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中谷選手が2打席連続弾も、モレノ投手の2者連続被弾で敗れた“首位攻防”2戦目《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
自身3年ぶり2度目の2打席連続&1試合2HRも、逆転負けで笑顔のない中谷選手。

 15日から鳴尾浜で行われたウエスタン・リーグ“首位攻防”の3連戦。第1ラウンドは終盤に逆転されて連勝が8で止まり、2位のソフトバンクにゲーム差なしと迫られた阪神。翌16日も、中谷将大選手が2打席連続のホームランなどで3対2とリードしながら、9回にモレノ投手が2者連続ホームランを含む6連打で5失点…またしても逆転負けを喫しました。ゲーム差は0ながら、ついに首位の座を奪われています。

 しかし、第3戦の17日は6対1で勝ちました!1点リードで迎えた終盤に岡崎太一選手の2ラン、さらにタイムリー二塁打などで追加点を挙げ、今度はモレノ投手も9回1イニングを抑えています。すぐに首位へ返り咲いた阪神はソフトバンクと再び1ゲーム差。この17日の試合詳細は次の記事でご紹介しますので、しばしお待ちください。

 では、16日のウエスタン・ソフトバンク戦の結果です。

《ウエスタン公式戦》5月16日

阪神-ソフトバンク 10回戦 (鳴尾浜)

 ソフ 002 000 005 = 7

 阪神 010 110 000 = 3

◆バッテリー

【阪神】谷川-伊藤和-石崎-●モレノ(2敗5S)‐山本 / 坂本

【ソフ】長谷川宙(5回)-五十嵐(1回)-笠原(1回)-○島袋(1勝)(1回)-寺原(1回) / 谷川原-堀内(9回裏)

◆本塁打 神:中谷2号ソロ、3号ソロ(長谷川宙) ソ:長谷川勇4号ソロ、真砂1号ソロ(モレノ)

◆三塁打 ソ:明石

◆二塁打 ソ:牧原、江川

◆盗塁 神:高山(1)、熊谷(20) ソ:西田(2)、真砂(1)

◆打撃  (打-安-点/振-球/盗/失) 打率

1]中:高山   (2-0-0 / 0-1 / 1 / 0) .000

〃三:今成   (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .222

2]遊二:熊谷  (3-1-0 / 1-1 / 1 / 0) .213

3]三遊:北條  (3-1-1 / 0-1 / 0 / 2) .221

4]一左一:陽川 (4-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .211

5]左中:中谷  (4-2-2 / 1-0 / 0 / 0) .195

6]二一:森越  (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .196

〃打左:緒方  (2-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .218

7]右:島田   (3-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .252

8]捕:坂本   (4-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .400

9]投:谷川   (2-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .000

〃打:西田   (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .286

〃投:伊藤和  (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―

〃投:石崎   (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―

〃投:モレノ  (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―

〃投:山本   (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―

〃打:小豆畑  (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .000

◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ

谷川  6回 95球 (5-6-2 / 2-0 / 2.43) 146

伊藤和 1回 15球 (1-2-0 / 0-0 / 2.45) 148

石崎  1回 8球 (0-1-0 / 0-0 / 0.00) 148

モレ 0.1回 30球 (6-1-0 / 5-5 / 8.74) 153

山本 0.2回 12球 (0-1-1 / 0-0 / 3.38) 138

 ※モレ=モレノ

《試合経過》※敬称略

5回2死から四球を選んだ熊谷選手が今季20個目の盗塁。そろそろ…?
5回2死から四球を選んだ熊谷選手が今季20個目の盗塁。そろそろ…?
続く北條選手の右前タイムリーで生還しました。
続く北條選手の右前タイムリーで生還しました。

 先制は阪神。2回に先頭の中谷がレフトへ第2号のソロホームランを放ちました。しかし1回を三者凡退で立ち上がった谷川が、2回は連打されたあと後続をしっかり断ちながら、3回に逆転を許します。牧原の二塁打、サードエラー、四球で1死満塁としてグラシアルの中犠飛、続く川瀬の中前タイムリーで2失点(自責は0)。

 4回は先頭の江川に二塁打され、四球と犠打で1死二、三塁とピンチを招くも0点に抑えると、その裏にまたまた先頭の中谷が2打席連続となる3号ソロ!これで同点としました。さらに4回は2死から熊谷が四球を選び、二盗成功(これで20盗塁)。北條の右前打で生還して1点勝ち越しです。

今季も安定感抜群の伊藤和投手です。
今季も安定感抜群の伊藤和投手です。
9回に登板したモレノ投手。まさかの6連打5失点…。
9回に登板したモレノ投手。まさかの6連打5失点…。
最後は山本投手が江川選手から三振を奪って締めました。
最後は山本投手が江川選手から三振を奪って締めました。

 5回と6回は三者凡退で投げ終えた谷川。7回は伊藤和が代打・真砂の内野安打と盗塁を許すも無失点。8回の石崎は先頭の明石をショートのエラーで出しますが、あとをしっかり抑えて無失点。わずか8球でした。

 9回はモレノが登板。先頭の塚田から三振を奪って1死。ところが次の代打・長谷川勇に左中間へのホームランを打たれて同点。続く真砂にもレフトへ今季1号ソロ。まだ終わりません。1番の牧原はセカンド内野安打、西田は右前打で1死一、三塁とし、明石に右越えのタイムリー三塁打。2人を還します。続くグラシアルも中前タイムリー。2連発を含む6連打で5点を失ってモレノは降板。

 代わった山本はグラシアルの代走・古澤を牽制で刺し2死としながら、川瀬に四球を与えました。しかし江川は真っすぐで見逃し三振を奪って、追加点は与えず。なお打線は6回に代打・緒方の中前打、7回に熊谷の中前打が出ただけで、8回と9回は三者凡退。反撃のチャンスもないまま試合終了。2試合続けて終盤に逆転されての負けです。

見えた兆し、続けば文句なし

 矢野燿大監督の談話は、まず中谷選手について。待望の1号ホームランから、さほど間を空けずに出た2本を振り返り「兆しというか、ちょっとずつタイミングの取り方とか、練習の打球の方向とか練習の内容とか、そういうのでいいものが出てきたから、よくなりそうだな~というのはあるんだけど。もちろん、きょうの2本をきっかけにしてもらいたい」とのことです。

矢野監督いわく「内容があった」という、中谷選手の右飛(5回)。
矢野監督いわく「内容があった」という、中谷選手の右飛(5回)。

 そして「あとはそれ以外のところやね。それ以外の打席の内容を上げてくるっていうことは、やっぱり必要やと思う。いい内容の2本プラスアルファ。まあ全部が全部打てるわけじゃないけど、もう1つのライトフライは内容があったので、そういうのを増やしていってくれたらチャンスは来るんちゃうかな」と課題を提起しました。

 これが続けば…という記者陣の言葉を引き取って「続けば“ノー文句”でしょう!もちろん1軍だって中谷のことは気になっているだろうし、ファンの人も(昨年1軍で)20本打ったと誰でも知っているわけだから。本人も早く戻りたいと、目の前のこと一生懸命やっている。これが続くようにしてもらいたい」と矢野監督。すべての人が同じ思いですよね。

写真は11日の中谷選手。今季1号を放って笑顔で走るところです。
写真は11日の中谷選手。今季1号を放って笑顔で走るところです。

 中谷選手は2015年4月28日のオリックス戦(鳴尾浜)で、本人いわく「人生初の2打席連続ホームラン。1試合2本もプロ初」を放って以来、3年ぶり2度目の連発でした。

 徐々にタイミングが合ってきた?と聞かれて「そうですね。いろいろと考えながらやっています」と回答。1本目が144キロ、2本目は143キロを打った2打席連続ホームランで、真っすぐを狙っていたかと問いには「いや」とひとことだけです。矢野監督が話していたように「タイミングを合わせるということをやっていきたい」と、中谷選手自身も言っています。

谷川は及第点、モレノは心配

 投手陣のコメントをご紹介する前に、矢野監督と高橋建投手コーチの話です。谷川昌希投手について矢野監督。「それなりに、というとアレだけど、しっかりまとめたかなっていう。特に最後のイニングも球数が増えてきたところでポンポンポンと抑えたのは意味があると思うし。途中ちょっと危ないところも、左バッターへの落ちる系のボールでいい球もあったから。この前、戻ってきた時に伝えたんだけど、これからのプロ生活においてタテ変化というのはアイツの中で課題になっていくと思う。そういうのを試しながら、いいボールもあったんじゃないかな」

6連打を浴びたモレノ投手(中)。通訳を伴ってマウンドへ行く福原投手コーチ(右)。
6連打を浴びたモレノ投手(中)。通訳を伴ってマウンドへ行く福原投手コーチ(右)。

 モレノ投手には「もうこれで3回連続かな。ビッグイニングというか、打たれちゃってるんで。キャッチャーに聞くと、ボールは悪くないと言うんだけど。一番は高さやろね。空振りを取れているのは低めのゾーン。変化球でも取れているし。高くいけば打たれる。スピード差がそんなにないので、真っすぐのタイミングで全部巻き込んでいかれるようなボールになっているから。やっぱり高さはすごく大事。今のままじゃちょっとね。3回も続くと、たまたまっていうことではなくなってしまう。そこはピッチングコーチと話しながら」と矢野監督。

先発の谷川投手。6回2失点(自責0)でした。
先発の谷川投手。6回2失点(自責0)でした。

 次に高橋コーチ。谷川投手には「ここという時のメンタルの強さを感じますね。1軍のマウンドは本人の中でいい経験になったと思います」、石崎剛投手には「しっかり抑えたね。いきなりアクシデント(味方エラー)も、そういうとこをストライク先行で。1軍ではそううまくいかないこともあるけど、2軍でのパフォーマンスが評価になるし、1軍につながる」とのこと。そして「モレノは3回続けてですよねえ。考えなきゃいけないのかなと思う」と、やはり心配な様子でした。

試合の中で修正できたことが収穫

 谷川投手は、前回ほど左打者に打たれなかった点を聞かれて「そこは結構、意識して投げています。きょうはスプリットの精度があまりよくなくて、カットボール頼みになった。試合中に悪い感じがしたので、左打者へのシュートを深く握ってツーシーム気味に投げて落ち幅を広げました。そこはしっかり試合の中で修正できたので、よかったと思います」と言います。

2回の打席は三ゴロ、でも常にフルスイングです!
2回の打席は三ゴロ、でも常にフルスイングです!

 グラシアル選手の犠飛に続いて、川瀬選手にタイムリーを許した3回を「犠牲フライは最悪考えていましたが、(川瀬選手に)初球からカーブってのは…。逆方向を意識しているバッターにカーブは反省点。ボールから入ってもよかったけど、ちょっと高くなってストライクゾーンに入って打たれた。初球に強い球でファウルもありかなと。まあ結果論ですけど」と振り返りました。

 1球の怖さを知ったと話していたことについて「常に思っておかないといけない部分だと前回の登板でより強く感じたので、今後も継続していきたい」と谷川投手。ここで囲み取材は終わったのですが、ちょっとバッティングのことも聞いてみようと、打席は…と言いかけた途端に「打てないです!」と素早い答えが(笑)。「無理です。当たらない。速すぎる」

5回は見逃し三振で、ベンチへ戻る谷川投手。
5回は見逃し三振で、ベンチへ戻る谷川投手。

 そうですか?打席での立ち姿はなかなかのものだったけど。「雰囲気を出しています!こいつ振ってくるな~と思わせるように」。実際、フルスイングしていますよね?「はい。でも7年ぶりなので、当たんないです。サードゴロは奇跡です。嬉しかった~!当たって」。バッターボックスを外して、コーチのサインを見るところも風格が漂っているような。「形から入っているので」。冗談のように聞こえますが、そこそこ真剣に語ってくれたものです。笑ってすみません!

 

「安定させることが一番」と石崎

 16日に岡本洋介投手と入れ替わりで抹消となった石崎投手が、さっそく登板して無失点。「(先頭が)エラーって形だったけど、自分自身はそこまで焦らず、落ち着いていけました。どんな展開であれ、そういうことを続けていけたら、自ずといい方向に進んでいけると思います」と前向きなコメントです。

安定を求めて、次の昇格に備えたい石崎投手。
安定を求めて、次の昇格に備えたい石崎投手。

 1軍のコーチからは、どんなことを言われましたか?「一番は安定したピッチングを求められているかなと。フォアボールとか、暴れ球とか、1つでも2つでも減ることによって、見ている方の印象は変わってくると思う。きょうみたいなピッチングを積み重ねていけば、安定というのが得られるんじゃないかと」

 この日は150キロを越えていなかったものの「それは気にしていません。安定してきたらスピードとなるけど、それより今の優先順位は安定が一番なので」とキッパリ。

5回にタイムリーを放った北條選手。この日は守備を反省。
5回にタイムリーを放った北條選手。この日は守備を反省。

 5回に右前タイムリーを放った北條史也選手は、前日に続く打点で「追い込まれてから、強引にいかず、一塁も空いていたので臭いところを攻めてくると思って。粘って逆方向という意識がよかったかな」とコメントしました。ただしサードで1つ、ショートで1つエラーしてしまったことは「守れなかったら試合に出られない。まずは守りと思ってやります」と反省。このところ、いい守備も多かったので残念ですね。

 その守りにおいて、6回から出場した今成亮太選手がサードで好プレーを見せています。アグレッシブな守備だったと言ったら「疲れたー!」とひとことでした。

 

    <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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