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台湾ウインターリーグ閉幕 持ち帰ったのは来季につながる何か《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
台湾で収穫があったという2年目の浜地投手。写真は10月の宮崎で撮ったものです。

 2012年から始まった『アジア・ウインター・ベースボール・リーグ(AWB)』。ことしも11月24日から、台湾のインターコンチネンタル野球場と斗六野球場で全46試合が行われました。阪神から参加していた浜地真澄投手、石井将希投手、長坂拳弥選手、藤谷洸介選手の4人はすべての日程が終わった翌日の17日に帰国。藤谷選手を除く3人と、安藤優也投手コーチは夕方17時半すぎに鳴尾浜へ戻っています。

 ことしはアジア以外(昨年のアメリカ・ヨーロッパ混成や、過去のヨーロッパ選抜、ドミニカなど)が参加せず、全部で5チームの戦いでした。日本からはNPB-West(ウエスタン・リーグの阪神、ソフトバンク、オリックス、中日とイースタン・リーグのDeNA)、NPB-East(イースタンの巨人、ヤクルト、ロッテ、楽天、西武)、社会人選抜のJABA、以上3チームが参加。そして台湾プロ野球のCPBL、韓国プロ野球のKBOを合わせた5チームです。

 試合数も昨年より少し減り、11月24日から12月13日までレギュラーシーズンとして各チーム16試合ずつ行いました。その結果、NPB-Eastが11勝5敗で首位。続いてJABA、CPBL、KBO、最下位はNPB-Westで3勝10敗3分けという成績。12月14日と15日にプレーオフがあり、2位のJABA対3位のCPBL、1位のNPB-East対4位のKBOが2試合あって、NPB-Eastが2勝、JABAが1敗1分け、CPBLは1勝1分け、KBOは3敗となっています。

 これを受けて、最終日の12月16日はJABAとKBOによる3位決定戦でJABAが勝利。同日夜に行われた優勝決定戦は、首位のNPB-Eastと3位のCPBLという顔合わせ。1対0でNPB-Eastが勝ちました。昨年、レギュラーシーズンを4位で終えたNPB-Eastは準決勝で首位のJABAに勝ち、決勝で3位のKBOを破っての優勝だったのですが、ことしはプレーオフ以降も3戦負けなし!これで2連覇です。

 逆にプレーオフで1敗1分けだったため3位決定戦へ回ったJABA。レギュラーシーズンは2位なのに、結果は3位ってことになるんですかね。昨年も、レギュラーシーズンは首位だったのに準決勝でNPB-Eastに敗れ、やはり決定戦に回っての3位でした。来年こそリベンジしてください!

 

ところでNPB-Westの成績は…

選手たちとともに鳴尾浜へ戻ってきた安藤育成コーチ。お疲れ様でした!
選手たちとともに鳴尾浜へ戻ってきた安藤育成コーチ。お疲れ様でした!

 このアジア・ウインター・ベースボール・リーグが始まった2012年から、2015年まで(2014年は開催なし)、日本は阪神、ソフトバンク、中日、巨人、ヤクルト、DeNAの6チーム編成によるNPBとして参加しました。2016年からはNPBのWestとEastに分かれて、ことしで3年目になりますが、最初の2016年は見事に優勝したWest!青柳投手が最優秀投手賞、オリックスの吉田正尚選手が最優秀打者賞を受賞したのも懐かしい思い出です。

 しかし昨年は6チーム中5位、レギュラーシーズン終了後は5位-6位決定戦でアメリカ・ヨーロッパ混成チームに勝って最下位は免れた状況。ちなみに、ことしも5位で終了しましたが、5チームしかないのでプレーオフにも参加できずじまいです。3勝10敗3分けですもんねえ。

 前置きが長くなりました。17日の夕方、鳴尾浜へ戻ってきた3選手に聞いた話をご紹介しましょう。写真は、ご覧のように周囲が真っ暗すぎてシャッターがなかなか下りず、顔は横向きでピントも合っていないし…失敗だらけです。すみません。

【浜地】来年につながるものが見えた

3試合(先発3) 1勝0敗 防御率3.97

11回1/3 安打12、三振8、四球3

失点5、自責5

 11月28日のKBO戦で初先発して、5回8安打2失点。試合は引き分けです。2試合目の登板だった12月4日のKBO戦では、2回にライナー性の打球が顔面を直撃!そのまま病院へ直行というアクシデントがありました。マスクをかぶっていた長坂選手も、目に当たったと思って愕然としたようです。幸いなことに骨折はなく左頬の打撲という診断。「打撲で済んだのでよかった」と本人も話していましたが、本当にそうですよね。2日間の“脳震盪プログラム”なるものを受けたあと、最後は12日のNPB-East戦で先発して5回1安打1失点。勝ち投手になっています。

 3週間あまりの台湾遠征を振り返って「大変でした、異国なので。食事だったり。言葉も通じなくて難しかったです」と浜地投手。

浜地投手は見事に横向きの時だけしかシャッターが下りませんでした…。いい具合に日焼けしていますね。
浜地投手は見事に横向きの時だけしかシャッターが下りませんでした…。いい具合に日焼けしていますね。

 成績に関しては「あまりいいとは思わなかったですが、やりたいことはやれたかな」と言います。やりたかったのは何?「イニングを投げることと、変化球を試すことです。それは収穫があったかなと思います。ある程度の形は見えたんですけど、相手も1軍レベルじゃないので。僕は来年、そこを目指さなくちゃいけない。現時点で、ある程度は来年につながるものが見えたと思います」

 どんな変化球?「外のスライダーですね。空振りを取りにいく時と、ピッチャー有利な時にカウントを取りに行くスライダー。矢野監督にも『左打者の外にスライダーを使えたら』という話をしてもらっていたので。(秋季)キャンプから取り組んできて、実戦でも試してきた。まだ精度は高くないけど、思った通りに投げられたら打者の反応もよかったので、いい意味で勉強になりました」

 なお11月27日のJABA戦は、試合経過に「先発が浜地投手から石井投手に代わった」と書いてあったので、何かあったのかと心配したんですよね。もしかして、お腹を壊したとか?と思って…。でも「体調不良じゃないですよ~」と笑っていました。多分あちこちで聞かれたんでしょうね。単にマネージャーさんがメンバー表に間違って記入してしまった、という真相のようです。なるほど。

【石井】決め球の重要性を再認識

4試合(先発2) 0勝1敗 防御率6.00

15回 安打20、三振13、四球11

失点12、自責10 (暴投2)

 ルーキーイヤーの締めくくりになった、台湾のウインターリーグ。まず振り返っての感想は「この時期に実戦4試合に投げて、本当に課題が山積みだったので、このオフにしっかり練習をして来季に向かっていきたい」というものでした。

石井投手は顔が正面!と思ったら…目が光っちゃいました。すみません。
石井投手は顔が正面!と思ったら…目が光っちゃいました。すみません。

 山積みだった課題のことを聞かれ「ストレートは結構、自信を持って投げられたんですけど、カウント有利の時に打たれたりして。決め球の変化球や、続けて変化球を投げた時とかですね。決め球になる変化球を確立しないと」と石井投手。どんな変化球?「フォークが一番で、スライダーも決められるようにやっていきたい。決める時は最低でも2球以内で勝負できるように。決め球でボール、ボールとなるのではなく、2球続けて決められるようにしていきたいです」

 他球団の選手との交流もあったのでは?「ウエスタン以外でも、台湾や韓国、社会人チームの選手を自分の目で見て、感じたものがありました。スイングの鋭さとか」。そこで改めて、決め球が重要だと実感したと言います。

 一番印象に残っていることは何ですか?「先発でも、中継ぎでも、最初から全力でいけと言われたことです。先発で長いイニングを投げると思って立ち上がりが悪くなったり、大事にいきすぎていたけど、初回から全力で投げたいと思いました」。これはソフトバンクの入来祐作投手コーチのアドバイスだったそうです。

【長坂】実戦で得た収穫を3年目へ

12試合(先発7、うち先発マスク5)

20打数3安打1打点 打率.150

三振6、四球8、犠打1 盗塁1

失策0、捕逸2、盗塁阻止1

 2年連続なので、余裕を持って過ごせたのでは?「多少、流れとか雰囲気とかは何とか知っていたので、やりやすかったというか。そういうのは多少あったかなとは思いますけど」。昨年とは得るものも違った?「まあ去年は去年で教えていただいたことがありますし、ことしもまた教えていただいたことがあるので、去年とはまた違う収穫ですね」

 一番の収穫を教えてください。「普段とは違うチームの監督やコーチにいろいろ技術を教えていただいたり、考え方とかの話も聞けたので、よかったと思います」。球を受けるピッチャーも去年とは違ったでしょう?「初めて受けるピッチャーもいて、いろいろクセ球とか、どういう変化するのかわからない中で捕ったりするのも、技術向上につながったのかなとは思いますね」

長坂選手はちゃんと撮れているように見えますが、ピントは奥の柱に合っています。
長坂選手はちゃんと撮れているように見えますが、ピントは奥の柱に合っています。

 打率は去年の方がよかったと言ったら、ちょっと苦笑したあと「いや、別に数字は気にしていないんで。それより監督とか打撃コーチに指導していただけたから、それが収穫です」と長坂選手。2年続けて誰よりも長く実戦を経験、来シーズンに生きる?「そうですね。2年続けて行かせていただいたので感謝していますし、この時期まで実戦をできたことはプラスにとらえているので、来年こそは頑張りたいと思います」

 ことし1軍で9試合に出場、スタメンマスクも経験して、来年は確たる目標が?と聞いたら「ありますね!」と即答でした。でも「言いません(笑)」と続けてニヤリ。なるほど。そこは不言実行でいきますか。西投手やガルシア投手が加入したことはニュース等で知っていたそうで、受けてみたいかとの問いに「そりゃ受けてみたいですねえ」と答え、そのイメージについては「試合の映像を見たりしたぐらいなので、イメージというのは全然わからないですけど」とのこと。

 年末の予定を尋ねたところ「鳴尾浜が閉まるまではいますよ、最後まで」と言っていました。年明けはさすがに帰国したばかりなので「まだ、どこでやるか決めていないですね。地元とか、仙台に行くかも」と、これから考えるようです。

【藤谷】二塁打2本と2打点

 最後に、この日は鳴尾浜へ寄らず帰宅した藤谷選手の話は聞けていませんが、結果だけ書いておきます。

台中のインターコンチネンタル野球場。2015年にスポニチ・久林記者が撮影したものです。
台中のインターコンチネンタル野球場。2015年にスポニチ・久林記者が撮影したものです。

13試合(先発9、うちサード8)

33打数6安打2打点 打率.182

二塁打2 犠飛1 盗塁0

三振14、四球0 失策4

 11月24日のCPBL戦で初ヒット、同27日のJABA戦では8回にライトへ二塁打。12月5日のNPB-East戦は6回1死三塁で二ゴロ、これがエラーを誘って三塁走者が生還(打点あり)。この試合、唯一の得点でした。同7日のJABA戦でも5回1死満塁の場面で先制の中犠飛!追いつかれたあとの8回には先頭で二塁打を放って、勝ち越し点へつなげています。この試合から4試合連続安打で終了した藤谷選手。最後の出場だった12日のNPB-East戦では“4番”でした。

    <※印以外の掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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