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藤谷投手&浜地投手のルーキーリレー、西田選手は93番をお披露目《6/20 阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
20日の練習試合(鳴尾浜)にて。左から藤谷投手、浜地投手、西田選手。

20日と21日に鳴尾浜で予定されていた阪神ファームとソフトバンク3軍との練習試合ですが、21日は雨のため中止となっています。20日は雲が多く風も強くて涼しいくらいの天候で、無事に試合は行われました。先発はルーキー・藤谷洸介投手で5回まで、そして21日に先発予定だった浜地真澄投手が残りの4回と、“シェア登板”。仲良くホームラン1本ずつでの失点です。

また19日に育成から支配下選手戻った西田直斗選手が、この日初めて新しい『93番』のユニホームを披露しました。20日ぶりのフル出場でマルチヒット。練習試合とはいえ、いいスタートを切っていますね。

ソフトバンク3軍との練習試合は2012年7月4日に皇子山球場であり、その次が2015年6月24日と25日に鳴尾浜で行われました。今回はそれ以来2年ぶりですが、ソフトバンク打線は顔ぶれがほとんど入れ替わり、同じなのは幸山選手ひとりだけですね。退団した選手が多いものの、2軍でレギュラーとしてウエスタン公式戦に出ている選手や、栗原陵矢捕手のように現在は1軍という選手もいます。

たかが2年、されど2年。阪神打線は原口選手、中谷選手、北條選手らの名前が並び、秋山投手も先発していました。田上選手や黒瀬選手、一二三選手、投手では藤原投手、トラヴィス投手の名前もありますからね。そうそう!一二三選手と島袋投手、5年ぶりの対決は、惜しくもかなわなかったんですよね。その時の記事を貼っておきましょう。一二三vs島袋 “あの夏”以来 5年ぶりの対決は持ち越し>

もと虎戦士・高波コーチとの再会

前置きが長くて済みません。きのうの試合後に会った、とても懐かしい人の話も少し。今季から現場に復帰したソフトバンク3軍の高波文一外野守備走塁コーチです。阪神には1994年から2003年まで在籍し、野村克也監督が命名した“F1セブン”の1人。足の速さはもちろん、守備率の高さも印象に残る選手ですね。その後、西武や楽天、オリックスで計16年間を現役で過ごし、2011年からソフトバンク2、3軍の外野守備走塁コーチに就任、2011年は2軍のコーチを務めました。

2014年からはホークス・ジュニアチームのマネージャーで、ことしまた3軍のコーチとなり、再会できたわけです。鳴尾浜は4年ぶりとか。私も4年ぶりです。きょうは雨天中止のため、ソフトバンクも甲子園室内練習場で練習をしました。阪神の1軍が午後に練習するのでコーチ陣に会えるかも?と言ったら「しっかり挨拶しておきます!」と張り切っていたんですが、残念ながら入れ違いだったとか…。

ソフトバンクの高波文一3軍外野守備走塁コーチ。23年前から変わらない笑顔です!
ソフトバンクの高波文一3軍外野守備走塁コーチ。23年前から変わらない笑顔です!

考えてみたら高波コーチは、1軍のほとんどのコーチと現役時代が重なっているんですよね。GAORAでの2軍戦中継が始まった翌年に入団してきて、私が本来はフリーアナウンサーだということを知ってくれている、今や数少ない現場の人になりました。でも本当に真っ黒に日焼けしたところも、人懐っこい笑顔も熊本工業高校から入団してきた時のままです。これからも若い選手を優しく、厳しく育てていってください。

なおソフトバンク3軍は、月末から恒例の韓国遠征だそうです。またタマスタへお邪魔した時によろしくお願いします!

こちらは四球で、相手は本塁打で得点

お待たせしました。練習試合の結果です。ともに6安打、3三振ずつの両チーム打線ですが、ソフトバンクの4投手は計12四球(阪神は5四球)。よって阪神打線のタイムリーは陽川選手の1本だけで、あとは押し出しの2点と相手エラーの2点という得点内容でした。

《練習試合》6月20日

阪神- ソフトバンク3軍 (鳴尾浜)

ソフ 020 000 001 = 3

阪神 003 000 02X = 5

◆バッテリー

【阪神】藤谷-浜地 / 坂本-長坂(7回~)

【ソフ】長谷川宙(5回)-渡辺(1回)-斎藤(1回)‐小澤(1回) / 谷川原

◆本塁打 茶谷(藤谷)、黒瀬(浜地)

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策)

1]二:板山  (2-0-0 / 0-3 / 0 / 0)

2]中:緒方  (4-2-0 / 0-1 / 0 / 0)

3]左右:大山 (4-0-0 / 1-1 / 0 / 0)

4]三:陽川  (5-1-1 / 1-0 / 0 / 0)

5]一:西田  (4-2-0 / 0-1 / 0 / 0)

6]右左:江越 (2-0-1 / 0-2 / 0 / 0)

7]指:小豆畑 (2-0-1 / 0-2 / 0 / 0)

8]捕:坂本  (2-0-0 / 1-1 / 0 / 0)

〃捕:長坂  (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0)

9]遊:植田  (3-1-0 / 0-1 / 1 / 0)

◆投手(打-振-球/失点-自責) 最速キロ

藤谷 5回 71球 (2-3-3 / 2-2) 144

浜地 4回 50球 (4-0-2 / 1-1) 146

<試合経過>

“プロ初先発”の藤谷投手。5回2安打2失点でした。
“プロ初先発”の藤谷投手。5回2安打2失点でした。

1回は2死からストレートの四球を与えたものの無失点で終えた藤谷。しかし2回、先頭への四球などで1死二塁として7番・茶谷に、ライナーで左翼ネットへ当たる2ランを許しました。3回は四球で出した走者を坂本が盗塁阻止するなど3人で片づけ、4回は先頭の4番・黒瀬に左前打(ショート植田のグラブ下を通過)されながら後続をゴロ3つで退けて無失点。最後の5回は三者凡退で締め、予定の5イニングで2安打2失点です。

唯一のマルチヒット・西田選手。これは8回の左飛の写真で…すみません。
唯一のマルチヒット・西田選手。これは8回の左飛の写真で…すみません。

打線はソフトバンク先発のルーキー・長谷川宙の四球で逆転します。1、2回は1四球ずつで無得点でしたが、3回は先頭の植田がサード内野安打、1死後に緒方の右前打で一、三塁。緒方は二盗失敗で2死となったあと大山が四球を選び一、三塁として陽川が左前タイムリー!これをレフトがエラー、走者はそれぞれ進んで2死二、三塁となり、ここから3連続四球(西田で満塁、江越と小豆畑は連続押し出し)を選んで3対2としました。

浜地投手は4イニングを投げて4安打1失点です。
浜地投手は4イニングを投げて4安打1失点です。

4回も2四球を選び、5回は先頭の西田が右前打と走者を出しながら得点なし。6回は2人目の渡辺に対して四球、暴投、緒方のファースト強襲内野安打などで2死二、三塁としますが、大山は三直で0点。7回は斎藤から西田が中前打、江越が四球を選ぶも、やはり追加点はありません。8回は小澤から板山と緒方が四球を選んで2死一、二塁とし、陽川はフライアウト。と思ったら…取れずに記録はエラー(最後はライトが処理しましたがセカンドの落球?)で、なんと2人が生還。5対2となります。

一方、藤谷のあとを受けて登板した浜地は6回、1安打されますが坂本の盗塁阻止もあって3人で終了。7回からは長坂とのバッテリーに変わって、四球と内野安打で1死一、二塁のピンチを三ゴロ併殺打で切り抜け、8回は2死からの1安打のみ。ところが9回、先頭の黒瀬にレフトへ大きな一発を打たれてしまいました。1死後に四球を与えたものの最後は茶谷を三ゴロ併殺打に仕留めて試合終了です。

掛布監督と久保コーチの談話

新しい背番号の西田選手に、カメラを構えるファンの方も多数。
新しい背番号の西田選手に、カメラを構えるファンの方も多数。

掛布監督は藤谷投手について「全体的にもっとリズムよく、ギアを入れるところ入れないところを作らないと。同じリズムで投げている。投球の間合いとかをもっと工夫しないとね。まずはもっともっとストレートを磨いてほしい」と注文。西田選手のことで試合前に「原口のようなインパクトが足りない」と言っていた掛布監督。この日は2安打を放ったものの「1本、2本というのではなく、もっと全体的に確率を上げていかないとね。きょう打ったからどうこうじゃないよ」という話でした。

大山選手には「今はまだ結果が出ない中でやってきて、今回1軍に呼ばれた。レギュラーに定着すれば一番いいけど、1軍でしか味わえないものを感じてくるだけでも大きい。(体力面で)筋肉量はついてきている、数値としても上がっていると聞いています」とのこと。大山選手は、きょうは1軍の練習に合流し、あすから広島遠征となります。

久保投手コーチはルーキー2投手に「ゲームでしかできないことがあるので、そのゲームをこなせているのはいいですね。体が壊れていないのが一番。アントニオ猪木ですよ。『元気があれば何でもできる』ってね」と笑ったあと「すべてが課題。スピード、コントロール、変化球、スタミナ、すべて。初めて行く道だから、途中で評価するのは難しい。この道は次がファームの公式戦、そして1軍へ続くんですよね。最終的には」と話しています。

本来は20日が藤谷投手、21日は浜地投手が先発予定だったのを合わせたわけで、才木投手に続いて2人ももう独り立ちと言えるでしょう。『トリオ・ザ・ルーキー』は解散ですね。

「課題は直球の強さと投げる体力」

試合後の囲み取材を受ける藤谷投手。
試合後の囲み取材を受ける藤谷投手。

藤谷投手は練習を終えて戻ったところでの取材で「投げる体力、真っすぐを投げる体力がなくて…。最終的に変化球に頼ってしまいました。疲れるのが早い」と反省の弁。そういえば以前、3イニングを投げた時にも「めちゃくちゃ疲れた」とグッタリしていましたっけ。でも私、パナソニックの藤谷投手が昨年11月の社会人日本選手権(京セラ)で、完封勝利を挙げるところを見たんですけど。あれはすべて変化球だったんでしょうか。

なお4回裏のキャッチボールの時、坂本さんに変化球を多めにと頼んだとか。坂本選手は「そんなことないですよ」と否定したものの、5回は明らかに変化球が増えていますね。

初先発を終えて「課題は見つかりました。真っすぐの強さと、投げる体力です」と藤谷投手。スリーボールになったところは、やはり真っすぐが多く「変化球の方がコントロールしやすい」そうです。ほとんどのピッチャーはその逆なんでしょうね。それゆえ、周囲には「変化球がいいのはわかったから真っすぐを磨けと」いつも言われていると苦笑い。

試合後に畑山スカウト(は藤谷投手で見えませんね…)、坂本選手(左)と話を。
試合後に畑山スカウト(は藤谷投手で見えませんね…)、坂本選手(左)と話を。

試合後、畑山スカウトと話していた内容は「秘密」だそうですが、坂本選手からは「テンポについての話」があったとか。坂本選手に聞いてみると「もうちょっとテンポよくとは言いましたが、ストライクを取れる変化球が器用に投げられますからね。カウント負けするときつくなるので、もっと大胆にカウント有利でいければ、と話しました。ストライクを取るのに困るタイプじゃないから大胆に攻めていけと」

ちなみに2つの盗塁を阻止してルーキーピッチャー2人を助けた坂本選手。「走ってくるかなと準備はできていたので」と、至ってクールな返事でした。

練習にも試合にも慣れてきたことが大きい

この日は冷静に周りが見えたそうです。
この日は冷静に周りが見えたそうです。

ついで浜地投手のコメントです。「よかった点は、落ち着いていけたことですね。今までの登板では、あたふたして何も考えられずに、ただ単に投げていた感じでしたが、きょうはしっかりバッターを観察して周りを見ながら投げられた。それがよかったと思います」。この時には言わなかったんですけど、前回までも十分落ち着いて見えましたよねえ。あたふたしていたとは…。

では、悪かったところは?「ボール自体がそんなによくなかったんで…。悪いというか、ボールがよくなかったという点ですね。フォアボールとかはダメですけど、めちゃくちゃ悪いということはなかったと思います」

本来は21日の先発予定が、雨予報で前倒しになったわけですが「一日ずれたんですけど、ずっと練習でフォームのことなどしっかりやってきて準備はできるようになっています」と言っていて、影響なく投げられたようです。なお練習では「精度をもっと上げること。投げ急ぐというか、体が突っ込むところ」に取り組んできたという浜地投手でした。

失点は9回のホームランによる1点のみ。
失点は9回のホームランによる1点のみ。

この日の試合を含めて、ここまでを振り返り「やっと試合に慣れてきて、いい意味で周りを見られるようになりました。練習も思った通りにできるようになった自信、というのが一番大きいと思います。もう何回もやっているので、いいかげん慣れないと」と最後は自分に向けて?なかなか厳しい言葉ですね。「カーブも、どんどんよくなってはいるんですけど、まだ課題も出てきたし修正していかないと。カウントの悪いところでカーブでストライクを取れるようにしていきたい」

最後に、9回に浴びたホームランについてひとこと。「真っすぐですね。飛びましたねえ」

西田選手がオープン戦で学んだこと

締めは西田選手。5回に右前打、7回に中前打を放ちました。練習試合ではありますが、5月31日のソフトバンク戦(タマスタ)以来のフル出場で、5月28日の広島戦(周南)以来のマルチヒットです。「2本出たことはよかったです。きょうから背番号が変わって、いろんな人に声をかけてもらったので、しょうもないゲームはしたくなかったし、絶対に結果を出してやろうと思っていました」

試合後のロングティーが終わり、ボールを集める西田選手。
試合後のロングティーが終わり、ボールを集める西田選手。

昨季、今季と途中出場も多くなっていますが「代打を経験させてもらって、自分で考えて打席に立てていると思う。きょうも(5回の右前打は)最初にファウルして、自分なりに配球を読んだり。ピッチャーと“対戦できている”という感覚があります。技術的なことより頭の部分で、そういうとこ、ちゃんとやっていきたい」と言います。「4打席もないと思って、1打席1打席を代打のつもりで1球1球考えながらやっています。ここは外野フライOKとか、ピッチャーはどう勝負してくるかとか。今までも多少は考えていたけど、そこまでは」

これは3月、1軍のオープン戦に8試合出場した経験が大きかったようで「ことしオープン戦に出してもらって、ヒットが出るのは2打席目だったから、あそこで1打席目から打っていければと思って。アホみたいに真っすぐばっかり待っているんじゃなく、変化球を狙っていくことも学びました。いろんな先輩にも聞いて、そういうのをプラスにして、いつ呼ばれてもいいように準備しておかないと、オープン戦に出してもらった意味がないので」と気を引き締めていました。

片づけに倉庫へ行く2人を決めるじゃんけん。西田選手が一抜けでした。
片づけに倉庫へ行く2人を決めるじゃんけん。西田選手が一抜けでした。

「アウトでも内容がいい、当たりのいいアウトにしていくため自分のスイングをしっかりしていきたい。内容も見られていると思うので。それで結果が出たらいいかなと。とにかく無駄な打席を作らないようにしたいです」。努力して手を伸ばせば掴めるチャンスがあると、今の西田選手にはわかるのでしょう。そして、お世話になった方への恩返しは鳴尾浜じゃできないってことも。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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