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これが惜しい、日本の成人式

にしゃんた社会学者/タレント
(写真:ロイター/アフロ)

 新年明けてしばらくすると日本全国のあちこちで「成人式」が盛大に行われる。成人になった当事者はもちろん、成人する子を持つ親にとっても格別な日である。まずもって両者ともに対して「おめでとうございます」と心より祝福したい。

 日本では常識となっている「成人式」だが、世界を見渡すと珍しく、まずはそれだけである意味「有難い」。

 そもそも論、「成人」年齢について、世界の常識は一定していない。大半の国において18歳となっているが、その次に21歳が多く、アフガニスタンやハイチなどの国々では14歳で、イラクやネパールなどの国は16歳を成人とみなしている。日本は選挙権は18歳で、成人式は20歳というように分かれているのも珍しい。

 世界を見渡しても、日本のような国が一斉に、同年代を特定の地域ごとに集め、盛大に手厚く祝福する行事は聞かない。成人の証を刻む行事の中には、バンジージャンプや蟻に噛まれる痛みに耐えるなどを要求する部族がいることを聞いても、やはり日本の成人式は「有難い」。

 私もかつて、頂いたお年玉で買ったスーツを身にまとい、出席したことを思い出す。式では数名の来賓のあいさつなどがあり、漫才を楽しんだ。一度切りの瞬間を残そうと写真を撮ってもらうも、ネガが入っておらず、幻となった苦い経験も持ち合わせている。

 ほとんどの人にとって、めでたく、考え深い日としての成人式だが、メディアを通して流れて来るニュースは必ずしもそのような類のものばかりとは限らない。成人の行き過ぎた言動に関する報道などは今では恒例となっている。

 日本の成人式は、ただの同窓会と化しているようである。主催母体によっては、口出さず、金だけを出し、式のキャスティングを新成人に任せているところもあると聞く。開催の意義を失いかけ「税金の無駄使いで、止めよう」の声も出る始末。

 長きに渡り日本で続いてきた世界的に見ても珍しい有難い文化、「成人式」には、改善が求められる部分もあるのかもしれない。

 日本の成人式の開催趣旨は、成人した者の激励と祝福となっている。そこにこそニュースとして露呈している成人の行き過ぎた言動などの根っこがあるのではないか。

 例えば、一部ではあるが、日本周辺の中国や韓国でも成人式が行われているが、極めて厳かで、内容は、成人としての自覚を持たせる構成になっており、そこには成人としての誓いなどがある。

 その点、日本の場合、その部分は基本的に存在しない。つまり日本の成人式は、周りが新成人に与えるばかりであり、新成人は与えられるばかりである。

 日本の成人式の最も惜しい点はまさにそこにある。

 日本全体にとっても参考になると考える、「立志式」という催し物が福井県で行われている。15歳になる児童らが、橋本左内に学び、志を立てる。子供達は左内が書いた「啓発録」の5つの心構えを声に出して誓う。その内容とは、1.去稚心(稚心を去れ)、2.振気 (気を振るえ)、3.立志 (志を立てよ)、4.勉学 (学に勉めよ)、5.択交 (交友を択ぶ)である。

 上記の内容にとらわれる必要はないが、しかし日本の成人式は、おそらく「立志式」の部分が加わってこそ完成されるのではないか。現状、日本全国としてまとまるのは難しいのかもしれないが、地域単位で、小集団単位で、せめて成人を迎えた者各々でこの際、志を立てることを願いたい。

社会学者/タレント

羽衣国際大学 教授。博士(経済学)イギリス連邦の自治領セイロン生まれ。高校生の時に渡日、日本国籍を取得。スリランカ人、教授、タレント、随筆家、落語家、空手家、講演家、子育て父などの顔をもっており、多方面で活動中。「Mr.ダイバーシティ」などと言われることも。現在は主に、大学教授傍ら、メディア出演や講演活動を行う。テレビ•ラジオは情報番組のコメンテーターからバラエティまで幅広く、講演家として全国各地で「違いを楽しみ、力に変える」(多様性と包摂)をテーマとする ダイバーシティ スピーカー (多様性の語り部)として活躍。ボランティアで献血推進活動に積極的である。

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