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宜野座組に負けず「オレがヤル!」 阪神・安芸キャンプを終えて

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
安芸キャンプ最終日、手締め前に恒例の連帯歩調。ひとりカメラを見てくれた横山投手?

 2月27日で打ち上げた阪神タイガースの春季キャンプ。宜野座組も安芸組もそれぞれ帰阪し、きのうは自主練習日でした。自宅や寮に戻ったのも束の間で、きょう3月1日にはもう遠征先へ移動。1軍もファームも2日、3日と同じソフトバンクと対戦します。1軍のオープン戦がヤフオクドーム、ファームの教育リーグはタマホームスタジアム筑後、どちらも13時からと開始時間も同じです。

 でもメンバーはキャンプと同じではありませんね。入れ替わる野手もあり、先発投手陣は1軍のローテーション候補たちが両方で投げるもよう。まあ1軍の開幕直前まではメンバーが固定されないので、オープン戦と教育リーグを行ったり来たりになるでしょう。

 なお阪神ファームの教育リーグは、ソフトバンクの次に8日から中日を鳴尾浜に迎えて3連戦、12日から由宇で予定されている広島2連戦で終了。ことしは7試合だけでした。でも19日の公式戦開幕までに、大学や社会人とのプロアマ交流試合(6日に奈良学園大学、7日に近畿大学、15日に大阪商業大学、16日にJプロジェクト)が組まれています。いよいよ鳴尾浜のスタンドにも球春到来ですね。

「使いたい」と思わせた片山選手がMVP

12時15分頃、輪になって陽川選手の挨拶が始まりました。
12時15分頃、輪になって陽川選手の挨拶が始まりました。
このあと一本締めでキャンプを打ち上げ。
このあと一本締めでキャンプを打ち上げ。

 さて遅くなりましたが、高知県安芸市で行われていた安芸キャンプの締めくくりとして、監督や何選手かの総括コメントをご紹介します。まずは平田勝男監督。「2月1日から選手たちの意欲というか、姿勢、やる気を非常に感じたキャンプだよな。あっという間だった。あと1か月くらい居たいよ。花粉がなけりゃな(笑)。花粉がなけりゃ、あと1か月くらい居たい。帰りたくないわ」

 一番頑張った選手というかMVPを選ぶとしたら?と聞かれ「みんな頑張っているよ。MVPって、すぐそういうふうに言うけど」とのことでしたが、続けて「やっぱり雄哉じゃない?片山」と、育成ドラフトで入団したルーキーキャッチャーの名前を挙げた平田監督。「声を出してキャンプを引っ張っていってくれて。当たり前の話だけど、当たり前のことがなかなかできないもの。そういった意味では結果も残したし、すごい成長じゃない?最初から比べると。やっぱり練習すれば、よくなるってことを証明してくれたよ、彼は」

 打つ方でもアピールしましたね。「引っ張った打球は意外と上がらんけど左中間やセンターにコーンと打つ方がうまい。器用なんだよ。今バッティングコーチと、掛布さんのレベルスイングの話をしている。あれでポイントをつかんで打球が上がり出せば、楽しみな“打てるキャッチャー”になるで」。また23日の試合後にも「片山株、急上昇だね!食らいついていこうという姿勢が伝わってくる。おもしろい存在になっていくよ」と絶賛でした。

故障組が順調に戻ってきたキャンプ

連帯歩調を引っ張るのは前列左の横田選手。隣は仲よしの熊谷選手。前の方の人、笑っていますね。
連帯歩調を引っ張るのは前列左の横田選手。隣は仲よしの熊谷選手。前の方の人、笑っていますね。
連帯歩調の続き。前の方から伝わってきたのか、中盤から後方へも何やら笑いが。
連帯歩調の続き。前の方から伝わってきたのか、中盤から後方へも何やら笑いが。

 続いて投手陣について平田監督は「元気なピッチャーも含めて、秋山や高橋遥といった故障組をどう順調に持っていけるかというところのキャンプ。そういった意味で、トレーナーがしっかりプラン通りやってくれたってのが大きいよ」とコメント。

 1軍戦力になるべき選手ということ?「そういうレベルのピッチャーだからね。2、3年後を見据えたピッチャーじゃなくて、ことしシーズンに入ったら戦力になってもらわなきゃ困る、秋山や高橋といったところが故障したけど、順調にきたということ。陽川も故障明けで順調だし。いいキャンプだったと思う。自画自賛だよ。誰もほめてくれないから(笑)」

 最後にもう一度「いいキャンプだったと思う。選手たちも自主的にやってくれてね。久しぶりの安芸で天気もよかったし。花粉がこんなひどいとは思わなかった。沖縄に5年いたから」という話で締めくくりました。

 

MVPは「もっとやれる」という叱咤激励

 ではMVPの片山雄哉選手です。

最終日の朝、早出でティー打撃をした片山選手(中)。左は日高コーチ。
最終日の朝、早出でティー打撃をした片山選手(中)。左は日高コーチ。

 「とても充実していました。アピールはしてこられたかな?体もついてきてくれて、想像以上にできたと思います」とキャンプの感想。数字で表すのは難しいでしょうけど。「100はありえないですね。まだまだやらなきゃいけないことがたくさん、できなきゃいけないこともたくさんあるので。100%のつもりでやったけど、その限界値を伸ばしていかないといけない。もっともっと高みを目指してやらねば、と思っています。ここで満足していては、1軍選手にかなわない」

同じく最終日の早出組。左から山田コーチ、熊谷選手、小幡選手、藤谷選手。
同じく最終日の早出組。左から山田コーチ、熊谷選手、小幡選手、藤谷選手。

 そんなことも含めて「すごく自分のためになる1か月だった」と言います。試合成績は5試合で23打数9安打5打点で、打率.391(盗塁阻止3)でした。

 MVP選出を告げたら「そうなんですか?何も聞いていないですよ」ときょとん。そして「評価はありがたいし、嬉しいですね。でも、その言葉には『もっともっとできる』という意味が含まれていると思います。できるからこそ、っていう言葉だと捉えていきたいです」と、最終日にも“片山語録”が聞けました。そうなんです。すべてを書き留めていないけど、なかなかの“語録”があるんですよ。

ブルペンで球を受ける片山選手。大きな声で盛り上げます。
ブルペンで球を受ける片山選手。大きな声で盛り上げます。

 24日の試合後、盗塁阻止で肩もアピールしたのでは?と聞かれ「打てるだけではキャッチャーとして成り立たないので。ゲームに勝つのも大事。肩があるというのをこの段階で見せられたら、ピッチャーの信頼も得られる。“片山が刺してくれる”と思ってもらえたら僕にとってもプラスだし、チームにとってもそうだと思います」と答え、さらにこう続けています。

 「チャンスは何度も何度もない。危機感を持っているので少ないチャンスをものにしないと。人間は易(やす)きに流れる生き物。意識していても楽な方、楽な方へいってしまう。キャッチャーが隙を見せたら信頼が生まれてこない。技術とか生活態度以前に、全員からの信頼を勝ち取らなければいけないポジション。必要なこと、やらないといけないこと」

 いかがでしたか?“片山語録”。これからもまた聞いてきますので、お楽しみに。

宜野座組にも同期にも負けない!

キャンプ全日程が終了。最後の方でグラウンドを引き揚げてきた陽川選手。
キャンプ全日程が終了。最後の方でグラウンドを引き揚げてきた陽川選手。

 陽川尚将選手は昨年10月、不安を抱えていた右ヒジを「来季は自分にとって大事な年になるので、万全の状態で勝負するために」手術(クリーニング術)をしています。そのため安芸スタートとなったのですが、順調に回復。キャンプでは実戦5試合すべてに4番で出場し、22打数8安打9打点で打率.364(本塁打2、二塁打2、盗塁4)という結果を持って、きょうから1軍に合流となりました。

 「ヒジの状態もずっとよかったんで、こっちで実戦にも出ていたし、自分のやりたいことができた。これからオープン戦とかシーズンは長いので、自分の持ち味をアピールして結果にこだわってやっていきたいです」

安芸キャンプでのプレゼント数はチーム断トツだった熊谷選手。バント練習中です。
安芸キャンプでのプレゼント数はチーム断トツだった熊谷選手。バント練習中です。

 ルーキーだった昨年も途中で宜野座から移動してきて、ことしは安芸でキャンプ完走となってしまった熊谷敬宥選手。「キャンプではしっかり濃い時間を過ごせました。人数が少ない分、いろんなことができたし。1軍キャンプでは感じないであろう“悔しさ”を持ちながらできたと思います。常に悔しさを持っていました」

 その悔しさゆえの収穫もあったようですね。「自分を見つめ直す、いい時間になったので。そのへんはよかったと思います。こっちで濃い時間を過ごせてよかった」。キャンプが終われば、またシャッフルされてチャンスも来るはず。つかまないといけませんね。「ここからが本当の勝負なので、負けないようにやります!」

16日の初実戦で出番を待つ小幡選手。
16日の初実戦で出番を待つ小幡選手。

 そしてルーキーの小幡竜平選手は練習試合に5試合出場し、すべてでヒットを打ちました。20打数8安打2打点、打率.400(二塁打1、内野安打4、盗塁1)です。「最初は全然知らない先輩も多くて、そういった意味では分からないことがたくさんあったんですけど、ものすごく優しい方ばかりで、ものすごく充実していました」という初キャンプの感想。卒業式で久しぶりに友だちと会って、またパワーを充電してきたでしょう。

 残念ながらルーキーの湯浅京己投手と川原陸投手には、タイミングが合わずコメントをもらえませんでした。

着実に前進する秋山投手と高橋遥投手

 昨年10月に右ヒザの手術(クリーニング術)を受け「野球人生のターニングポイント」と話していた秋山拓巳投手。2試合に1イニングずつ投げて無失点(安打1、三振3、四球0)で最速は144キロです。

秋山投手はキャンプで2試合に登板しました。これは17日のブルペンです。
秋山投手はキャンプで2試合に登板しました。これは17日のブルペンです。

 「中旬に一度落ちたけど、それ以降は天気もよかったので、割といい具合に動けました。下(安芸)でキャンプをやっていて、上(宜野座)のピッチャーがすごく気になっていたし、競争の中で“秋山もそろそろ行くぞ”っていうのを見せていって競争意識を高め、みんながいい方向に進んでいければ。そういうピッチングがしたいなと思っていました」とキャンプを回顧しています。

 今後について「自分自身は今、球数を投げていく段階で、結果というより自分がしっくりいく球を投げる方が先。それができたら結果もついてくると思います。フォーム的にまだまだなので、そこをよくしていきたい」と言っていました。次は来週、鳴尾浜で登板することになるでしょう。

10日、初めてフリー打撃に登板する準備中の高橋遥投手。
10日、初めてフリー打撃に登板する準備中の高橋遥投手。

 高橋遥人投手は昨年6月に左肩のコンディション不良で戦列を離れ、今キャンプではそれ以来の実戦登板をしました。「ケガをして迷惑をかけて、でもトレーナーやいろんな人に教えてもらって、また試合に投げられてよかったです。まだ1イニングですけど。ことしはケガしないよう、しっかりトレーニングしていきたいです。まだ1イニングで、みんなはたくさん投げているので、追いつけるように」

 最後の練習試合で投げられてよかったですね。1イニングで2三振を奪って三者凡退。最速は146キロ(相手側チームの計測では148キロ)でした。大きな一歩です。「よくなっているのは間違いないと自分で一番感じています。最初は不安もありましたが、最後までよくできた。いい感覚です。これを続けて、もっと上げられるようにやっていきたい」。そう言って明るい表情を見せました。

すこぶる順調な横山投手のリハビリ

19日、ドーム内でキャッチボールをする横山投手(左)。右は高橋建投手コーチ、中は藤本トレーナー。
19日、ドーム内でキャッチボールをする横山投手(左)。右は高橋建投手コーチ、中は藤本トレーナー。
これは26日、サブグラウンドで70メートルのキャッチボール中です。
これは26日、サブグラウンドで70メートルのキャッチボール中です。

 最後に横山雄哉投手のことも書いておきます。昨年8月に左肩の手術(クリーニング術)を受け、今キャンプはリハビリ優先で過ごしました。ウォーミングアップを終えると本隊から離れ、安芸ドームの中でトレーナーと一緒にネットスローやキャッチボール。第4クールから屋外でのキャッチボールを開始、他にゴロの捕球練習も参加しています。「バント練習もできると思いますが、リハビリ優先なので」とは本人談。

 キャッチボールの距離も徐々に伸ばし、安芸ドーム内では最長40メートルくらい、第4クールから外で50メートルくらい投げていて、その中でも「ネットスローなしでキャッチボールに入ったり、そうやって色んな変化をつけています」とのこと。キャッチボールやネットスローで「フォームもそうですが、一番は“きょうの状態でどこまでいけるのか”とか考えますね。まずはしっかり数を投げて、肩を鍛えるというか。終わってみて、その日どうか。その積み重ね」と言っていました。

いいお天気で、順調で、いい笑顔の横山投手。
いいお天気で、順調で、いい笑顔の横山投手。

 そして打ち上げ前日の26日に、サブグラウンドで70メートル離れてのキャッチボールを拝見しましたよ。これより前にも70メートルは投げていたそうで「キャンプの序盤より、よくなっている実感はありますね。何とかキャンプ中に遠投くらいまでいければ。それが目標です」と語っていた遠投には至りませんでしたが、これはあくまで本人の希望だったようです。

 トレーナーの方々にとっては「プラン通り、とても順調」だと聞きました。横山投手も終盤、天気の話をすると「僕の顔でわかるでしょ?いい天気、イコールいい笑顔」とニコニコ。手応えがあったのでしょう。ただし今はまだリハビリの段階。本人がそれを誰よりわかっているので、こちらも「いつ?」「そろそろ?」と先を急かすことはしないよう気をつけます。皆様も、じっくり、ゆっくり見守ってくださいね。

    <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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