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矢野監督が22年ぶりに戻ったナゴヤ球場のこぼれ話&教育リーグ個人成績《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
ナゴヤ球場で自身の中日時代を思い出す矢野監督。「星野さんの前を通るのが怖かった」

 福岡に遠征していた阪神ファーム。ウエスタン・リーグの今季開幕カードであるソフトバンク3連戦が終わりました。きょう18日は打線が4安打で完封負け。対戦成績は1勝2敗です。ドラフト2位の高橋遥人投手が6回途中まで投げて、4安打1失点ながら負け投手となっています。次は20日から由宇での広島戦。矢野燿大監督は中日時代、もしかしたらファームの試合で訪れたことがあるかもしれませんね。

 という話をするのは、13日と14日に教育リーグ・中日戦が行われたナゴヤ球場でのことがあるからです。13日の朝、打撃練習が始まる前にベンチへ戻ってきた矢野監督が「久しぶりやなあ、ナゴヤ球場!いつ以来やろ」と感慨深げに言い、ぐるりと見渡しながら「懐かしいわ。ブルペン(グラウンド内にある投球練習場)の位置がちょっと変わったかな?あそこに椅子があって、座ってたんや。そうそう俺、1番センターで出たこともあった」と次々に思い出があふれてきます。

ここでも思い出す、怖かった星野監督

 考えてみると、私はファームの本拠地になってからのナゴヤ球場しか知りません。でも矢野監督にとっては、ここが1軍の舞台だったんですよね。「星野さんはいつもあの席に座っていて」と指差したのは一塁側ベンチ最後列の右端、通路のすぐ横でした。「ロッカールームからベンチに入る通路が1つしかなくて、絶対に星野さんの前を通らなあかんねん。もう1か所あったら、そっちを通れるのに。なんか怒られるんちゃうかなって、みんな縮こまりながら通った」。今だからこその笑い話、当時はもう決死の覚悟だったのかもしれません。

ドラゴンズ一筋、23年目の荒木選手(左)と矢野監督。
ドラゴンズ一筋、23年目の荒木選手(左)と矢野監督。

 それで結局、何年ぶりになるんでしょう?「10.8っていうのがあって、そのあとに10.6もあって」。中日ファン、巨人ファンの方には忘れられない、伝説のナゴヤ決戦のことですね。1994年10月8日と1996年10月6日、前者は勝てば優勝で、後者は勝てばプレーオフという最後の最後の戦い。いずれも巨人が勝っています。1996年は星野監督が復帰していて、しかもナゴヤ球場ラストゲームでもあった日。その時のベンチがどんな様子だったか…思い出すのも恐ろしいという矢野監督の表情でした。

 その翌年、つまりナゴヤドーム元年のオフにトレードで阪神へ来た矢野監督にとって、自身の「阪神時代にファームのゲームで来たことはないはず」という記憶を採用させていただくと、1996年10月6日以来22年ぶりに戻ってきたナゴヤ球場ですね。今はナゴヤも鳴尾浜と同じで、三塁側をホームチームが使っています。よって矢野監督は思い出深い、星野さんが座っていた一塁側ベンチで采配をふるったわけです。

今もある球場前のラーメン屋さん

バッティングケージの後ろで森野コーチ(左)と会話中です。
バッティングケージの後ろで森野コーチ(左)と会話中です。

 矢野監督が就任して初めてのナゴヤ球場とあって懐かしい方々も来られ、昨年で現役を引退した新任の新井良太コーチのところへも、いろんな方が顔を見にいらっしゃいました。そういえば、矢野監督や新井コーチだけでなく、筒井壮守備走塁コーチも森越祐人選手も元中日です。長年在籍されているスタッフの方々とも挨拶は欠かせません。

森野コーチと浜中コーチ(右)は、同い年で同期の入団。フレッシュ球宴も一緒に出ましたね。
森野コーチと浜中コーチ(右)は、同い年で同期の入団。フレッシュ球宴も一緒に出ましたね。

 そんな中、一塁ベンチを訪れた中日の森野将彦打撃コーチに矢野監督が「森野が入ってきた時って1軍はまだここやった?」と質問。「僕の時はもうナゴヤドームでしたよ」と森野コーチ。「えー!そうかあ。もうドームやったんかー」と、ちょっと時間差を感じたような返事でした。そのあと、きょうのオープン戦でも素晴らしい守備を見せた荒木雅博選手(もう40歳ですか。動きは20代なのに)やコーチ陣、スタッフの皆さんとも会話。

 やがて唐突に「ラーメン龍ってまだあるの?」と矢野監督。まだありますよと言われて、他の人にも「ラーメン龍がまだあるらしいな。懐かしいわ。え、つけ麺?そんなん俺らの時はなかったわ」などと話しかけ、かなり盛り上がっていました。監督にとって、とても懐かしい時間だったみたいです。ラーメンを食べることができたかどうかは確認できなかったけれど、これから何度も機会はありますね。

職場見学でナゴヤ球場へ来た中学生

 こぼれ話・その2。

職場見学の中学生たち。白いシャツと青のハーフパンツに着替えてお手伝い…いや仕事中。
職場見学の中学生たち。白いシャツと青のハーフパンツに着替えてお手伝い…いや仕事中。

 14日の試合前には中学生と思しき団体がグラウンドの入り口に。聞けば、愛知県の中学校が行っている『職場見学』なのだと言います。なるほど、兵庫県では『トライやるウィーク』という名前で、県内の中学2年生が様々な会社や店などに出向き、職業体験をしていますね。私が通っている美容院にも毎年2人くらい来てますし、放送局でも出会ったことがありました。いいですよねえ。我々の時代にはなかったので、すごくうらやましい。

試合前の散水も参加しました。ホースを手に戻ってくるところ。
試合前の散水も参加しました。ホースを手に戻ってくるところ。

 という感想はさておき、この日やってきたのは愛知県岡崎市の矢作中学校1年生11人(男子6人、女子5人)です。途中からは体操着に着替えて、バッティング練習が終わった際の球拾いやネットの片付け、さらにグラウンドの水撒き作業にも参加してホースを持ったり。試合中はしっかり見ていなかったんですけど、5回終了時の水撒きでも姿がありました。

 プロ野球の球場という職場を体験して、みんな何を感じたんでしょう?男子も女子もすごく目をキラキラさせてグラウンドへ出ていたのが印象に残っています。「あの時、ナゴヤ球場にいた選手だ!」と自慢してもらえるよう、みんな1軍で大活躍しなくちゃいけませんね。

ホームランを打った選手の迎え方

これは2014年、荒木選手を迎える阪神ベンチ。かなり前へ出ていますね。※相羽としえさん撮影
これは2014年、荒木選手を迎える阪神ベンチ。かなり前へ出ていますね。※相羽としえさん撮影
一方の中日は高橋選手をベンチの中で迎えています。※相羽としえさん撮影
一方の中日は高橋選手をベンチの中で迎えています。※相羽としえさん撮影

 さらにこぼれ話です。本当にどうでもいいことで、他の方は、まったく気にされていないでしょう(笑)。さらっと読み流してください。

 ナゴヤ球場のウエスタン公式戦を見に行き始めて、しばらく経った頃。中日を取材している方に「タイガースはホームランが出た時、ベンチの中から全員出てきてハイタッチをするんですね。ドラゴンズはベンチの中から手だけを出していますよ」と言われました。えーっ、そうなの?阪神の方しか記憶がなく、他も同じだと思い込んでいたけど違うとは。それが約5年前のことだったと思います。

 そう言われてみると、ドラゴンズの選手はベンチ前に並んでいませんね。まあ鳴尾浜はベンチの前部分に柵も何もないので、ビジターチームも普通に前へ出ていたはず。といってもタイガースみたいに数メートルも出てはいないでしょうけど。ナゴヤ球場での両チームの違いを写真で見せてもらって以来、ちゃんと確認しようと思いながら、いつも忘れていたのです。何年も。

これは2016年5月、上本選手が2ランを放った時。まだ前へ出ていました。
これは2016年5月、上本選手が2ランを放った時。まだ前へ出ていました。
これが、ことし3月14日。陽川選手を迎えたところ。みんな中にいます。
これが、ことし3月14日。陽川選手を迎えたところ。みんな中にいます。

 ところが先日の教育リーグは、1戦目に北條選手が、2戦目に陽川選手がホームランを打って、それを迎える選手たちは…“中”にいました!昔の写真を載せておきますので、比較していただくとわかるでしょう。ちょっと懐かしすぎる顔ぶれなので、そっちに目がいってしまうかも。

 昨年は一度しかナゴヤへ行けていなくて、ホームラン直後のベンチを撮影していないため、どうだったのか不明。また確認しておきます。覚えていたら。そして、実はもうひとつあるのですが…これも少し取材してから書くことにします。ただし、理由を尋ねたとて「特に意味はない」と返されるかもしれませんけど。以上、こぼれ話でした。

教育リーグ 出場全選手の個人成績

 3月3日から14日まで、ことしはウエスタン・リーグの春季教育リーグが7試合組まれていた阪神ファーム。すべて予定通り行われましたが、3日のソフトバンク戦は6回終了降雨コールドゲームとなっています。7試合の内訳と対戦成績はソフトバンク2(1勝1敗)、中日4(3勝1敗)、広島1(1勝)。通算では5勝2敗でした。

 また3月10日には四国アイランドリーグplus・香川と、11日はルートインBCリーグ・滋賀との交流試合を行って、どちらも完封勝ち。これを加えると全9試合で7勝2敗(完封勝ちが4)という結果です。

 下記の成績は、教育リーグだけでなく交流試合も合わせて計算しました。試合数の横にある(交1)は、成績の中に交流試合を1つ含むという意味で、(交)は交流試合のみの登板だった投手です。では、出場全選手の個人成績をどうぞ。公式記録がではありませんので、参考程度にご覧くださいませ。

《野手編》

【坂本】1試合

  3打数1安打0打点 .333

  三振0、四死球0

【長坂】3試合(交1)

  8打数3安打1打点 .375

  二塁打2

  三振0、四死球1

【梅野】2試合(交1)

  5打数1安打1打点 .200

  三振1、四死球0

【岡崎】7試合(交2)

  8打数1安打0打点 .125

  三振1、四死球0

【小宮山】6試合(交2)

  9打数1安打0打点 .111

  三振1、四死球0

  失策1

【原口】3試合

  8打数2安打1打点 .250

  二塁打1、犠飛1

  三振2、四死球1  

【北條】2試合

  6打数2安打3打点 .333

  本塁打1、犠飛1

  三振0、四死球2

  盗塁0、失策0

【熊谷】9試合(交2)

  21打数6安打5打点 .286

  二塁打1、犠飛1

  三振3、四死球7

  盗塁7、失策2

【山崎】2試合

  5打数1安打2打点 .200

  三振1、四死球0

  盗塁0、失策0

【森越】9試合(交2)

  16打数7安打1打点 .438

  二塁打1

  三振2、四死球8

  盗塁3、失策0

【今成】9試合(交2)

  17打数2安打1打点 .118

  二塁打1

  三振6、四死球0

  盗塁0、失策0

【陽川】2試合

  8打数5安打1点 .625

  本塁打1

  三振0、四死球1

  盗塁0、失策0

【荒木】7試合(交2)

  26打数7安打2打点 .269

  犠飛1

  三振1、四死球2

  盗塁5、失策0

【植田】7試合(交2)

  26打数7安打3打点 .269

  三塁打1、二塁打1、犠打1

  三振6、四死球4

  盗塁3、失策0

【西田】4試合

  12打数4安打3打点 .333

  二塁打2

  三振4、四死球2

  盗塁0、失策0

【江越】6試合

  21打数4安打0打点 .190

  二塁打1

  三振8、四死球0

  盗塁2、失策0

【伊藤隼】7試合(交2)

  27打数11安打5打点 .407

  二塁打2

  三振5、四死球1

  盗塁3、失策0

【島田】5試合(交2)

  20打数3安打2打点 .150

  三振5、四死球2

  盗塁1、失策0

【板山】9試合(交2)

  33打数12安打7打点 .364

  三塁打2、二塁打4

  三振5、四死球3

  盗塁2、失策0  

【緒方】2試合

  4打数1安打0打点 .250

  三振2、四死球0

  盗塁、失策0

《投手編》

  ※球速は表示された中での最速です。

【榎田】1試合(交)

  1回 安打2、三振3、四死球1

  失点0(自責0) 防御率0.00

  最速141キロ

【馬場】2試合

  4回 安打6、三振3、四死球1

  失点1(自責0) 防御率0.00

  最速149キロ

【岩田】1試合

  3回 安打2、三振2、四死球1

  失点1(自責0) 防御率0.00

  最速145キロ

【尾仲】1試合(交)

  1回 安打1、三振1、四死球1

  失点0(自責0) 防御率0.00

  最速144キロ

【小野】1試合

  7回 安打2、三振7、四死球2

  失点0(自責0) 防御率0.00

  最速148キロ

【才木】1試合

  7回 安打6、三振1、四死球1

  失点1(自責1) 防御率1.29

  最速146キロ

【福永】2試合(交1)

  9回 安打11、三振11、四死球5

  失点5(自責5) 防御率5.00

  暴投1、野選1

  最速147キロ

【竹安】1試合

  1回 安打1、三振1、四死球1

  失点1(自責0) 防御率0.00  

  最速142キロ

【守屋】2試合

  7回 安打3、三振4、四死球0

  失点1(自責1) 防御率1.29

  本塁打1

  最速145キロ

【山本】3試合(交1)

  4回 安打4、三振4、四死球3

  失点3(自責3) 防御率6.75

  最速137キロ

【青柳】2試合(交1)

  9回 安打2、三振8、四死球4

  失点1(自責1) 防御率1.00

  本塁打1

  最速142キロ

【岩崎】2試合

  11回 安打12、三振16、四死球2

  失点0(自責0) 防御率0.00

  最速142キロ

【伊藤和】2試合(交1)

  4回 安打1、三振3、四死球0

  失点0(自責0) 防御率0.00

  最速147キロ

【石井】3試合

  5回 安打5、三振4、四死球3

  失点3(自責3) 防御率5.40

  本塁打1

  最速145キロ

【歳内】3試合(交1)

  4回 安打3、三振5、四死球2

  失点0(自責0) 防御率0.00

  最速143キロ

 陽川選手の打率.625はすごい。たった2試合だけですけど。しかし、その2試合で三振がないこともすごい!って、とても失礼なことを言ってしまいました。でも、これまでの陽川選手って、だいたいホームランと三振がセットで、1本打ったら2つ三振がついてくる感じでしたもんね。これもかなり失礼…すみません。ことしの陽川選手に期待しましょう!

  <注釈※のない掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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