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故郷・山形に錦を飾った横山雄哉、楽天戦でプロ初完封勝利!《8/9 阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
楽しみにしていた地元の試合で、最高の結果を見せた横山投手。次は1軍での完封です。

9日の『荘内銀行・日新製薬スタジアムやまがた』には、横山雄哉投手の大応援団が詰めかけたそうです。ご両親はもちろん、小学校時代からの友人やチームメイトなど大勢の皆さんが、横山投手の名前入りタオルを手にスタンドで声援を送り、それは試合終了後も続きました。実家は球場から数分の距離、まさに地元である山形県東村山郡中山町で初めて誕生したプロ野球選手。その横山投手がルーキーイヤーに“凱旋”登板し、しかもファームとはいえプロ初の完投を完封勝利で飾ったのです。

最初から変化球が決まり、持ち味の真っすぐは球威があり、本当にテンポのいいピッチングでしたね。テレビ画面からも力のこもった投げっぷりが伝わってきました。それにしても9回で104球、許したヒットはわずか2本、1つ死球があったものの四球はなし、8奪三振という見事な内容。最初は投げ終えてベンチに戻ってくる度に、スタンドやベンチの誰かと笑顔を交わしていた横山投手ですが、7回、8回あたりには表情が険しくなっていましたね。やはり“完封”を意識したのでしょうか。

これが阪神ファームにとって、7月12日の岩崎投手(オリックス戦、2対1の勝利)以来、今季2度目の完投。完投による完封勝利は今季チーム初です。試合終了後の久保投手コーチの笑顔が印象的でした。スタンドに向かって横山投手の手を掲げて応えるなんで、なかなか珍しい光景ですよね。

ウエスタン・リーグとイースタン・リーグのファーム交流試合は、今回の楽天-阪神2連戦をもってすべて終了。阪神は計8試合を行って、楽天と3勝1敗、巨人と1勝1敗、日本ハムと2勝0敗という結果になりました。

横山プロ初完封、ペレス2戦連発で連勝!

では、9日の楽天-阪神戦の結果をご紹介します。横山投手の完封勝利を援護したのは、ペレスの2試合連続ホームランと、西田選手の2試合連続タイムリーです。なお両チームに西田選手がいるややこしさに加え、この日はともに先発が“横山投手”とあって、実況のアナウンサーも解説者も「阪神の横山」「楽天の横山」と大変そう。

楽天の横山貴明投手は阪神の横山雄哉投手より3つ年上なんですけど、ピンチを迎えて肩で息をする時の横顔が初々しく感じられました。そこへ登場する杉山賢人投手コーチも、現役時代と変わらず“アンパンマン”のように優しい笑顔が懐かしかった~。変わりませんねえ。

ちなみに、そのピンチで実は陽川選手が2度も助けてあげたんですよ。4回はペレス選手の2ランのあと、動揺する横山貴投手から北條選手が四球を選んだのですが、陽川選手は遊ゴロ併殺打。また6回にペレス選手と北條選手の連打で無死二、三塁となった時も陽川選手が空振り三振というわけで…。ただし陽川選手は三塁線突破という当たりを捕ったり、セーフティーの打球に素早く反応したり、再三の好守備で横山投手をバックアップしました。これは声を大にしてお伝えしておきます!

《ファーム交流試合》8月9日

楽天-阪神 4回戦 (山形)

阪神 000 201 000 = 3

楽天 000 000 000 = 0 

◆バッテリー

【阪神】○横山(4勝4敗) / 小豆畑

【楽天】●横山貴(2勝2敗)(6回)-小山伸(1回)-入野(1回)-長谷部(1回) / 下妻

◆本塁打 ペレス6号2ラン(横山貴)

◆二塁打 フェルナンド、北條

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策) 打率

1]中:伊藤隼 (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .245

〃右:一二三 (1-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .168

2]二:森越  (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .333

3]指:梅野  (4-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .320

4]左:ペレス (4-2-2 / 0-0 / 0 / 0) .299

〃左:田上  (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .250

5]遊:北條  (3-1-0 / 1-1 / 0 / 1) .258

6]三:陽川  (4-0-0 / 3-0 / 0 / 0) .213

7]一:西田  (3-1-1 / 0-1 / 0 / 0) .218

8]捕:小豆畑 (4-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .221

9]右中:横田 (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .218

◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ

横山 9回 104球 (2-8-1 / 0-0 / 2.37) 143

《試合経過1》攻撃編

まず打線。1回は森越が振り逃げ(三振と捕逸)で、2回は西田が右ひじへの死球で出塁しただけ、3回は三者凡退と横山貴に抑えられます。しかし4回、先頭の梅野が右前打、続くペレスがレフトへ6号2ラン!ハイタッチのあとベンチ横のカメラにガッツポーズしていましたねえ。5回は小豆畑が中前打、横田はショート大坂谷のエラーで無死一、二塁としますが、ここも併殺などで得点なし。6回はペレスの右前打と北條の左翼線二塁打などで2死二、三塁として、西田が右前タイムリー!3対0と差を広げました。

7回は小山伸に代わり、先頭の横田が初球を右中間へ!ただし二塁を狙ってライト福田の好返球によりアウトに…。次の伊藤隼も初球を打って、セカンド西田のグラブをはじいてライト前へ。記録はセカンド内野安打です。森越が初球で送って2死二塁としますが、ここは追加点につながらず。8回は、前日の9回にペレスの逆転3ランなど4点を失って負け投手になった入野が登板し、この日かペレスが中飛、北條と陽川はともに変化球で空振り三振の三者凡退。9回も長谷部の前に三者凡退です。

《試合経過2》“横山投手”編

一方、先発の横山。まず1回は三者凡退の立ち上がり。2回は4番の片山から真っすぐで空振り三振(3球勝負)を奪い、フェルナンドには左ひじに死球を与えましたが、次の内田を変化球で空振り三振。大坂谷は三塁線を抜けそうな当たりに陽川が素早く反応して三ゴロ。3回は三者凡退です。4回に1死から銀次をショート北條のエラー(一塁への送球が微妙なバウンドになり西田が捕れず)で出すも、片山は遊ゴロ併殺打。

5回は先頭のフェルナンドに初球を打たれ、詰まった打球がファーストとライトの間にぽとり…。これが初めてのヒット、二塁打となります。しかし内田は三ゴロでランナーは動けず、大坂谷は直球で空振り三振。ここで久保投手コーチとトレーナーが慌ててマウンドへ行きました。でも横山は笑顔で、アクシデントではなかった模様。次の下妻も3球で空振り三振に切って取り、二塁残塁です。

6回、7回、8回と三者凡退でピシャリ!そして3対0で迎えた9回は、先頭の9番・島井がセーフティーバントを敢行し、西田が捕ってカバーの横山にトスするも間に合いません。記録はファースト内野安打、2本目のヒットを許しました。しかし横山に動揺はなく、次の福田を左飛に打ち取って、西田は遊ゴロ併殺打。最後も3人で片づけて試合終了です。そのあと周りのお客様からの握手攻めとなり、笑顔いっぱいのご両親。テレビ画面からも喜びが伝わってきました。

小豆畑「メチャクチャ嬉しい!」

横山投手とは連絡が取れず、コメントはないのです。すみません。そこで、やはりルーキーピッチャーのプロ初完投のみならず、完投による今季チーム初完封を支えたキャッチャー・小豆畑選手の話をご紹介しましょう。いつも「完封勝ちは最高」と言っている小豆畑選手なので、開口一番「メチャクチャ嬉しいですよ!たまらんっすわぁ。きょうはよく寝られます」と本当に幸せそうでした。

横山のおかげ、と繰り返す小豆畑選手。完封勝利は捕手冥利につきますね。
横山のおかげ、と繰り返す小豆畑選手。完封勝利は捕手冥利につきますね。

「すごく調子がよかった、というわけではなかったかもしれません。フォークが浮いたところや、危ないボールもいくつかあったし。でも、もちろん悪くはなかったですよ!本人も地元で気合い入っていたんじゃないですか?勝ちかっただろうし、それで最後までいけたんじゃないかな」

100キロ台のカーブ、それにスライダーやフォークなどの変化球が決まっていました。「今まで真っすぐでガンガンいっていたのが、変化球でカウントを取って、フォークで三振させたりできるようになったんでしょうね。もともと真っすぐがメチャクチャいいピッチャーですから、そこに変化球が加わればもう!」。鬼に金棒ですか。小豆畑選手も完投、完封は意識していた?「まあ球数をなるべく抑えて完投できるようにとは思いました。ヒット2本といっても、ポテンとセーフティーでしょう?相手がわりと淡泊に打ってくれたのも助かりました」

ところで試合中に解説の高橋雅裕さんが「小豆畑選手のキャッチングもいい」と褒め、打席では「彼はバッティングに重きを置いていないので」と話していたと伝えたら「まあ打てるに越したことはないですけど」と苦笑い。でもキャッチャーの仕事が一番ですよね。ナイスリードでした。「ピッチャーのおかげです!」といつもの言葉が返ってきます。

最後にもう一つ。5回のヒットを打って無死一、二塁になった時、伊藤隼選手の打席でピッチャーが二塁へ牽制して、その球が小豆畑選手の腰に当たりました。「ああ、大丈夫ですよ。ショート遅いな~とは思ったけど(笑)」。いや~かなり痛そうだったのに、ベンチが…。「みんな笑いすぎでしょ!」。そう突っ込む小豆畑選手もですが、聞いた私もまた大笑いしてしまいました。すみません。

不退転の決意で臨む西田

西田選手は、8日が同点タイムリーとタイムリー三塁打の2安打2打点、6月27日以来のマルチヒットと打点でした。9日も6回に右前タイムリーを放ち、 2試合で3打点。2日連続のスタメンで結果を出しています。そもそも1試合フル出場したのも1ヶ月ぶりのことなんですよね。「練習でずっとよかったし、ゲームに出る機会があまりなかったけど、いつでも結果を出せるように毎日準備していたつもりです」

西田選手が6月中旬に、思い切ってフォームを変えたことは以前も書きました。こちらです。<西田直斗選手 ―自分で変えた自分を信じて《6/21 阪神ファーム・後編》>「それを固めようと思ってやってきた。そのためには、みんなと同じ練習時間では間に合わない。自分のものにするには数をこなすしかない」。6月27日のオリックス戦(舞洲)で3安打があり、以降も出場した試合には1本ずつでもヒットが出ているものの、その出場機会自体が昨年までのように多くはありません。

「でも折れずに、やると決めたことはやりました。朝走ったり、全体練習のあと1人で打ったり、素振りしたり。それを試合で試すことができなくて苦しかったし、悔しかったけど…やることは変えずにやろうと思って。やめてしまったら、やらなかったのと同じやから。まだ4年目じゃなくて、もう4年目。今年で終わりかもしれないというくらいの気持ちです。だから、今年やると決めたことは最後までやり通す。そう決めています」

これは野球教室でノックをする西田選手。笑っていますが、けっこう真剣でした。
これは野球教室でノックをする西田選手。笑っていますが、けっこう真剣でした。

チームがナゴヤ遠征中の4日から6日まで、鳴尾浜に残っての練習。実はこれが“今季初残留”でした。この時、濱中打撃コーチに「逆方向への打球を増やせば率も上がってくる」と言われたとか。ちょうど自分でも、センターから左の“逆方向”が弱くなってきたと感じていたところです。6月にフォームを変えた時も逆方向へいいライナーが打てたりしていたけど、ずっとは続かなかったそうで、徹底的に時間をかけ意識して打ち込みました。

残留が自分を見直す時間になった

そして臨んだ山形での楽天戦。8日の右前タイムリーは「どん詰まり(笑)。でも悪い詰まりじゃなくて、前の打ち方だとヒットにならず、内野フライかボテボテのゴロだったと思う」と振り返ります。同じく8日の三塁打は、変化球の落ちてくるところを打った西田選手らしいヒット。「低めの球を、前は引っかけたり空振りしたりしていたけど、うまく拾えました。その前のインコース高めの真っすぐを空振りせずにファウルできたことも大きい。ボールに対して自分の形でバットが出て、1球1球に納得できている」

ただし逆方向ばかりだとインコースが打てなくなるので「引っ張りをやめるんじゃなくて、センターからショートの頭上に強い当たりを打つことが目標。ライト前にヒットを打った時も、意識はセンター方向にありました。体が反応できる」とのこと。さらに「残留練習で意識づけしてきたことが、この2試合につながったと思います。濱中さんの言葉で、自分のバッティングを見直す時間になりました。大きな3日間」と振り返っています。

「今は中谷さんが1軍に行ったから出してもらえている。そこで準備してきたことが出せてよかったけど、これから使ってもらえる、いや使わせるくらい結果を出していかないと。そのためには与えられたところで応えるしかない。たとえスタメンでも1、2打席が勝負。打てなければ代えられる。それは1軍に行ったとしても同じ。チャンスは1打席か2打席。そのつもりで取り組みます。前向きに」。まだ4年目、されど3年目までとの違いを痛感する日々。もがきながらも、決めたことはやり通す強い意志が見えました。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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