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2002年5月以来、チーム16年ぶりの3試合連続完封勝利!《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
24日のヒーロースピーチは坂本選手。「3年目で、きょうが初○○」と告白して笑顔。

 5月12日にチーム18年ぶりの8連勝を記録した阪神ファーム。その後、ソフトバンクに連敗したものの3タテは阻止し、巨人とのファーム交流試合は1勝1敗で終えました。この巨人2戦目から3連勝していて、しかもすべて完封勝ちです。

 20日の巨人戦は先発が馬場皐輔投手で5回3安打無失点、そのあと4投手がつなぎ、計6安打の完封リレー。22日のオリックス戦は福永春吾投手が6安打無失点のプロ初完投初完封!そして24日のオリックス戦は藤浪晋太郎投手が7回を投げ6安打無失点、伊藤和雄投手が残りを抑え、これで3試合連続完封勝利となったわけです。

 連勝記録を調べた古い資料を再び取り出したものの、阪神の3連続完封勝利というのはなかなかありません。ようやく見つけたのは2002年。5月9日のダイエー5回戦(雁の巣)が6対0、11日の近鉄4回戦(上富田)は3対0、同じく5回戦も1対0。残念なことに2001年と2002年だけ新聞の切り抜きを紛失していて試合詳細が分からないんですけど、結果はスポニチ記録部さんに確認済みです。スポニチの皆さま、ありがとうございました!

 よって阪神ファームにとって、2002年5月以来16年ぶりの3試合連続完封ということになります。それまでにも3試合連続はあると思われますが、4試合連続はなし。ただしBISにウエスタン・リーグのデータが残っているのは1991年以降なので、それ以前はわかりません。つまり1991年以降では、チーム最多タイの3試合連続完封勝利、という結論に達しました。ことしはまた“○年ぶり”が続出しそうな予感がしますねえ。

 ちなみに、きょう25日からは中日との3連戦で、まず7対2で勝ちました。阪神は能見篤史投手が先発、中日は市立西宮高校出身のルーキー・山本拓実投手です。能見投手にとってナゴヤ球場で投げるのは9年ぶり、ウエスタン公式戦の登板は10年ぶりのことだったんですね。もちろん相棒は岡崎太一捕手で、チームの連続完封勝利は3で止まったものの4連勝。貯金は今季最多、2015年8月9日以来の9となっています。

3試合で34三振しましたが…何か?

島田選手のおじいさんが、ご夫婦で鳴尾浜初観戦!8回にようやく回ってきた打席を撮ろうと、カメラを構えていらっしゃいました。
島田選手のおじいさんが、ご夫婦で鳴尾浜初観戦!8回にようやく回ってきた打席を撮ろうと、カメラを構えていらっしゃいました。
勝利のハイタッチ、島田選手。次はタマスタで、いやヤフオクドームで見てもらいましょう!
勝利のハイタッチ、島田選手。次はタマスタで、いやヤフオクドームで見てもらいましょう!

 ところで、3試合連続完封勝利の阪神ではありますが、ヒットの数は相手より少ないですね。20日(1対0)は阪神3安打、巨人6安打。22日(3対0)は阪神4安打、オリックス6安打。24日(3対0)も阪神5安打、オリックス7安打。しかも20日、22日が11三振、24日は12三振と、3試合とも2ケタ三振を喫しました。3試合で34三振って…。でもまあ投手陣の好投と、早い回に長打でうまく得点したことが勝因でしょうか。

 では24日のオリックス戦の詳細をどうぞ。この日は1軍から江越大賀選手、板山祐太郎選手、熊谷敬宥選手が参加して、江越選手が第5号の先制ソロホームラン、熊谷選手もタイムリー内野安打を放っています。

《ウエスタン公式戦》5月24日

阪神-オリックス 10回戦 (鳴尾浜)

 オリ 000 000 000 = 0

 阪神 001 200 00X = 3

◆バッテリー

【阪神】○藤浪(3勝)-S伊藤和(1勝1敗4S)/ 坂本-小宮山(8回~)

【オリ】●小林(1敗)(4回)-本田(1回)-K鈴木(2回)-大山(1回) / 西村

◆本塁打 江越5号ソロ(小林)

◆打撃  (打-安-点/振-球/盗/失) 打率

1]中:江越   (3-1-1 / 2-0 / 0 / 0) .225

〃中:俊介   (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .000

2]一:西岡   (2-0-0 / 2-1 / 0 / 0) .200

〃二:森越   (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .212

3]右:高山   (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .294

4]二:板山   (2-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .281

〃左:島田   (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .238

5]三遊:北條  (3-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .228

6]左一三:陽川 (2-0-0 / 2-1 / 0 / 0) .214

7]遊:熊谷   (3-1-1 / 0-0 / 0 / 0) .216

〃投:伊藤和  (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―

8]捕:坂本   (2-1-1 / 1-0 / 1 / 0) .320

〃打捕:小宮山 (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .333

9]投:藤浪   (1-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .000

〃打一:西田  (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .250

◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ

藤浪 7回110球(6-7-3 / 0-0 / 0.35) 153

伊藤 9回 26球 (1-1-0 / 0-0 / 2.04) 147

 ※伊藤=伊藤和

《試合経過》※敬称略

打球に見入ってしまい、写真は既にホームイン間近。第5号ソロの江越選手です。
打球に見入ってしまい、写真は既にホームイン間近。第5号ソロの江越選手です。
先制弾の江越選手(右から2人目)に、藤浪投手(左から2人目)も感謝!
先制弾の江越選手(右から2人目)に、藤浪投手(左から2人目)も感謝!

 まず打線は1回に西岡が、2回に陽川がそれぞれ四球を選んだだけで得点にはつながらず。3回も連続三振で2死になってから、江越が左中間へ5号ソロを放って先制しました。これがチーム初ヒットです。

 そして4回、板山の四球と北條の右前打で2死一、二塁として、熊谷がタイムリー内野安打!(ファーストが捕ってピッチャーに送るもセーフ)。これで北條が三塁へ進み一、三塁となって続く坂本の右前タイムリーにつながります!藤浪の打席で盗塁を決めた坂本。それについて試合後に“告白”あり。

 5回は高山が右前打しますが併殺。実はこれが最後のヒットで、6回からは3イニング連続で三者凡退。3、4、5回に出た5安打のみでした。

 一方、先発の藤浪は三者凡退で立ち上がり。2回は先頭のマレーロが右前打、1死後に四球を与えて一、二塁としたところで園部がセンターへ大きな当たりを放ちます。これを江越がこちらに背中を向けたままランニングキャッチ!3回も先頭の杉本に左安打を許しただけで、4回は三者凡退です。

中盤から修正できたことがよかったと藤浪投手。
中盤から修正できたことがよかったと藤浪投手。

 5回は鈴木昂の中前打と根本への四球、岡崎に内野安打されて2死満塁のピンチを招きましたが、3番・西村は投ゴロ。ファウルと思われたものの藤浪が捕って一塁へ送球、これで選手たちは引き揚げたのですが、審判団が集まって協議した結果、やはりファウルと判定。すると阪神ベンチから選手がすぐ守備位置へ。予期していたのでしょう。そして次の球、おそらくフォークで空振り三振!

8回と9回は、“安定の”伊藤和投手がしっかり抑えました。
8回と9回は、“安定の”伊藤和投手がしっかり抑えました。

 6回は1四球のみ、7回はまたヒットと内野安打で2死一、二塁とするもしっかり抑え、ここで藤浪は交代しています。

 8回からは伊藤和と小宮山のバッテリーが、まず3番からを三者凡退に!9回は2死から鈴木昂にショート内野安打(これでチーム7安打のうち3安打)を許しましたが、相変わらず安定のピッチングで問題なし。3試合連続のシャットアウト勝ちです。

「積極的な気持ちで投げられています」

 藤浪投手は登録抹消後、5月8日のオリックス戦が7回102球で5安打9三振2四球の無失点。ついで15日のソフトバンク戦は6回122球で4安打9三振1四球の1失点でした。そして24日は7回110球で6安打7三振3四球の無失点です。

 試合後、ストライク先行でいい流れが作れたのでは?と聞かれ「ちょっとゲームの入りは、このファームに来てからの3試合の中で自分としては一番感覚が合わなかった。でも中盤以降は修正できたし、よかったと思います。そんなにひどかったわけではなくて、自分の中ではよくないなという感じで。そのままバタバタと崩れなかったのはよかった」と答えました。

この日の最速は153キロ。藤浪投手の場合、150キロ超えも普通に思えますね。
この日の最速は153キロ。藤浪投手の場合、150キロ超えも普通に思えますね。

 変化球でカウントを取ることが課題という藤浪投手。「遅いボールをもう少し使えたらとは思いますが、左バッターに対してスライダーでカウントを取れたり、フォークを投げられたのでいいかなと」。試合の中で修正した点は?「フォームのバランス、感覚的なものです。自分の中で、軸に巻きついている感じがなかったので」

 前回より前進しましたか?「ファームに来てから感覚は悪くないので。意図した投球、意図した配球を自分で考えながら、こうしてやろうという積極的な気持ちで投げられているのはいいかなと思います」。今回のファームで、藤浪投手には明るい表情が多い気がしますね。ただ先発するたびに鳴尾浜では入りきれないほどお客様が来られるので、やはり甲子園がいいですよね、次は。楽しみにしています!

矢野監督の談話をたっぷり!

 続いて矢野燿大監督です、藤浪投手について「よかったと思うよ。フォアボール3つだよね?1軍での(ストライクが)入らんという投球ではないし。フィールディングも牽制もそつなくやれていたし。この3回の登板で、自分と勝負しているピッチングというよりは相手をどう打ち取ってやろうかと、ちゃんと勝負できるような形が出てきたのは、もちろん推薦の中に入ってくる。上との兼ね合いだろうけど、3回続けられたのは本人の気持ちも前を向く登板になったかと」と話しました。

この3試合の好投で、矢野監督からは及第点をもらっています。
この3試合の好投で、矢野監督からは及第点をもらっています。

 本人が、入りはよくなかったけど中盤以降に修正できたと言っています。「今まではそういうことすらできない、何もできない感じになってしまうピッチングが上では多かったから。自分がこうしたい、こうやろうっていうものが体現できていなかったんじゃないかな」

 前回より球数も少なかったですね。「そうやね。最初(8日)が一番よくて、前回は多少苦しんで、きょうはその間くらいという感じやった。でもまあ結果的にすごくよかったし、1軍で勝負できるところまで来ているかなと思うけど。2回の、あの江越のファインプレーがなければ、ここまでスイスイといかなかった可能性もあるし。やっぱり反省することもあり、まだまだ発展途上のピッチャーやから“これでよし”ってのはない。でも自分と戦っていないのが一番、こっちとしても送り出していけるような登板になってるかなと思う」

1軍のチーム内をかき回してほしい

 その江越選手にホームラン!矢野監督は「まあ上に行ってチャンスもらって、ホームラン打ったりはしたけど、代走と守備要員だけではもったいないと俺は思っているので。何とかレベルアップして勝負できる、競争に入っていけるような選手になってもらわないと困る。試合に出られないのであれば、こっちに来て何かきっかけつかんでいくのも大事なことやし。それは板山もね。(熊谷)敬宥はまだまだ足以外でやることがいっぱいあるけど」と言います。

ベンチ前で矢野監督らに迎えられる江越選手。背中からではゴリラのポーズが撮れず…残念。
ベンチ前で矢野監督らに迎えられる江越選手。背中からではゴリラのポーズが撮れず…残念。

 「その中で(江越が)ファインプレーして打席に立ってホームラン打って、たまたまかもしれんけど打てたっていうのはつながっていく。今は(中谷)将大も行っているけど、上にいるだけじゃなくて暴れ回るようなね。“孝介さん、ちょっとゆっくりしといてくださいよ”ぐらいの競争に入っていったら、孝介自身もより頑張るやろう。もっともっとチームの競争が激しくなっていけば、1軍が強くなることにつながるから。そういう意味では、そこらへんの選手がたくさんいるので、みんなでチーム内をいい意味でかき回してほしい」

 江越選手と板山選手が交代したあと熊谷選手だけ7回まで出たのは、もう1打席立たせようと?「そんな気を使う選手じゃないんだけど(笑)。次、ピッチャーのところで西田を代打で行かせたいと思ったので、それじゃもう1回守ればいいんじゃないかと。本来なら8番なんだけど、1軍選手やから7番にした。気ぃ使ったわ」。これに記者陣も爆笑です。

数字には出ないところのプラスアルファ

この日も初球を打っての右前打。好走塁もあった北條選手です。
この日も初球を打っての右前打。好走塁もあった北條選手です。

 4回に北條史也選手がまた初球を好打し、熊谷選手の内野安打で三塁まで走りました。これが次の1点につながったことに「ひとつひとつの意識が、だいぶ高まってきてくれているし、その延長戦上でというのもある」と矢野監督。そして「最近、相手の警戒がすごすぎて盗塁もなかなか簡単にはできない状況になっているけど。それだけ相手が警戒している中で北條が初球の真っすぐをカーンと打ったりとかね。そういうことにもつながっていく」と分析します。

 「数字には出ないところのプラスアルファってのはあると思うし。そういう野球をここでしっかりやって、そのまま上でやれることだと思うから続けてやっていきたい」

 矢野監督に聞いた最後は坂本誠志郎選手です。この日もタイムリー、ファームに来てから結果が出ていますねと振られ「そうでもないで(笑)。まだまだ大したことないやろ。今ぐらいじゃ上に行って出られへんやろ?もっともっとやらないと。たまに出るだけならチャンスくれるやろうけど」と、あえて厳しい矢野監督でした。わざとです。

 全体的なレベルアップが必要?「今、誠志郎の一番の課題はスローイングじゃないかな。そこが上がれば、より使ってもらえるところに行けると思う。藤井(バッテリーコーチ)と一生懸命やっているし、気持ちの面では何とかしたいっていうのが、しっかり持てる選手やから。藤井と一緒に、俺ももちろん気づいたことは言うし。キャッチャーも上でもっとレベルの高い競争してほしいんで」

坂本、連続完封の3試合でマスク

マイクを渡されてスピーチをする坂本選手。最初は真剣な顔でしたね。
マイクを渡されてスピーチをする坂本選手。最初は真剣な顔でしたね。

 大トリは坂本選手です。試合後のヒーロースピーチが回ってきて「暑い中、応援ありがとうございました」とお礼を述べたあと「えー、3年目にして、今回が初盗塁です!」と。あ~そうだったんですね。それはそれは。少しニヤッという感じで間を取り、笑いに包まれたスタンドから「おめでとう!」と祝福の声も。これで坂本選手は笑顔になって言葉を続けました。ちょっと聞き取れなくてすみません。「1軍へも見に来てください」というような感じです。

 ではコメントをご紹介しましょう。まず藤浪投手について「しっかり攻めていったストレートの強さとか、(相手は)スライダーなどの半速球に強いバッターが多いので、互いに確認しながらいけたのがよかった。外からのスライダーでカウントを取れたことで幅も広がったと思います」と試合を振り返っての言葉。

少し目じりが下がってきたのは、盗塁の話になってから?
少し目じりが下がってきたのは、盗塁の話になってから?

 この3試合、坂本選手のリードで連続完封勝利ですねと言ったら「最後は僕じゃないので」と。確かに、この日は8回から小宮山選手と代わりました。でも20日の巨人戦、22日のオリックス戦はフルでマスクをかぶっています。

 「ピッチャーがいいからですよ。馬場もよかったし、福永も。真っすぐで押していけて、ファウルを取ったり空振りを取ったりというのを早い段階でできた。後半はみんなしんどくなるけど、ブルペンで捕って話をしながら意図してやったことができた。あとは大事な場面やピンチの場面で粘れたし。福永も藤浪もボールに力があったからできたので。打たれたら僕のせいになるくらい、ピッチャーがいい球を投げていましたね。みんな」

3年目の初盗塁、次はいつ?

 矢野監督が、今の課題はスローイングと。「はい、課題です!藤井さんとも話をしながら練習しています。一日でも早く身につくように。自分にとって一番いい形を探しながら。ミスをしても、というのは変ですけど、自分がやろうとしていることをやっていきたいです」

最後はスタンドの反応に応えて、思い切り笑っています。
最後はスタンドの反応に応えて、思い切り笑っています。

 4回の右前タイムリー、0-2と追い込まれてからでしたね。「非常に追い込まれていました(笑)。何とかバットに当てようと。最近あまり打てていなかったので、何とか食らいついて、いいところへ飛んでよかったです」。そして盗塁!初めてとは…。「走ったこともなかったので。自分でビックリしましたよ。セーフになったことに。まさかセーフになるとは思わなかった。次?いつかわからないですねえ」

 貴重なものを、きょうのお客様はご覧になれたと?「次いつ走るかわからないので、それを楽しみに見に来てもらえたら」。鳴尾浜でも甲子園でも構いませんので、ぜひまたチャレンジお願いします!

    <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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