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「去年までとは違う二神一人です!」  タイガース ファーム教育リーグ

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター

8日の鳴尾浜球場は相変わらず風が冷たく、コートの脱げない一日でした。9日の日曜日はもう少し暖かくなるようで、と思ったら10日は雪マーク!お水取りが終わるまでは油断できませんね。そんな鳴尾浜で教育リーグの中日戦を見ながら、オープン戦も気になる方は多く「あー点取られた」とか「また走られた」とか、そんな声がスタンドのあちこちから聞こえました。阪神・藤浪、日本ハム・大谷の、先発ですからねえ。大谷投手の156キロにはビックリですが、ともに150キロを超える投げ合い。生で見てみたかった…。

では鳴尾浜の試合結果です。先制しながらエラー絡みで追いつかれ、暴投で決勝点を献上して敗戦。教育リーグは2勝3敗となりました。なお試合終了の瞬間に一塁側ベンチが異様な盛り上がりを見せていて驚いたのですが、中日のファームは練習試合と教育リーグを含め7試合目で今季初勝利だったとか。なるほど、その大歓声だったんですね。

《春季教育リーグ》3月8日

阪神-中日(鳴尾浜)

中日 000 000 101 = 2

阪神 010 000 000 = 1

◆バッテリー

【阪神】二神-歳内-高宮 / 梅野-岡崎(6回~)-原口(8回)-小豆畑(9回)

【中日】朝倉(3回)-雄太(3回)-岩田(3回) / 杉山-赤田(7回~)

◆二塁打

【阪神】森田(2回)、日高(3回)、横田(5回)、北條(7回)

◆打撃(打数-安打-打点/三振-四死球/盗塁/失策)

1]三:坂    ( 2-1-0 / 0-0 / 0 / 0 )

〃遊三:荒木  ( 2-1-0 / 0-1 / 0 / 1 )

2]中:俊介   ( 2-0-0 / 1-0 / 0 / 0 )

〃中:横田   ( 2-1-0 / 0-0 / 0 / 0 )

3]指:日高   ( 1-1-0 / 0-1 / 0 / 0 )

〃打指:高山  ( 1-0-0 / 0-0 / 0 / 0 )

〃打指:田上  ( 1-1-0 / 0-0 / 1 / 0 )

4]左:一二三  ( 3-1-0 / 0-1 / 0 / 0 )

5]一:森田   ( 3-1-0 / 1-0 / 0 / 0 )

〃遊:阪口   ( 0-0-0 / 0-0 / 0 / 0 )

6]捕:梅野   ( 1-0-0 / 0-1 / 0 / 0 )

〃捕:岡崎   ( 1-0-0 / 0-0 / 0 / 0 )

〃捕:原口   ( 1-0-0 / 1-0 / 0 / 0 )

〃捕:小豆畑  ( 0-0-0 / 0-0 / 0 / 0 )

7]右:中谷   ( 4-0-0 / 1-0 / 0 / 0 )

8]遊三:黒瀬  ( 2-0-0 / 1-0 / 0 / 0 )

〃三一:陽川  ( 2-0-0 / 0-0 / 0 / 0 )

9]二:北條   ( 4-2-1 / 0-0 / 0 / 1 )

◆投手(安打-三振-四死球/失点-自責)

二神  5回 66球 ( 1-6-1 / 0-0 )

歳内  3回 44球 ( 3-1-0 / 1-0 )

高宮  1回 21球 ( 2-2-1 / 1-1 )

打線はチャンスをうまく生かせず…

先取点は阪神でした。2回に先頭の森田が二塁打。逆方向へのヒットは多い選手ですが、強い当たりの右前打もよく見ます。そんな鋭い打球が左翼線へ。ちょっと新鮮な感じがしましたね。梅野は四球で無死一、二塁とするも中谷が三邪飛、黒瀬も三振で2死となります。ここで9番の北條が粘って8球目を打ち、三遊間を抜くタイムリー!続く坂も内野安打で2死満塁としますが、俊介は中飛で1点止まり。

3回は日高が左翼フェンス直撃の二塁打、一二三は四球で無死一、二塁。しかし後続をすべてフライに打ち取られます。4回は2死から右前打した荒木が盗塁失敗。5回は先頭の横田が鋭いライナーを三塁方向へ。サードの後ろ、三塁線ギリギリに落ちて二塁打となりました。途中で止まりかけたのに、そのあとの加速が素晴らしかった。ただし、この回も追加点はありません。

7回は北條の左中間二塁打と荒木の四球で1死一、二塁としますが横田の遊直で併殺。8回は代打の田上と一二三の連打、阪口が初球をうまく三塁方向へ転がす絶妙の犠打で1死二、三塁のチャンス!ところが次の原口は空振り三振(試合後「打てなかった…」と相当へこんでいました)、中谷も空振り三振で無得点です。

後半にミスが絡んで負けました

変わって投手陣。まず先発の二神が、視察に訪れた山口1軍投手コーチの前で好投しています。5回まで投げて許した走者は中田のみ(2回の左前打、4回の四球)、真っすぐやスライダーで計6三振を奪うピッチング。打者17人に対し、5球以上費やしたのは3人だけという完ぺきな内容でした。

歳内は6回が2死から野本に中前打されるも無失点。7回は先頭の中田に右前へ落とされますが、けん制で刺し1死。しかし松井佑をサード荒木の捕球エラーで出して盗塁も許し、井藤の遊ゴロで2死三塁。続く宋に右前タイムリーを浴びました。8回は2死からセカンド北條の送球エラーがあったものの、またもやけん制でチェンジ!3イニングを投げ3安打1失点(自責0)、最速は144キロです。

1対1で迎えた9回、高宮は連打され一、三塁。1死後、代打・赤坂への四球が暴投となって勝ち越されます。なおも1死三塁で後続は断ちましたが、その裏の攻撃は三者凡退で試合終了。二塁打4本を含む9安打を放ちながら、6安打の中日に敗れました。

先発枠を快投で引き寄せた二神

試合後の談話は、今季ファーム初登板の二神投手から。「5回をテンポよく投げられたのはよかったです。いまやっている形は出せた。でも、もうちょっと真っすぐで押せるところがあったかも」。中田選手に対しては「前の打席でツーシームを打たれたので真っすぐを多めにしたけど、4回は2死からの四球がもったいなかった」と反省。「久保さんやスタンリッジが抜けて、みんなにチャンスがあるということ。狙える時期だと思うので、もっと状態を上げて求められる場所で力を出していきたい。(1軍投手コーチの)中西さんにも言われましたが“負けない投球”をしていきたいですね。まだまだ真っすぐで押していって。きょうのピッチング自体は、早く追い込んでバッテリー有利にいけました」と話しています。

久保投手コーチは「二神?二神はもう私のとこ(に聞きにくる投手)じゃないよ。1軍ですよ」と笑ったあと「去年は全投手、球速を上げることに主眼を置いてやってきた。二神も去年後半から速くなって、フェニックスでは147キロ出した。そうすると、余裕が生まれてくる。去年は力を緩めて投げると130キロ台までスピードが落ちて、いわゆる置きにいったボールになって打たれた。だけど今は8割くらいの力でも、そんなに落ちない」と分析。そして「打たれているのは緩い球でしょう?速いのを投げば打たれない」とも。昨年まいた種が、ことし花を咲かせる…ということですね。

歳内は自身のけん制でアウト2つ!

次に「内容的には前よりよかった」という歳内投手。この日はシュートを課題としていて「センター前ヒット(6回の野本選手)はゴロを打たせにいってゴロだったし、ゴロアウトもシュートを打たせにいって、でした。エラーになったのもありましたが、内容としては狙った通りにいったんじゃないかなと思います」とのこと。左打者に対しては「シュートというよりツーシームって感じ。低めに投げたら勝手に落ちる」のだそうです。

それにしても見事なけん制!1試合2つはなかなか見られないかと。「走者を出さないに越したことはないんですけど、相手チームに“刺されるけん制がある”とわかったら、盗塁とかも防げると思うので」と言います。そして全般を振り返り「四球はなかったけど、セットになってからカウントを悪くするのが前回に続いてあった」と反省も口にしました。

勝負強さを発揮した北條

2回の打席でタイムリーを放った北條選手は、勝負強いねという言葉に「ランナーがいると気持ちの上でも違うし、簡単に終わったらがっかりしてしまう。打ち取られたら自分も悔しいし、より気合いが入るというか気持ちがたかぶる」と答えています。朝倉、岩田といった1軍クラスの投手から2安打ですね。「去年もファームで対戦しているので、あまり関係ない。ただ朝倉さんの球が速くて、初球の真っすぐに手が出なかった。変化球を頭に入れながら打席に入ると速い球に手が出ない時がある。そのあたりはファームでしっかり経験を積んで打てるようにしていきたい」。もともとコメント上手な北條選手ですが、さらに成長が見られますね。

横田「二塁打だけど長打じゃない」

最後は横田選手です。3日が新人研修会で雁の巣遠征に参加できなかったため、6日ぶりの試合でした。まず1打席目の二塁打は「真っすぐです」。感触はよかった?「そうでもないです。飛んだところがよかっただけ」。痛烈な打球が、切れずに三塁線へ落ちたのに?しかも初の長打ですよ。「あれは長打じゃないです。いや長打だけど、ただのヒット。外野の間を抜くとか、三塁打とかでないと。次は三塁打を打ちます!」。なるほど。久しぶりの打席で「ピッチャーの球が速そうで怖かったけど、1打席目に打てたんで。次は真っすぐと思ったらシュートだったのでショートライナー」と言います。2打席目もい当たりでしたね。「はい」。そのあと雄太投手の球について「真っすぐがスライダー(回転)してますよね?聞いていたけど、初球で来てビックリしました。ほんとに来た!と思って」と、目を見開きながら生き生きと話してくれました。

その雄太投手から放った二塁打は、一塁を回ったところで少し緩めたのに再加速してセーフ。「高校の時もよくあったんですが、ああいう当たりででどこまで行けるか試そうと思って。今は試していいと言われているので。レフトが左で、投げにくいから行けるかなと思いました。ああいうのを大事にしないと上には行けない」。ふむ、しっかり見ていますね。まだまだ伸び盛りの横田選手は、これからが楽しみなルーキーです。あ、打席での構えをぜひ見てください。大物の風格が感じられますよ。

9日も教育リーグ・中日戦が鳴尾浜で行われます。先発は能見投手の予定。一方、甲子園のオープン戦(巨人)はルーキーの岩崎投手が先発するみたいですね。先日合流した伊藤和投手も登板するんでしょうか。まだ出場選手登録がない時期で、教育リーグ組もオープン戦組も行ったり来たり。メンバーが固定され始める前にチャンスをつかまなくてはなりません。もう古くなっちゃいましたが…それはまさに「今でしょ!」なのです。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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