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“ポップオペラ”の道を切り開く藤澤ノリマサを導く存在

中西正男芸能記者
今の思いを語る藤澤ノリマサさん(撮影・中西正男)

 2008年、ポップスとオペラを融合させた“ポップオペラ”という他に類を見ないスタイルでデビューした藤澤ノリマサさん(40)。来年1月には東京と大阪で「藤澤ノリマサ 15th Anniversary Concert~eternità~」を開催します。音楽一家に生まれ、自らを示す方法として身につけた音楽への思い。さらに、世界的アーティストを道しるべに目指す夢とは。

音楽とは生きること

 昨年、15周年を迎えました。改めて振り返ってみると、デビューしていないと経験できないことをたくさんさせてもらったなと。本当にそう思います。

 オーケストラの皆さんとレコーディングをさせてもらってアルバムを作ったり、上海万博で歌わせてもらったり、どれも貴重な体験でした。

 「音楽は国と国を結ぶ一本のテープ」という言葉を耳にしたことはあったんですけど、万博のようなまさに国際的な場で歌うと、それを痛感しましたしね。

 英語は少し話せるものの、中国語は全く分からない。そんな自分でも、歌うと4000人くらいの方々が「ウォーッ」と盛り上がってくださる。さらには、全く予想もしていなかったアンコールまでいただけた。

 アンコールなんて思いもしてなかったので、何を歌うかなんて考えてなくて。でも、5分くらいアンコールの声が鳴りやまずで。考えた挙句、同じ歌をもう一回歌ったんですけど、それでもすごく盛り上がってくださいました。

 なんでしょうね、心と心がつながる。言葉にすると平坦になってしまいますけど、心底それを感じた瞬間でした。

 と、こんな話をしてるんですけど、元来、僕は人見知りでして。人前で何かをやるなんてことは本当に苦手だったんです。

 ただ、父がクラシックの先生で、母親はポップスの教室をやっていて。ジャンルは違うものの、二人とも音楽を生業にしていたんです。そんな環境で育ったので、ジャンルレスというか、いつもいろいろな音楽が周りに流れてはいました。周りの男の子がサッカーや野球に夢中になっている中、僕は家のグランドピアノが友だち。そんな状況でした。

 そしていつしか、人見知りだったはずの自分が演奏することによって自分を見せる。表現する。自分という存在を認めてもらう。その構図が作られていった。なので、僕にとって音楽とは生きること。大げさではなく、本当にそう思っています。

できないことはない

 そうやって音楽に傾倒していく中で、最も大きな影響を受けたのがセリーヌ・ディオンさんでした。

 1998年にショートホームステイでカナダに行ったんですけど、ちょうど映画「タイタニック」でセリーヌの音楽を知りまして。世の中に、これほどまでに強い愛を込めた歌があるのと。それくらい衝撃を受けました。

 直接お会いしたことはないんですけど、大好きでラスベガスまでショーを観に行ったり、来日される際には必ず足を運んでいます。

 なぜここまで心が震えるのか。一つは純粋に“声の力”もあると思います。あとは“乗り越える力”だろうなと。

 セリーヌの育ったところはフランス語圏だったので、英語は話せない地域だった。それなのに英語を一から習って、言葉の壁を乗り越えて世界で勝負した。そして、あそこまでの存在になった。人間として尊敬しますし、自分の姿で「できないことはない」と証明していると思います。

 日本人でも演奏者や指揮者として世界で活躍されている方がいますけど、歌で言葉の壁を超えることは本当に難しい。

 自分と違う言語で歌ってグラミー賞を取る。そういったことを成し遂げることは困難の極みですけど、なんとか、いつか、そこを目指したい。セリーヌという存在から、その思いをもらっています。

 以前、葉加瀬太郎さんのラジオに出してもらった時も、あまりにもセリーヌへの思いが強すぎて。葉加瀬さんがセリーヌと一緒にツアーをされていた時のことばっかり話を聞いちゃって…。「オレの話、全然しないよな(笑)?」と言われたりもしました。

 まだまだはるか先にいらっしゃる方ですけど、自分は自分の積み重ねで、何とか少しでも近づいていく。逆にいうと、やるべきことはそれしかないので、そこを続けられればと思っています。

■藤澤ノリマサ(ふじさわ・のりまさ)

1983年3月8日生まれ。北海道出身。歌手、作曲家。声楽家の父と、歌謡教室の講師だった母との間に生まれる。幼少から音楽に親しみ、武蔵野音楽大学声楽科に入学。ポップスとオペラを融合させた“ポップオペラ”という新しいスタイルを確立し、2008年にデビュー。12年のシングル「未来の僕らへ」がテレビ東京のアニメ「新テニスの王子様」のオープニングテーマに。16年、アルバム「MESSAGE」がビルボードジャパン・クラシック部門で2週連続1位になる。来年1月には「藤澤ノリマサ 15th Anniversary Concert~eternità~」を開催。東京公演(7日、紀尾井ホール)と大阪公演(20日、住友生命いずみホール)が行われる。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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