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“サタデー横山” が1軍へまた前進!7回無失点で初勝利《4/18 阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
試合後の取材で、記者陣が囲んだ時に見せる顔が投球の良し悪しを顕著に表す横山投手。

横山投手は11日のBCリーグ・富山戦に先発した際、左手中指のマメの影響があって4回で降板しました。そのため18日はそのままいけるのかと心配していたのですが、まったく問題なかったようですね。前回はマメに阻まれた「7イニング」「100球前後」にすんなり到達。7回96球、しかも無四球で無失点という内容です。

では、きのう18日に鳴尾浜で行われたウエスタン・阪神-広島戦の結果をご紹介しましょう。北條選手が復帰してすぐ2点タイムリー二塁打、横田選手もタイムリー三塁打、そして田上選手が2点タイムリーで援護し、投手陣は完封リレーでした。横山投手はもちろん、北條選手と横田選手は短めですが、久々の打席で結果を出した田上選手や、ピンチで横山投手を救う好守備を見せた西田選手の“本音”も聞いています。お楽しみに。

《ウエスタン公式戦》4月18日

阪神-広島 5回戦 (鳴尾浜)

広島 000 000 000 = 0

阪神 002 100 20X = 5 

◆バッテリー

【阪神】○横山(1勝1敗)-桑原-小嶋 / 清水

【広島】●野村(1勝1敗)(4回)-小野(2回)-池ノ内(2/3回)-佐藤(1回1/3) / 磯村

◆三塁打 横田

◆二塁打 美間、北條、柴田

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策) 打率

1]指:柴田  (3-2-0 / 1-1 / 0 / 0) .350

〃打指:原口 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .000

2]遊二:北條 (3-1-2 / 1-1 / 0 / 0) .262

3]一:中谷  (3-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .318

4]中:江越  (4-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .333

5]三:西田  (3-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .294

〃打:黒瀬  (0-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .118

〃走遊:植田 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .229

6]右:緒方  (2-1-0 / 0-1 / 0 / 0) .250

〃左:田上  (1-1-2 / 0-0 / 0 / 0) .500

7]二三:荒木 (3-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .061

8]左右:横田 (3-1-1 / 2-1 / 0 / 0) .134

9]捕:清水  (3-0-0 / 2-1 / 0 / 1) .167

◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ

横山 7回 96球 (5-6-0 / 0-0 / 1.64) 145

桑原 1回 18球 (0-0-1 / 0-0 / 0.00) 147

小嶋 1回 13球 (1-1-0 / 0-0 / 0.00) 139

《経過・3投手で完封リレー》

打線は3回、清水の死球と柴田の左前打で1死一、二塁として北條が左中間へタイムリー二塁打!広島の先発・野村から2点を先取します。4回には1死後に緒方の四球と荒木の投ゴロで2死二塁となって、横田がレフトフェンス直撃のタイムリー三塁打を放ち3点目。5回は先頭の柴田が左翼線二塁打で出て、北條の遊ゴロと中谷の四球、さらに江越の左前打で1死満塁と攻めるも、ここは西田の二ゴロ併殺打で追加点なし。

6回は左前打した先頭の緒方を荒木の犠打で進めましたが、横田と清水は連続三振で無得点です。しかし7回、柴田と北條が四球を選んで無死一、二塁。ここで中谷はバントを失敗して柴田がアウト、続く江越の三ゴロで2死一、三塁となり投手が交代します。4人目の佐藤から西田の代打・黒瀬が四球、満塁となって途中出場の田上が中前タイムリー!2人を還しました。

先発の横山は1回、三者凡退の立ち上がり。ところが2回に早くもピンチを招きます。1死から小窪は振り逃げ(清水の送球を中谷がこぼす。記録は清水のエラー)、続く美間に左翼線二塁打を浴びて1死二、三塁。でも桑原を空振り三振に仕留め、磯村は三飛で無失点。3回は赤松のサード内野安打と庄司の中前打で1死一、二塁となるも、続く下水流の三塁線の打球を西田が好捕!ベースを踏んで赤松をアウトにしました。シアーホルツから見逃し三振を奪って切り抜けます。

4回は先頭の小窪に中前打されたあと美間を三ゴロ併殺打、桑原は見逃し三振と3人で片づけ、5回は三者凡退。6回は2死からシアーホルツに中前打されただけ。7回も三者凡退に切って取り交代しています。8回は桑原が、2死後に四球を与えたものの難なく無失点。9回は小嶋が登板し、小窪に左前打を許しながらも他はキッチリ抑えて試合終了。チームは今季3度目の完封勝利です。

尻上がりによくなった直球が収穫

7イニング、96球を投げ5安打6三振で無失点。しかも無四球だった横山投手。試合を振り返って「二巡目でバッターの目が慣れてきて、そのタイミングで尻上がりによくなってきた。久しぶりの感覚でしたね。後半でも相手のバッターを真っすぐで差し込めるケースが多かった」と満足な様子。プロ最長イニングでしたが「疲労もあまりない。完投もできたと思います」と言っています。

2回のピンチで三振に切って取った桑原選手については「左バッターで、高卒1年目というのが頭に入っていたので、いい意味で上から見て投げられた。真っすぐのタイミングが合っていなかったし、ボールの下を振っていたんで」と言っていました。「きょうは抜け球がそんなになかったですね。低めにいっていた分、真っすぐでゲッツーが取れた。きょうはすごくボールが低めに集まっていたと思う。試合の中でも修正ができました。変化の軌道とか、特にスライダーはストライクが取れるところに。きょうはそれができたという気はします」

「尻上がりに良くなる、久しぶりの感覚だった」と自身の投球を振り返る横山投手。
「尻上がりに良くなる、久しぶりの感覚だった」と自身の投球を振り返る横山投手。

そんな中で一番よかったのは?「一番はストレートが尻上がりによくなっていったこと、ですかね。その分、バッターの目が慣れたところで差し込めた。ランナーを出してからは何も考えずに腕を振って投げました。無四球は久しぶりです!」。なお1回に下水流選手、3回にシアーホルツ選手から奪った見逃し三振は「どちらもスライダー」だそうです。

早く1軍に行きたいという思いが強くなったのでは?と聞かれ「いや、そんな。呼ばれたら行ける準備はしていますが…早く、とかはないです。ここで結果を出して、いい情報を伝えられたらなと思います」という答え。ファームではあるけど“プロ初勝利”ですよ。「勝てたことは嬉しいですけどね。味方が3点取ってくれて、楽に投げられたっていうのはあります。ウイニングボール?もらってません(笑)」。それは1軍初勝利の時に?「それに向けての準備、土台を作っていきたいです」

横山のストレートが持つ力とは?

久保投手コーチは横山投手について「見てもらった通り。順調ですね。4月中に7回、100球というところまで来ました。もう少ししたら、もっと安定したものを出せる」と話しています。完投もいけそうな本人のコメントでしたが「今の状態では7~8回いけば十分。一気に、とはあまり思っていません。胸鎖関節炎があったことを考えれば」とのこと。

「あとは変化球、緩い球の精度が上がってくれば、よほどのことがない限り真っすぐは前に飛ばないというところまで達するでしょう。カウントを作れば確実に真っすぐで押さえ込める。それは大きな武器。変化球が来たら振ってしまうという感じになる。そうするとバッターは真っすぐと変化球の両方、二股かけて対処しなくちゃいけないから、思いきり振れなくなる。そういう要素を、あの真っすぐは持っていますね。広島打線は、真っすぐが来れば振るチーム。そういうチームだから、いい目安になった」

「飛んでる、飛んでる」という二塁打

復帰ゲームで即、2点タイムリー二塁打を放った北條選手。左足も大丈夫そうですね。
復帰ゲームで即、2点タイムリー二塁打を放った北條選手。左足も大丈夫そうですね。

左ひざに自打球を当てた影響で2試合欠場した北條選手が、この日スタメンで復帰。さっそく3回1死一、二塁のチャンスに先制の2点タイムリー二塁打を放ちました。前日、まだ走ると違和感があると話していたので「ホームランならゆっくり回れるよ」と言ったら「イメージしてました」とニヤリ。でも結果は二塁打、しっかり走ったわけですね。しかも復帰してすぐなんて、やりますねえ。

「たまたまですよ。打ったのはカットボールが曲がらずに来た感じ。ほぼ真っすぐです。その習慣は覚えてませんね。見たら(打球が)飛んでる~飛んでる~って」。本人も我々も爆笑です。広島の野村投手とは初対戦だったとか。「1打席目は3球三振。めっちゃコントロールよかった」と苦笑いしながら、最後に「打ててよかったです」とも。

タイムリー三塁打の横田選手は「何もないですよ。普通ですよ」と繰り返すだけ。ホームランにならなかった?「あれは入らないですねえ。風であそこまでいきました」。この日も2三振を喫していますが「悪くはないので大丈夫です」と言っていました。

「サードの守備は(100点満点の)5点」

掛布DCも「あいつは今年、変わろうとしている」と評価する西田選手。
掛布DCも「あいつは今年、変わろうとしている」と評価する西田選手。

古屋監督からは「西田のあのプレー、北條の二塁打、きょうはこれでしょう。よくやってくれた」という言葉がありました。まず西田選手の“あのプレー”について。3回1死一、二塁のピンチで下水流選手の三塁線を抜けそうな打球を捕ったものです。失礼ながら「捕った?入った?」と聞いてみたところ、小さな声で「入った」と言って笑います。そのあと「グラブを出したら入った。それでちょっとビックリして慌ててしまって…。ゲッツー無理かな?あ、そうや。ベース」てなわけで、三塁ベースを踏む前に一瞬の間があったみたいです。

試合後は藤本守備走塁コーチとマンツーマンで守備練習をしていた西田選手。サードでのエラーも多いせいでしょうか。「きょうだけなら100点ですけど、これまでのサードの守備を考えたら、まだまだです」という自己評価でした。

田上選手の2015年版ヘルメット

最後は7回2死満塁でダメ押しの2点タイムリーを放った田上選手。右手だけで持っていった感じの中前打です。「スライダーですね、多分。みんなに繋いでもらったチャンスだったので、1本打ちたいなと」。ファームに来てから、代走とか守備とかでの起用が多かったので、久々かも。「まだこれで4打席目ですよ。4打数2安打、5割(笑)。自分としても打席が久しぶりで。少ない打席でいかに集中してやるかだと思っていました」

それにしても技ありのヒット!「チャンスだからと強引にならず、最後まで目付けをして打てたかなと思います。右ピッチャーだったので、引っ張りというよりは」。なかなかフル出場で4打席というわけにはいきませんが「若い選手も多いし、チーム事情もありますし。そういうところで結果を出していきたい」と田上選手。そろそろ1軍に戻りたいですね。

わかりにくいかもしれませんが、これが今季の田上選手のヘルメット。
わかりにくいかもしれませんが、これが今季の田上選手のヘルメット。

ところで、田上選手のヘルメットはご覧になりました?右だけじゃなく両耳にカバーがついています。私も気づいたのは3月で、そのあと機会がなく4月に入ってから理由を聞けました。でも「え、今ごろ?入団した時からですよ」とか、通りかかった伊藤隼選手まで「知らなかったんですか?ずっとですよ。今でもスイッチヒッターを目指してるのに」とか、一緒になってたたみかけるもので、一瞬「ヘルメットは去年まで左打者用だったはずだけどなあ。でもスイッチって…」と騙されるところでした。

こちらが昨年までのヘルメットです。
こちらが昨年までのヘルメットです。

真相はこちら。「今年からです。盗塁の時、キャッチャーからの送球が危ないので両耳のにしました。去年、一度(送球が)ヘルメットに当たったことがあって、耳に当たったら危ないなと思ったんです」。もちろんスイッチ転向は、打ち合わせもなく完璧に入ってきた伊藤隼選手の“話術”によるもの。いや~うまい!真顔でしたからからね。両耳のヘルメットに変えて違和感や不自由なことはないかと聞いたら「まったくありません。むしろ安心です」と田上選手。鳴尾浜、そして甲子園でも思いっきり走ってください。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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