選手(中央)です。
カナフレックスベンチから聞こえる大きな声!その主はルーキーの田代竜貴選手(中央)です。

 そんな末っ子・迫投手にとって、この試合は大きな経験になった?「そうですね。悔しいところもあったり、いいところも悪いところも見つかったので、そこを次に投げさせてもらえる時までに練習で改善して、またいいピッチングができるように頑張ります!」。頼もしい決意表明です。

 なお、4月25日の阪神ファーム戦で3安打3打点の活躍だったルーキーの米倉凌平選手(22)は、5回を振り返り「自分のミスから先制を許してしまったので悔やまれます。自分のエラーで…悔しいのひとことです」と猛省。そして「初回に点を取れていたら流れが変わったと思います」と話しました。

 このルーキーたちが大暴れしてくれる次の機会を楽しみにしています。

◆強かったトヨタ自動車

 翌日は予選リーグ最後の試合、トヨタ自動車戦が長良川球場で行われました。先発はやはりルーキーの高瀬翔悟投手(22)。初回から連打を浴びる苦しい展開で、中盤に2点を返したものの悔しいコールド負けを喫しています。

試合前、トヨタ自動車の練習をベンチで見つめる選手たち。
試合前、トヨタ自動車の練習をベンチで見つめる選手たち。

第73回JABAベーブルース杯大会

予選リーグ (5/4 長良川)

カナフレックス-トヨタ自動車

  トヨ 300 401 1 = 9

  カナ 000 110 0 = 2

   ※規定により7回コールド

◆バッテリー

 【カナ】高瀬(3回1/3)-大西(3回2/3) / 福田

 【トヨ】小出(5回)‐葛川(1回)-村川(1回) / 高祖

◆本塁打 トヨ:中村ソロ(大西)

◆二塁打 トヨ:中村、樺澤、高祖

◆打撃   (打-安-点/振-球/盗/失)

 1]右:山崎 (4-1-0 / 0-0 / 0 / 0)

 2]中:新宅 (4-1-0 / 2-0 / 0 / 0)

 3]左:森田 (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0)

 4]指:北川 (2-1-0 / 1-2 / 1 / 0)

 5]遊:米倉 (2-1-0 / 1-0 / 0 / 0)

 6]一:吉田 (4-1-1 / 1-0 / 0 / 0)

 7]二:武田 (4-1-1 / 2-0 / 0 / 0)

 8]捕:福田 (3-2-0 / 1-0 / 0 / 0)

 9]三:田中 (2-0-0 / 2-0 / 0 / 0)

◆投手        (安-振-球/失-自)

 高瀬 3.1回 21人 81球 (7-1-5 / 6-6)

 大西 3.2回 18人 75球 (6-4-1 / 3-3)

《試合経過》※敬称略

 高瀬は1回、先頭への四球と犠打などで2死三塁として4番・中村に左翼線へのタイムリー二塁打を浴びます。さらに多木の内野安打で一、三塁となり、樺澤の右翼線二塁打で2人を還して、3点を失いました。2回は3安打で満塁のピンチをしのぎ、3回は1死球のみで、ともに無失点。

4日の先発もルーキーの高瀬投手でした。
4日の先発もルーキーの高瀬投手でした。

 しかし4回、2四球などで1死一、二塁となって、3番・河合に中前タイムリーを許したところで高瀬がマウンドを降ります。代わった大西は中村に左前打されて満塁とし、多木の右前打で2点、続く樺澤にも右前タイムリーを浴びて、この回4点を追加されました。

 打線は1回に山崎が左前打するも盗塁を刺され3人で攻撃終了。2回は三者凡退。3回は福田と山崎にヒットが出ますが無得点。ようやく4回、森田の中前打からチャンスを作ります。1死後に米倉の三ゴロが相手エラーを誘い、吉田の四球で満塁となって武田が中犠飛!

左の武田選手は4回に中犠飛(写真は3回の打席)。右は、その犠飛で生還した森田皓介選手。森田選手は5回にタイムリーも放っています。
左の武田選手は4回に中犠飛(写真は3回の打席)。右は、その犠飛で生還した森田皓介選手。森田選手は5回にタイムリーも放っています。

 5回は大西が三者凡退に切って取ると、その裏に田中の中前打、山崎の右前打、新宅の犠打が内野安打となり無死満塁。続く森田が中前タイムリーと、4連打で2点目が入りました!なおも無死満塁の好機が続いたものの、後続を断たれて1点止まりです。

 続投の大西は6回の先頭にかけて3連続三振を奪いますが、次の中村にレフトへホームランを浴び、これで8対2。その裏の攻撃は、トヨタ自動車2人目の葛川の前に三者凡退でした。そして7回、先頭の高祖に右翼線二塁打を許し、犠打と四球なので2死一、三塁として2番・川原に左前タイムリー。

すべての試合で登板の準備をしている大西健太投手は、まさにピッチャー陣の“支柱”です。
すべての試合で登板の準備をしている大西健太投手は、まさにピッチャー陣の“支柱”です。

 スコアは9対2となり、その裏に1点でも返さなければ試合が終わってしまうカナフレックスですが、3人目・村川の前に三者凡退…。7回コールド負けを喫しました。

チャンスで1本を打つためには…

 試合後、山田監督は「こんなに大差で負けたような気がしないんやけど…」と言いながら「でもチャンスに弱い。ランナーがいても、満塁で1点しか取れなかったからねえ。もったいない。あそこで点を取れたら楽なんやけど」と1得点のみで3者残塁に終わった5回の攻撃を振り返ります。

 1番打者の山崎選手(26)が3安打でチャンスを作りましたね。「バッティングは“イチニサン”じゃなく“イチニのサン”。いつも言っている。山崎はそれができていた。みんな、わかっているようでわかっていないんですよ。ボールを見る“間”が。相手のトヨタ自動車にはそれがあったでしょう?」

試合終了時の挨拶を終え、ベンチへ戻るカナフレックスの山田監督。この大会は新型コロナの感染が拡大して以降、久々に向かい合って整列する従来の挨拶でしたね。
試合終了時の挨拶を終え、ベンチへ戻るカナフレックスの山田監督。この大会は新型コロナの感染が拡大して以降、久々に向かい合って整列する従来の挨拶でしたね。

 練習で覚えていくことですか?「自分で練習するしかない。ただし意味がわかって練習するのと、わからずにするのとでは全然違うからね。それと上半身ではなく下半身で打つこと。山崎は1年半かかってできるようになったかな」。1年半!でも習得するのに時間がかかったことは忘れないと言いますからね。

「コールド負けを無駄にはしない!」

 次は山崎選手です。東京ガス戦は四球での出塁のみでしたが、トヨタ自動車戦では3安打!しかも2打席が初球打ちで、1打席は2球目を打ったものです。1回の先頭打者として初球を打ってレフト前へ。「(直前の1回表に)いきなり3点を取られたので。初球はストライクゾーンに来るだろうと思っていました」

 1番を打つことが多い山崎選手ですが、その心構えを聞いてみたら「初回は先頭で打席に入るので、そこでどうやって塁に出るかを考えています。先頭が出たら点の入る確率は上がるので。1打席目は何が何でも出てやろうという気持ちですね」という答え。阪神戦でも初回に二塁打を放ち、内野ゴロで生還して1点を先取しています。

この試合で3安打と気を吐いた山崎選手。写真は3回の右前打です。
この試合で3安打と気を吐いた山崎選手。写真は3回の右前打です。

※負けて悔しい表情だった山崎選手ですが、写真を撮るのにバタバタしていたら笑ってくれました。ありがとうございます。
※負けて悔しい表情だった山崎選手ですが、写真を撮るのにバタバタしていたら笑ってくれました。ありがとうございます。

 バッティングがよくなったという感覚は?「去年とかに比べたら、はい」。山田監督が下半身で打つことを1年半かけてできるようになったと。「はい(笑)。下半身で打て、ってずっと言われますね」。イチニのサンも?「意識はしていますけど、できているかどうかは…。練習では常に意識してやっていました」

 トヨタ自動車との対戦は2度目だそうで、この日の感想は「…強かったです」と山崎選手。日本選手権の最終予選に向けて「絶対(本大会に)出られるよう一日一日を大事に過ごしたいと思います。このコールド負けを無駄にしないよう、絶対に出たい!」と意気込んでいます。

4番の北川主将、頼りにしています!

 4月23日に行われたオリックスファームとの練習試合で負傷し、今大会で復帰した北川倫太郎選手(27)。東京ガス戦でもトヨタ自動車戦でも、やはりチャンスで回ってきますね。それが4番の宿命でしょうか。北川選手は「チームに申し訳ないです…」と、ヒットが出なかったことを悔やみました。

 まだ捻挫した足が本調子ではなかったと思いますが「それは理由にならないです。試合に出ている限りは。力がなかっただけです」とキッパリ。

 誰よりも練習熱心な主将・北川選手に影響されて「野手全員が“一生”バットを振っている」と、福田優人選手(29)の名言もありました。「いや、そんなことないですよ。自分も、みんながやっているから負けたらあかんと思ってやっているだけです」

ケガから復帰した4番の北川倫太郎選手(元楽天)。最終予選では万全の状態で、活躍を期待しています!
ケガから復帰した4番の北川倫太郎選手(元楽天)。最終予選では万全の状態で、活躍を期待しています!

 そして「そうしないと勝てないですし、それを相手チームはやっているわけで。僕らは一生懸命、泥臭くやらないと勝てないですから」と続けた北川選手。東京ガスやトヨタ自動車の強さは「基本的なことをきっちりやっているんだと思います。もちろん技術もありますけど、自分たちがやらなあかんことができるところ」だと言いました。

大敗に「危機感しかない」

 最後に藤井コーチです。ベーブルース杯2試合を振り返っての感想を求めたら、返ってきたのはひとことでした。

 「それはもう、危機感しかないでしょう」

 でも、全然打てなかったわけじゃないので…。「2試合ともチャンスは作っているだけにもったいないです。あと1本」。確かに、東京ガス戦での初回も、トヨタ自動車戦での4回と5回も、あそこで1本出れば大量点につながった可能性はあるだけに残念でした。

 試合後のミーティングでも、藤井コーチは「最終予選まで20日、危機感を持ってやらないと!」と選手たちの奮起を促しました。あれから1週間、目の色を変えて練習に励んでいることでしょう。

ちなみに、11日行われたJR東海との練習は3対3の引き分け。大西投手、高瀬投手、迫投手が登板しました。このあと最終予選までに西濃運輸、日本製鉄東海REX、東海理化などと練習試合が組まれています。

 『第46回社会人野球日本選手権大会』の近畿地区最終予選は、今月27日から舞洲の大阪シティ信用金庫スタジアムで行われ、4チームが代表権を獲得できるんですね。カナフレックスの一丸野球で、ぜひ3度目の本大会出場を果たしてください!

4日の長良川球場、トヨタ自動車戦にて。試合前のシートノックでノッカーを務める藤井コーチです。
4日の長良川球場、トヨタ自動車戦にて。試合前のシートノックでノッカーを務める藤井コーチです。

  <掲載写真の※印は筆者撮影、他はチーム提供>