Yahoo!ニュース

4ヶ月ぶり交流試合 相手は初顔合わせの京都大 《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター

きのう23日、京都大学との交流試合に鳴尾浜のスタンドは超満員でした。ことしのファームは交流(育成)試合が少なめで、4月に4試合やったあと5月のJR北海道戦が雨天中止となったため、4月27日以来。大学との試合は3月に組まれていなかったので、今季初ということです。加えて京大の田中英祐投手がプロ注目の右腕。報道陣の数は久しぶりに見る多さでしたねえ。

阪神投手陣が打線を抑えていたし、田中投手も最初は直球主体で打たれていたから気づかなかったんですが、中盤以降になると変化球をうまく使って抑える場面も増え、特に三振を奪うとスタンドは大きな拍手と歓声!バックネット裏にも京大を応援する方が大勢いらっしゃいました。鳴尾浜で三振して、あんな割れんばかりの拍手をもらったのは、阪神の選手も初めてでしょう。

試合終了後、京大・田中投手を待つテレビカメラの列。こういうの、いつ以来ですかね。
試合終了後、京大・田中投手を待つテレビカメラの列。こういうの、いつ以来ですかね。

試合は9安打6得点の阪神が、4投手の完封リレーで勝利。注目の田中投手は7回で130球を投げ、7安打5三振4四球の6失点(自責6)でした。試合後は田中選手だけでなく、平田監督や阪神の選手も、テレビカメラ数台が並んでのインタビューと記者陣による囲み取材を受けたようです。

なお、きのうの試合前練習で陽川選手が負傷しました。イレギュラーバウンドした打球を右目の下に受け、西宮市内の病院へ。診察の結果、骨に異常はなく打撲だそうで、きょう以降は様子をみての練習になる模様です。目のことなので無理はさせないとのことですが、週明けの由宇遠征は予定通り参加の見込みと聞きました。きょうは別メニューで練習しています。

《交流試合》8月23日

阪神-京都大学(鳴尾浜)

京大 000 000 000 = 0

阪神 140 010 00X = 6

◆バッテリー

【阪神】白仁田-鶴-松田-島本 / 小豆畑

【京大】田中(7回)-冨田(1回) / 小野-藤沢(8回裏)

◆二塁打 西田、阪口 

◆打撃(打-安-点/三振-四死球/盗塁/失策)

1]指:荒木   ( 3-1-0 / 0-0 / 0 / 0 )

〃打指:田上  ( 1-1-0 / 0-1 / 1 / 0 )

2]二:北條   ( 5-1-1 / 0-0 / 0 / 0 )

3]右:緒方   ( 1-0-1 / 0-2 / 3 / 0 )

4]三遊:西田  ( 4-1-1 / 1-0 / 0 / 0 )

5]一三:原口  ( 4-1-1 / 0-0 / 0 / 0 )

6]左:中谷   ( 3-1-0 / 1-1 / 1 / 0 )

7]遊一:阪口  ( 4-1-0 / 1-0 / 0 / 0 )

8]捕:小豆畑  ( 4-1-0 / 1-0 / 0 / 0 )

9]中:横田   ( 4-1-1 / 3-0 / 0 / 0 )

◆投手(安打-三振-四死球/失-自) 最速キロ

白仁田 5回 78球 ( 4-4-2 / 0-0 ) 144

鶴   2回 20球 ( 0-3-0 / 0-0 ) 146

松田  1回 8球 ( 0-1-0 / 0-0 ) 151

伊藤和 1回 14球 ( 1-0-0 / 0-0 ) 144

田中投手の立ち上がりを攻めて先制

まず打線は1回、2死から緒方が四球を選び盗塁成功、続く西田の左越え二塁打で生還しました。2回は左前打を放った中谷が二盗、小豆畑の中前打で1死一、三塁として横田が中前タイムリー。荒木の右前打で満塁となって北條の左前タイムリー。さらに暴投でもう1点入り、1死二、三塁で緒方が中犠飛。この回4点を加えて5対0とリードを広げます。

3回は先頭の原口が左前打するも後続を断たれ、4回は三者凡退。5回は四球を選んだ緒方が二盗、1死後に三盗を決めました。続く原口の遊ゴロが野選となり、緒方が還って6点目。7回まで投げた京大の先発・田中に対し、4回以降は3四球や野選はあったものの、5三振を奪われてノーヒットです。

8回は変則ピッチャーの冨田から、先頭の阪口が左中間への二塁打。しかし小豆畑と横田が緩い変化球で連続の空振り三振を喫します。続く田上の打球をピッチャーがグラブに当てて方向が変わり、ショートへの内野安打になって2死一、三塁とするも得点には至りませんでした。

投手陣は、先発の白仁田が三者凡退の立ち上がり。2回以降は毎回1安打ずつされながらも、小豆畑の盗塁阻止や併殺などで三塁を踏ませることなく、5回まで投げて無失点。ついで鶴が6回から2イニングをパーフェクトに抑えています。8回の松田も1イニングを三者凡退。そして9回は伊藤和が1死からヒットを許しましたが、最後は4番を二ゴロ併殺打に切って取り試合終了。

「再発見できた」と白仁田

久しぶりに好感触だったという白仁田投手。写真撮影に照れています。
久しぶりに好感触だったという白仁田投手。写真撮影に照れています。

6月3日の広島戦(甲子園)以来の先発だった白仁田投手は、やはり久々の5イニングを投げました。5月24日の中日戦(淡路)で8回まで投げて以来です。「投げているうちに思い出してくる感覚があった。投げながら“ああー”って来ました(笑)。投げ終わって、かなりいい感じになっています。きょう投げられてよかった。今まで(球速は戻りつつあったが)投げていて何かもうちょっと足りないなと思っていて…」

それが何か、きょう見つかった?「はい。あ、これだなって答えが出ました。体重移動とかで体を動かしすぎて失敗していた。できるだけ動かずに、突っ込むことなく投げたら良かった。去年はそんなに動いてなかったなあと気づいたんです」。去年は本当に好調を維持していましたからね。右手の違和感や足のケガなどもあり、ちょっと時間がかかってしまったけど、まだ間に合います。「きょうは“再発見”できた」という白仁田投手。猛ダッシュで巻き返してください!

プロの貫録を見せたリリーフ陣

145キロ前後の直球を軸に、格の違いを見せつけた鶴投手。大学生相手にやりにくくなかったですか?「相手は関係なくいこうと思っていたので。まあ変なプレッシャーはありましたけどね(笑)」。真っすぐの球速が揃っていたのでは?「それもそうですけど、変化球ですね。1軍でも追い込むまでが良くても、そこからファールで粘られたりしていた。きょう、やっとスライダーで空振りが取れた」と手応えがあったようです。

「一番は真っすぐの質やコントロールですが、どれだけ良い球を投げても決め球が甘いので三振が欲しい時に取れないとかが課題だったので」とのこと。この日は真っすぐで押していき、奪った3三振のうち1つは真っすぐ。2つはスライダーでした。「結果がすべてですけど、ファームでやる以上は内容も」。熾烈な戦いが続く1軍に、鶴投手の力はこれから必要でしょう。

松田投手は、投じた8球のうちスライダーとカーブが1球ずつで、その他は真っすぐ。課題の変化球、といっても2球だけだったので「前回よりは…って感じですかね」と首をかしげます。大学との対戦も「故障明けだから、相手より自分のピッチングを意識していました」とだけ。なお久保投手コーチによれば「連投はまだちょっと早いかな」という感じでした。なんせ球速がバンバン出るので急いで1軍へ!と思ってしまいますが、ここは慎重に。

1安打されながらも3人で片づけた伊藤和投手に、大学生相手はどうだったかと尋ねたら「投げにくいですよ~!」と即答でした。「プレッシャーありますからねえ。抑えて当たり前みたいな。緊張しましたよ」と苦笑い。1死から左中間に運ばれたヒットは、真ん中にいった真っすぐだそうです。その直後、初球を打たせて4-6-3の併殺に「狙い通りです」とニヤリ。「きょうはそんなに良くなかったけど、スピードも割と出ていましたね。いい感じです」

質問は田中投手のことばかり…

記者の囲み取材で、最後に「レフトフライだと思って走った」と言って笑う西田選手。
記者の囲み取材で、最後に「レフトフライだと思って走った」と言って笑う西田選手。

両軍ベンチ横のカメラマン席、センターバックスクリーン横、さらにはネット裏のスタンド最前列までカメラがずらりと並んだ異様な光景の中でマウンドに上がった京大・田中投手から、1回にタイムリー二塁打を放った西田選手。試合後はテレビと、いつもの3倍くらいの記者陣に囲まれて取材を受けました。驚いて「僕、何もしてませんよ…」と戸惑う西田選手への質問は、もちろん田中投手についての感想です。

「真っすぐは速いです。きてました。しっかり振り負けないようにと思っていた。変化球もわかりにくくて、カットボールは打ちづらかったですね。(7回、第4打席の)三振はフォーク。バットが止まらず振らされた。いいピッチャーだと思います。思ったより差し込まれて、勢いありました」。1回のタイムリーは「真っすぐを打とうと思っていた」とか。148キロに振り負けていなかったね。「でもレフトフライだと思ったので打球は見ていなくて、思いきり走った」と言い、記者陣の笑いを誘っていました。

ヒットはなかったものの2回は犠飛、そして2四球に3盗塁と足で田中投手を揺さぶった緒方選手も取材陣に囲まれます。「いいスピードが出ていて評判通り、いい真っすぐを投げるなと思いました。左バッターのインコース、膝もとに来るスライダー。あれを投げられたら打ちづらくて手も出にくい」。3盗塁を決めていますが、モーションは大きい?「そうですね。そういったところのスキはあったので、走れました。自分が(5回に)三盗してからはボールを長く持ったりとか対応していた。さすが頭がいいですね」

また北條選手の1回の打席で、2球目に最速の148キロが出ていて「速かったですよ」との感想。2回のタイムリーは真っすぐですが「4打席目のライトフライ(124キロ)はカットボールかスライダー。全体的に低めのボールが多かった」と言っていました。また8回の冨田投手にはカーブを2つ見逃して、真っすぐがボールとなった4球目を遊ゴロ。やはり大きなモーションからくる球にタイミングが合わなかったようで、ただ苦笑の北條選手です。

久々にフルでマスクをかぶった小豆畑

不運なことに先発出場の予定が雨などで飛び、先月31日以来のスタメンだった小豆畑選手。フルでマスクをかぶったのもそれ以来です。ヒットもあったし、盗塁も刺したし、仕事しましたね。次は公式戦で。少し前に風邪で1日だけ休み、翌日は顔がやつれたように見えたんですが「そう思うでしょ?実は(静養していた間に)体重が3キロ増えた」と笑います。でも練習を始めて「すぐ戻った」とのこと。

小豆畑選手にも田中選手の感想を聞いてみました。2回に田中投手の足元を抜く中前打を放っています。「そんなに嫌な感じはしなかったですよ。真っすぐと、逃げていくボールと落ちるボールしかなかったので。意識的にツーシームとか投げられたらどうかなと思いますけど」。それより8回の冨田投手に対して、10球粘りながらカーブで空振り三振に倒れたこと。阪口選手が先頭で二塁打を放ち「あそこは進塁打のサイン。当てるだけでよかったのに、色気を出してヒットを狙ってしまった」と反省しきりでした。

きょう24日も12時半から鳴尾浜で、大学との交流試合が行われます。きょうの相手は大阪商業大学、阪神の先発は島本投手です。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

岡本育子の最近の記事