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教育リーグで好投した守屋投手を支える、矢野監督の「継続やぞ!」という声《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
6回に向けてキャッチボールをする守屋投手。6日の教育リーグ中日戦(鳴尾浜)にて。

 きのう6日、阪神鳴尾浜球場で今季初試合が行われました。選手寮・虎風荘とグラウンドの間に大きな建物が出現していて、まずビックリ。もちろんウエートルームが新しくなることは知っていたし、写真も見たのですが…。我々が使わせていただくプレスルームも2階に設置されています。新しいって、やっぱりいいですねえ。またバックネット裏のスタンドもいろいろと変化があるようです。

 さて、矢野燿大ファーム監督も鳴尾浜初采配でした。とはいえ昨秋のフェニックスリーグ、2月のキャンプ練習試合、そしてタマスタ筑後での教育リーグ・ソフトバンク戦と経ているので、それほど変わったことはありませんね。とりあえず中日の小笠原道大監督とのメンバー交換写真など撮ってみた次第です。

プレーボールに先がけて両監督と審判団でメンバー交換。
プレーボールに先がけて両監督と審判団でメンバー交換。

 この日は山崎憲晴選手が甲子園のオープン戦へ、原口文仁選手植田海選手が教育リーグ出場で鳴尾浜へやってきました。キャッチャーは日替わりみたいな感じですかね。植田選手は今のところ、9日まで教育リーグに出場する予定。今後もこういう入れ替えを経て、最後のオリックス3連戦あたりで開幕メンバーが見えてくるのでしょう。では試合結果からどうぞ。

《ファーム教育リーグ》

 阪神- 中日 (鳴尾浜) 

 中日 000 001 011 = 3

 阪神 010 000 100 = 2

  ※特別ルール

◆バッテリー

【阪神】守屋-歳内-山本-竹安 / 原口-岡崎(7回~)

【中日】鈴木翔(5回)-若松(1回)-浅尾(1回)-福谷(1回)-藤嶋(1回) / 杉山-武山(6回~)

◆本塁打 中日:谷(守屋)

◆二塁打 阪神:西田2、江越、板山

2回に伊藤隼選手が右前打&二盗でチャンスメイク。
2回に伊藤隼選手が右前打&二盗でチャンスメイク。
2死三塁で西田選手が二塁打。打った瞬間はアウトと思っている?
2死三塁で西田選手が二塁打。打った瞬間はアウトと思っている?

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策)

1]左:江越  (4-1-0 / 3-0 / 0 / 0)

2]遊:植田  (4-0-0 / 3-0 / 0 / 0)

3]一:荒木  (4-2-0 / 0-0 / 1 / 0)

4]中:伊藤隼 (4-2-0 / 1-0 / 1 / 0)

5]捕:原口  (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0)

〃捕:岡崎  (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0)

6]右:板山  (3-1-0 / 0-1 / 0 / 0)

7]三:西田  (4-2-2 / 1-0 / 0 / 0)

8]指:小宮山 (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0)

〃打指:今成 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0)

9]二:森越  (3-0-0 / 0-0 / 0 / 0)

〃二:熊谷  (0-0-0 / 0-0 / 0 / 1)

◆投手(打-振-球/失点-自責) 最速キロ

守屋 6回 76球 (2-4-0 / 1-1) 145

歳内 1回 20球 (1-1-1 / 0-0) 141

山本 1回 30球 (1-1-2 / 1-1) 137

竹安 1回 29球 (1-1-1 / 1-0) 142

<試合経過>※敬称略

7回を0点に抑えた歳内投手。
7回を0点に抑えた歳内投手。
7回、先頭で二塁打を放った板山選手は、西田選手(左奥)の二塁打でホームへ!
7回、先頭で二塁打を放った板山選手は、西田選手(左奥)の二塁打でホームへ!

 先発の守屋は先頭から2三振を奪って三者凡退の立ち上がり。そのまま3回までパーフェクトに抑えています。4回2死から左前打された3番・藤井が初の走者で、それを原口が盗塁阻止!3人で片づけ、5回も三者凡退でした。ここまで打者15人に60球、3ボールになったのは盗塁阻止のところだけという完璧な内容です。

 打線は2回、右前打した先頭の伊藤隼が原口の三振で二盗。板山は二ゴロで2死三塁となり、続く西田の打球がレフトの前に落ち1点先制!西田は二塁へ、タイムリー二塁打です。3回は先頭の江越が右翼線二塁打を放つも後続を断たれ、5回まで4安打1得点でした。

 1対0で迎えた6回も続投した守屋が、なんと先頭の7番・谷にホームラン。2球で追い込み、カウント1-2からの4球目をレフトへ運ばれました。そのあとは3人で打ち取り、7回は歳内が登板して、1安打1四球だったものの無失点。

8回は山本投手。1安打と2四死球で1点を失いました。
8回は山本投手。1安打と2四死球で1点を失いました。
9回の竹安投手。味方エラーも絡んで勝ち越し点を与えます。
9回の竹安投手。味方エラーも絡んで勝ち越し点を与えます。

 打線はその裏、先頭の板山が代わった浅尾から初球を打って右翼線二塁打、次の西田は1-0の2球目を弾き返し、一塁線を破るタイムリー二塁打!これで勝ち越しますが、併殺などで1点のみです。

 すると8回、山本が2死を取りながら9番に四球、1番に死球で一、二塁として続く三ツ俣に中前タイムリーを浴び再び同点。さらに9回、竹安が苦しみます。先頭の4番・平田の右前打、石垣は四球、溝脇のバントで岡崎が三塁へ送球してアウト!1死一、二塁となったものの、谷の二ゴロを熊谷がエラーして満塁。次の武山の右犠飛で勝ち越しを許しました。

 9回裏は藤嶋の前に2三振など三者凡退で試合終了。8安打しながら10三振を喫した打線です。

この期間の入れ替えで刺激に

 では試合後の談話をご紹介しましょう。まず矢野監督です。好投の守屋功輝投手について「今までで一番よかったんじゃない?内容もよかった。左バッターをしっかり抑えられたのが収穫。左バッターの“内ふところ”で見逃し三振を取ったり。ホームランは追い込んでからだったから反省はしていると思う。平田のところで足を早く上げたり」と高く評価しました。

今季初めての教育リーグでショートを守った植田選手。
今季初めての教育リーグでショートを守った植田選手。

 そして「いろいろ自分の中で試すというか工夫をして、それでアカンかったら変えればいい。トライするのが大事。今までうまくいっていなかったら変えてみるのもいい。キャンプで一生懸命やっていたので、結果が出て前を向いてやっていけると思う」と付け加えます。

 原口選手、植田選手のことは試合前に「こっちのメンバーが頑張ることで、この2人にもプレッシャーがかかるだろうし、この2人がこっちで結果を出して刺激を与えるように。これから入れ替えはある」と話していた矢野監督。

荒木選手はこの試合でも2安打と1盗塁の安定感。
荒木選手はこの試合でも2安打と1盗塁の安定感。
6回終了時、投手交代を告げたあと荒木選手に「ナイスラン!」と声をかける矢野監督。
6回終了時、投手交代を告げたあと荒木選手に「ナイスラン!」と声をかける矢野監督。

 試合後、3三振の植田選手に「海もそんなに上で打席に立てていないところはあるとしても、やっぱり…。当てにいくバッティングはしてほしくないけど、三振ってのは上でも評価されないからねえ。何とかランナーに出るところがもっと、もっと欲しい」と足も生かせるだけに、という言葉でした。

 原口選手には「結果は出ていないけど、ベンチでよく声を出している。交代してからも。試合に出て打って守って以外も、そういうことができるのは原口。盗塁も1つアウトにできたし、あとは打ちたいってのがアイツの中にある。そこを上げていけば、いい競争ができると思う」

 最後は2打点の西田直斗選手について「(7回は)ノーアウト二塁で、しっかり引っ張れた。最初のヒットはラッキーやけど、あの打席は内容があった」と評価しています。そして「荒木は安定していて、いいね。早いカウントで盗塁をトライしにいって。呼んでもらえたら、いいものを見せると思うよ」と2安打1盗塁の荒木郁也選手を褒めました。

原口選手と西田選手のコメント

 続いて選手の話です。原口選手は捕手再挑戦となった今季、宜野座キャンプの実戦では2月12日の紅白戦と21日の練習試合(韓国・起亜)にスタメンマスクをかぶっています。それ以外に途中からキャッチャーで出たのが3試合ありましたが、オープン戦ではまだ代打とDHのみ。

2月21日以来の先発マスクで守屋投手をリードした原口選手。
2月21日以来の先発マスクで守屋投手をリードした原口選手。

 きのうは5番キャッチャーで先発出場して、守屋投手とともに6回で交代しています。打撃は三振、遊ゴロ併殺、遊ゴロだったものの、リードや盗塁阻止など仕事はしっかりできましたね。「結構、間が空いていたんですけど、久しぶりにしてはキャッチャーとしての感覚が悪くなかった。盗塁も刺せたので、1つ前進したと思います」

 行ったり来たりになる春ですが「どこの試合でも、数多くマスクをかぶっていかないと取り戻せない。試合に出られるよう、しっかり準備したいと思います」と自ら話をまとめ、バッティングをしに室内練習場へ入っていきました。

 タイムリー二塁打2本で、チームの全打点を挙げた西田選手。「1打席目もそんなにいいヒットじゃなかったし、7回も一塁線を抜けたヒットがタイムリーになっただけで。でも、ここは右打ちのサインでファウルせず一発で右に打てたのがよかったです。練習のケースバッティングでもミスが多かったので、試合でサインが出たら一発で決めようと思っていたから、よかった」

適時二塁打2本の西田選手。これは7回、二塁でグータッチ。
適時二塁打2本の西田選手。これは7回、二塁でグータッチ。

 4日の教育リーグ・ソフトバンク戦(タマスタ筑後)でも1回に先制タイムリーを放ったのですが、そのあと3三振でした。「三振していたけど、悪いとは思わず次へ向かうようにと。見逃し三振だけは自分でもイヤなんです。何も起こらないので。それに振っていっていいと言われているし」

 それから、こんな話もしています。「ただ3球三振はイヤなので1球でもファウルして、自分がアウトでも次のバッターが打ってくれたらいいから、できるだけ多く投げさせるとか。試合に出してもらっているので貢献したい。同じ三振をするなら、次のバッターに甘い球がいきやすいように」。for the teamですね。

守屋投手の指標になった矢野監督の声

 最後は守屋投手です。まず、先日聞いた話からご紹介しましょう。「なんだかんだ順調でしたね。最初はどうなるかと思ったけど」と振り返った安芸での春季キャンプ。「これまで上半身と下半身のタイミング、リズムが合っていなくて、リリースにうまく伝わらなかった。だから意識をまるまる変えました。フォームのこともあるし」。やがて第3クールの2月11日、初実戦である練習試合(四国銀行)を迎えます。

先発の守屋投手。5回まで3人ずつで片づけています。
先発の守屋投手。5回まで3人ずつで片づけています。

 「初めて試合で投げた時に、ああこれや!みたいないい感覚を見つけられたので、それをずっと継続してきました。ピッチングも、矢野さんから『いいぞ』『継続やぞ』と、いつも言ってもらっているので。ダメな時は『ちょっと違うな』という言葉もあるし、毎回『頑張るぞ』で話が終わるので、わかりやすいですね」。矢野監督との会話がバロメーターとなったのでしょう。

 「最初はひどくて全然アピールできず、もどかしさがあったけど矢野さんが話しかけてくれたんです。『ちゃんと見てるからな』って。それで気持ちがちょっと楽になったし、焦らずにやろうと思いました。また『きょうはどんな意識で投げた?』とか、まず聞いてくれる。それはありがたいことですね。継続やぞ、頑張れと、いつも見てもらっていることに結果で応えたい

安芸キャンプのブルペンにて。投げる守屋投手を見守る矢野監督(右)。
安芸キャンプのブルペンにて。投げる守屋投手を見守る矢野監督(右)。

 キャンプ最後の練習試合となった2月25日のJR四国戦。初回に二塁打と犠打、二塁打で1点を失ったものの、以降は3回までビシッと抑えました。「2回、3回とよかったので、1回もできただろうという後悔があります。先頭の二塁打は打たせにいった結果、ゴロが(一塁線を)抜けたもの。でも次の二塁打はやっちゃいけない投げミス。一番飛ぶところ、“手伸びゾーン”へ投げてしまったので…。ボールを投げようとしていたら、きっちり投げないと。あの投げミスだけはないようにしていきたいです」

 高橋建投手コーチは、この試合を振り返り「球質は非常によかった。久しぶりの先発だったせいか、ちょっと試合に入るところで“立ち遅れた”のかも。そこは反省です。でも、それ以降は素晴らしい球を投げていた。自信にしてほしい。過信ではなく、ね(笑)。このキャンプは充実していたと思いますよ」と話していました。

反省をクリアできたマウンド

 それ以来、同じく先発で迎えた6日のマウンドでは、前回の反省をしっかり生かせていました。矢野監督が今までで一番よかったと。「はい、僕もそうですね!」。何を意識していた?「上半身の力を抜いてリラックスして投げること。逆球を減らすことです。それと試合前に福原コーチから『一球一球、意思を持って投げるように』と言われたことも」。全部できた?「できたかなと思います」

4回に初安打を許し、初めてランナーを出したところ。
4回に初安打を許し、初めてランナーを出したところ。

 それにしてもホームランだけが…。「もったいなかった。打たれたのはスライダーです。もったいないですねえ。ボール要求でワンバウンドを狙って、あそこにいったので。もったいなかったです」と何度も悔やみます。

 6イニングを投げたのはいつ以来?「台湾ぶりですね」。新しい言葉(笑)。なるほど、昨年11月~12月に参加した台湾でのウインターリーグで投げました。じゃあ他の選手に比べると結構近いわけです。その前は?「去年の3月、4月くらいですかねえ」。調べてみると、昨年3月18日の開幕カード2戦目に先発して6イニング、4月には交流試合で5イニングというのがありました。それ以降は中継ぎです。

 きのうは5回を投げ切ったところで「6回も」ということになったようですが、まだ余力はあったのでは?「まだいけたと思います。球数も少なかったし」。4番の平田選手に対して足を早く上げて投げたのは?「(平田選手のフォームが)足を上げていたので、タイミングを崩せるかなと思って。それが効いて三振を取れたのでよかったです」。すべてに余裕があった?「はい、きょうは。ずっと、きょうくらいできたらいいですね」

「原口さんは、でっかくて投げやすかった」

 原口選手が4回、初ヒットを許した直後にすぐマウンドへ行きました。何と言われた?「初めてセット(ポジション)になるけど、気を抜くなよって」。久しぶりに組んでどう?「投げやすかったですね」。それはどのあたりが?「でっかいので」。ここでみんな笑っちゃいました。でも守屋投手は真顔で「体がでっかい。幅もあるので投げやすい」と言います。かなり痩せたんですけどね。

 「それに配球で意思の疎通ができたのもあります。ベンチに戻った時も、次のイニングにつながる会話ができました。すごく投げやすかったです」

三者凡退に抑えてベンチへ戻る守屋投手。
三者凡退に抑えてベンチへ戻る守屋投手。

 キャンプ中に守屋投手は「野手の人に、僕が崩れるのは守っていてわかると言われたことがあって…。それを見せないよう、いいリズムで攻撃につなげたいと思います」と話していたのですが、きのうのピッチングはまさにそれをクリアできたものでしたね。きっとオープン戦の登板機会があるでしょう。そのチャンスを逃さず、そのまま1軍で投げ続けることを祈っています。

 「はい。今シーズンも鳴尾浜でやっていたら、ことしで終わりなので」

 そう言って顔を上げた守屋投手から、自分自身への期待が垣間見えました。

    <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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