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掛布監督いわく「守って負けない野球」が、チームや選手を強くする。《4/25 阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
6回で66球、散発3安打で二塁も踏ませぬ好投を披露した榎田大樹投手。

きのう25日、鳴尾浜で行われたウエスタン・阪神‐オリックス戦は投手戦の末、0対0の引き分け。阪神ファームにとって今季初の延長戦でした。引き分け試合も3月30日の同じオリックス戦(9回で0対0)以来で、今季2度目です。

なかなか得点の入らない展開ながら阪神・榎田、オリックス・山田の両先発投手が、ともに6回まで3安打無失点、しかも無四球と好投。また両チームとも締まった守備を見せ、最後まで無失策だったこともあってダラダラした感じを覚えない試合でした。阪神は守備で3つも併殺がありますしね。

今週は1軍が甲子園にずっといるので、この日は江越選手と糸原選手が参戦。糸原選手は6回の打席まで、江越選手は7回の打席まで出場しています。糸原選手のためってわけではありませんけど序盤にショートゴロが多く、6‐4‐3の併殺もこなして、いい練習になったでしょう。

なお、27日のオリックス戦はルーキートリオが公式戦初登板の予定です。25日の試合後に意気込みを聞いたところ、藤谷投手は「自分の持ち味の変化球を生かしていきたい」、才木投手は「先頭は絶対に出さない。前回(練習試合)に続いて、空振りを取る真っすぐを投げて、質にこだわっていきたい」、浜地投手は「公式戦なので、チームに迷惑をかけないようにしたい。負けられない試合だからゼロで抑えることを考えてやりたい」と語りました。

ただし26日が雨天中止になったので、登板の予定が変更されるかもしれません。投げなかったらごめんなさい。

では25日の試合結果です。その前に、ちょっと可愛いツーショットをどうぞ。

二遊間の先発・糸原選手(左)と植田選手(右)が相談中。何か匂うのかな?
二遊間の先発・糸原選手(左)と植田選手(右)が相談中。何か匂うのかな?

《ウエスタン公式戦》4月25日

阪神-オリックス 7回戦 (鳴尾浜)

オリ 000 000 000 0 = 0

阪神 000 000 000 0 = 0

※延長10回 規定により引き分け

◆バッテリー

【阪神】榎田‐安藤‐伊藤和‐山本‐メンデス‐柳瀬‐高宮‐石崎 / 長坂

【オリ】山田(6回)-赤間(1回)‐近藤(1回)‐塚原(2回) / 伏見

◆二塁打 陽川、鈴木昂

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗/失) 打率

1]二遊:植田 (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .256

2]遊:糸原  (3-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .143

〃右:板山  (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .195

3]左:江越  (3-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .000

〃左:伊藤隼 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .350

4]一:陽川  (3-2-0 / 1-1 / 0 / 0) .243

5]三:大山  (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .224

6]中:俊介  (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .229

7]右二:森越 (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .255

8]捕:長坂  (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .143

9]投:榎田  (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .000

〃打:小宮山 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .063

〃投:安藤  (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―

〃投:伊藤和 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―

〃投:山本  (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―

〃投:メンデ (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―

〃打:今成  (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .313

〃投:柳瀬  (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―

〃投:高宮  (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―

〃投:石崎  (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―

◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ

榎田  6回 66球 (3-3-0 / 0-0 / 2.74) 140

安藤  1回 13球 (0-0-1 / 0-0 / 0.00) 137

伊藤 0.1回 11球 (1-0-1 / 0-0 / 0.00) 143

山本 0.2回 4球 (0-0-0 / 0-0 / 0.73) 137

メンデ 1回 14球 (1-0-0 / 0-0 / 0.00) 152

柳瀬 0.1回 9球 (0-0-1 / 0-0 / 0.96) 146

高宮 0.1回 9球 (1-0-1 / 0-0 / 3.00) 138

石崎 0.1回 4球 (0-0-0 / 0-0 / 3.12) 145

試合経過

先発の榎田投手は6回無失点。
先発の榎田投手は6回無失点。

榎田は1回、2回と三者凡退の立ち上がり。3回は2死から9番・吉田雄に中前打を許しただけ。4回は1死後に武田が右翼線への当たり、しかし捕った森越が二塁へ進めず、4番・伏見は遊ゴロ併殺打。5回は三者凡退で、6回に2死から1番・宗のセカンド内野安打があったものの問題なし。その裏に先頭打者だったため代打が送られた榎田は6回で66球、散発3安打で無失点。二塁すら踏ませぬピッチングでした。

糸原選手は1回に右前打!(写真は3回の一ゴロです…)
糸原選手は1回に右前打!(写真は3回の一ゴロです…)
陽川選手は2回の左前打に続いて、4回は二塁打。
陽川選手は2回の左前打に続いて、4回は二塁打。

ただし打線も、オリックス・山田の前に散発3安打。1回に1死から糸原が右前打しますが、江越は投ゴロ併殺打。2回は先頭の陽川が右前打と暴投で無死二塁とするも、後続が抑え込まれて還れません。3回は三者凡退、4回は2死から陽川に左越え二塁打が出ましたが得点ならず。5回と6回はまた三者凡退という内容です。

ここから阪神は継投に入り、まず7回は安藤が1四球を与えながらも三ゴロ併殺打に仕留めるなど3人で片づけ無失点。しかし8回に登板した伊藤和は四球と犠打、縞田の左前打で1死一三塁として降板。代わった山本が吉田雄を遊ゴロ、ここもまた併殺打に切って取りピンチをしのぎました。9回はメンデスが2番・鈴木昂の二塁打を浴びたものの後続を断っています。

8回1死一、三塁で登板した山本投手は併殺に!
8回1死一、三塁で登板した山本投手は併殺に!
10回1死満塁、石崎投手が抑えて完封リレー!
10回1死満塁、石崎投手が抑えて完封リレー!

同じく継投のオリックスだったのですが、こちらの打線はまったく音なし。7回1死から赤間に死球を受けた陽川も盗塁失敗など3人で終了。8回は近藤に2三振を奪われて三者凡退。9回は塚原にやはり三者凡退で、5回以降ノーヒット。0対0のまま延長戦に入りました。

10回は柳瀬が登板。先頭の5番・ジョージに四球を与え、犠打で1死二塁として交代。次の高宮は岩崎に自身を襲う内野安打、縞田はストレートの四球で1死満塁として降板します。代打・園部に対して阪神は石崎を投入。代打の代打・岡崎を2球で三ゴロに仕留め、まずホームでジョージを封殺!一塁へ転送するも、これはセーフで併殺はならず。なおも2死満塁で宗を、やはり2球で遊飛に打ち取った石崎!

でも、その裏は塚原に2三振を喫して三者凡退…。0対0のまま試合終了です。

掛布監督「守る力に見応えがあった」

掛布監督は試合後、こんな話をしました。「先に点を取っていればと思うけど、打って勝つよりも、こういう“守って負けない野球”の方が選手に力がつく。しんどいからね。そういう野球の方がある意味、チームや選手に力をつけるかもしれない。こういう戦いをできるのが、強いチームだと思うよ。打つ、打たないは水物だから」

好投した先発の榎田投手、よく守った野手陣に「榎田は非常にいいテンポで投げてくれた。球数も少なかったでしょう?きょう1試合だけだけど、こういう試合を続けていけばチームに力がついたということだと思う。そのリズムを作ったのは榎田。オリックスはトップを走っているチームだし、緊張感のある後半の守る力は見応えがあった」と評価しています。

久保投手コーチは榎田投手に関して「リズムよく、スムーズに投げていましたね。先発と中継ぎに関係なく、1イニング1イニングを積み重ねていくこと。中継ぎでも先発でも1イニング抑えられないってのは論外でしょう?その1イニングを何回繰り返せるか。榎田は今、何かを自分で掘り起こすとか、野球人としての考えをもっとシンプルにするとか、そういうところに目覚めてきた感じがしますね」というコメントでした。

中継ぎのスタイルで1イニングずつ

榎田投手は、前回もオリックス戦(16日、佐藤楽品スタジアム)で先発して5回4安打無失点。そして今回、25日は6イニングを投げて3安打3三振、無四球で2試合連続無失点ですが「いや、そんなには…」と意外な反応。「この前のオリックス戦もこんな感じで、真っすぐ中心で続けられているとは思いますが、調子自体は変わらないですね。配球や組み立て方が違うくらい。スピードはキャンプ中の方がよかったかな、真っすぐの質的にも」

榎田投手の打席も撮ってみました。いいスイングです!
榎田投手の打席も撮ってみました。いいスイングです!

そのあと「しいて言うなら」と続けてくれたのは「真っすぐのフォームでちょっとだけ間を作ろうかなと。カーブとか緩いボールを使おうとしすぎて本来の形が消えていたから、この2試合は真っすぐを中心にしました。多分カーブやスラ―ブを減らした分、スライダーやシュートがアジャストできているのかなというのはありますね」ということ。

「ファームが開幕してから、中継ぎの延長ではなく“先発で”と考えすぎて、欲を出してしまった。それを取っ払って中継ぎでのスタイルを出し、1イニング1イニングと思うようにしたんです。それが今、はまっているのかもしれません」と榎田投手。なお今後も先発として…と言いかけたら「僕の場合は先発ではなくて、谷間なので」と笑って「今の状態を維持していければ」と締めくくっています。

また、16日のオリックス戦も今回も、フルでマスクをかぶっている長坂選手は「この前も相手バッターが差し込まれていたので、変化球を生かす真っすぐで、押せるところは押していこうと試合前に話していた」そうです。こういう1軍経験豊富なピッチャーの球を受けて「ものすごく勉強になりますねえ!」と目を輝かせるルーキーキャッチャーでした。

腕を下げ、安定してきた制球力

続いて、10回1死満塁で登板した石崎投手です。どのあたりから備えていたか聞くと「ずっと準備していましたけど、高宮さんのとこでピンチヒッターが出たら行くと言われて本格的に」とのこと。まさか1死満塁とは思わなかったでしょう?「どんな場面でも抑えるだけなので」。頼もしい言葉ですねえ。「ちゃんと2つアウトを取ってゼロに抑えられたのが一番大事で、一番収穫です」

最後を締めた石崎投手。
最後を締めた石崎投手。

登板してすぐの岡崎選手を三ゴロに打ち取って1アウト(5‐2‐3と渡るも一塁はセーフ)、あそこは併殺で終われたらよかったですね。「いえいえ、次を抑えたらいいんでしょって感じでしたよ。『そこ(ゲッツー)取って~!』といつもは思うけど、きょうは全然。前のバッターが初球をファウルして、次をストライクゾーンに放ったら振ってきたので、2人目もはじめは外していこうと」。その通り、初球はボールで次を打たせて遊邪飛で終了。

腕を少し下げてから安定してきた石崎投手。1年目の春季キャンプ頃までのフォームです。「腕を下げてから、最初の練習試合で1失点だったけど、そのあとは抑えてるでしょう?フォアボールも出していないと思います」。確かに4月5日の練習試合(ルートインBCリーグ・滋賀)は2イニングを投げて3安打1死球で1失点ですが、それ以降の6試合(練習試合を1つ含む)は無失点で1死球のみ。四球もありません。「早く1軍で投げたいですねえ!」と春の夕風に吹かれながら、さわやかな顔で微笑みました。

マルチの陽川&守った森越

チーム3安打のうち2安打を放った陽川選手。「2本とも追い込まれてからでしたよね?」という“逆質問”の通り、2回は2球で追い込まれたあと1球ボールで、そこからファウル3つ、計7球目を右前打しています。4回はボール先行ながらフルカウントになっての6球目を打って二塁打です。

「1打席目みたいなヒットがこれまでなかった。形はよくなかったけど、ああいう1本が出ると違う。形がよければ崩されてもヒットゾーンに行く。そのためにも形を意識してタイミングを取り、甘いのが来たら一発で仕留められるように」。キャンベル選手が昇格したことも踏まえ「状態を上げていきたい」と話していました。

そして、再三の好守備で投手を助けた森越選手の話です。内野全部に加えて今季はライトでの出場もあり、この日は6回までライト、7回からセカンドを守っています。そのライトでいい動きを見せ、7回と8回はセカンドで併殺にも加わりました。7回1死一、三塁での三ゴロ併殺打は、少し低く逸れてきた送球を捕って一塁へ。ナイススローです!

チームと投手を救う好守!笑顔でベンチへ戻る森越選手。
チームと投手を救う好守!笑顔でベンチへ戻る森越選手。

「0対0だったから、ミスした方が負けると思って。守備では、ありうるプレーを頭に入れて臨むようにしています。きょうの2つのダブルプレーは、準備できていたのが一番ですかね。でも予期せぬことも起こるので、そういう事態も考えながら」

この日はノーヒットでしたが、それまで4試合連続安打だったバッティングもアピールします。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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