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「天才じゃないから」。「土佐兄弟」を衝き動かす覚悟

中西正男芸能記者
「土佐兄弟」の土佐卓也さん(右)と土佐有輝さん

土佐卓也さん(33)と土佐有輝さん(26)の兄弟コンビ「土佐兄弟」。19年からSNSで発信している有輝さんの“高校生あるある”動画で注目を集め、今は多くのレギュラー番組を抱えていますが、今春から新たにコントに取り組み始めました。新たな一歩を踏み出す意味。そして、一歩を踏み出し続ける意味。「天才じゃないから」という言葉に込めた覚悟とは。

コントを初めて見えた景色

卓也:2カ月ほど前からですかね。初めて、コントをやりだしたんです。

これまでは舞台でやるネタといえば漫才だけだったんですけど、僕らがテレビなどでお仕事をいただけるようになったきっかけが有輝の“高校生あるある”で、そこではもちろん高校生でもない有輝が高校生役をやっている。実は、それがもうコントだったよなという話にもなったんです。

素の自分たちに近い形で舞台に立つ漫才じゃなく、何かを演じるコントの方が本当は向いてるんじゃないか。そんな思いから、コントと向き合ってみようとなったんです。

有輝:7年間漫才をやってきて、賞レースだとか、ネタでは何の結果も出せていない。その時点で、本当は何かを大きく変えないといけなかったんだとも思うんですけど、そこまでやってきてしまうと、妙な感じで変化を恐れるというか、今よりももっと失敗したらイヤだなとか、そういう感情が出てくるんです。

感覚としては、サッカー部から野球部に移るみたいな感じですかね(笑)。なんとなく、野球の方が結果が出るんじゃないかなと思いつつ「もう何年もサッカーをやってるしな…」と思ってそこにとどまるというか。

卓也:この世界に入った頃は、むしろコントをやろうと思っていて「『バナナマン』さんみたいになりたい」と言ってたんです。

ただ、養成所のネタ見せの時に「せっかく兄弟なんだから、兄弟を生かした漫才を作った方がいい」と言われて、そこから漫才のルートに入って、今に至るという流れなんです。

さっきの有輝の話でいうと、サッカーをやりながら家に帰ったら野球ゲームばっかりやってるみたいな感じで(笑)、コントへの思いもあったんです。でも、漫才をやってきたので「どうやったら大人たちにバレないようにコントっぽいものをこっそりできるか」を具現化したのが“高校生あるある”なんですよね。

兄弟という縛り

有輝:そうやって、舞台での本ネタという形ではなく、SNSでライトな感じで始めたら、それがすごくたくさんの方に見てもらえた。そこで、ハッと気づいたんです。「気にしてたのは自分たちだけだ」と。

僕らが漫才やろうが、コントやろうが別に周りは気にしてないし、面白いと思ったら見てくださるし、そうじゃなかったら評価されない。極めてシンプルな事実があるだけで、変にこだわっていたのはこちらだけだったんだなと。

そこからネクタイの色一つでも、これまではいろいろ考えまくって決めてたんですけど、僕らが何色のネクタイをしていても、実際の話、一部の人が「あ、ネクタイ変わったかな」と一瞬思うくらいで、自分らが気にしていたことは、良い意味で、実はそんなに大きなことじゃない。

気づいてしまえば「そりゃ、そうだよな」と思うことなんですけど、そういうシンプルなことだからこそ逆に気づきにくいというか。

そして、コントもやるようになって、漫才がメチャクチャ楽しくなりました。コントをやって身につけたちょっとした表情の作り方なんかが漫才にも反映されてますし。漫才の活性化みたいなことにもなっているなと。

卓也:それとね、コントをやることで、これまでいかに“兄弟”という要素に縛られてきたかも痛感しました。この前も、コントのネタ作りをしてたんですけど、コントって本当に何をやってもいいんですよね。その感覚が本当に新鮮で。

漫才ももちろん台本があるんですけど、現実世界から近いところからスタートすることが多いので、僕らだったら、兄弟というスタートラインから始まるんです。なので、そこから兄弟ならではのネタを広げがちなんですけど、コントはそのスタートラインの形が無限にありますから。

今はまだ始めたばかりなので、お客さんの前でできるネタも限られてるんですけど、この感覚にここで出会えたことはすごく意味のあることだと思っています。

もちろん、これまで漫才をやってきたことにも大きな意味がありますし、漫才をやっていたからテレビ番組の前説にも呼んでいただけたし、それが今のお仕事につながっている部分も多々あります。

有輝:なので、これまでもこれからも漫才はとても大切なものなんですけど、SNSの動画、そこからコントで得た感覚も大事に育てていければなと思っているんです。

天才ではない

有輝:僕らは他の皆さんと違って「M-1グランプリ」で優勝したわけでもないですし、王道的に真っすぐ世に出てきたコンビではないんです。SNSで他より少し早く発信をしたり、そこに力を入れたりという行動力で皆さんに知ってもらってきました。

だから、ここから何年経っても、拒絶反応を起こさずに誰よりも早く飛びつく。そのフットワークと思い切りを保っていられる自分たちでいたいなと思っています。

僕らは、天才じゃないですから。才能がめちゃくちゃあるコンビではないし、天才じゃないから、早さと思い切り。ここで負けたらもうダメだなと

卓也:そのために常にインプットも必要だし、動きが鈍らないようにしておく意識のメンテナンスみたいなものも大事だなと思っています。

動画の編集もするので、そこの技術も勉強していかないといけませんし、昔はアニメとかゲームに一切触れなかったんですけど、遅ればせながらNintendo Switchも買いました(笑)。

有輝:ここに来てのNintendo Switchはかなりの遅ればせですけど(笑)、そうやって常に進み続けようとする。しかも、できるだけスピーディーに。その意識だけは、この仕事を続ける限り、持ち続けたいと思っています。

(撮影・中西正男)

■土佐兄弟(とさきょうだい)

1987年9月28日生まれの土佐卓也と94年12月15日生まれの土佐有輝の兄弟コンビ。東京都出身。卓也が大学卒業後に勤めていた会社を辞め、有輝に声をかけて2013年、ワタナベコメディスクールに18期生として入学。14年からワタナベエンターテインメントに所属。19年後半頃より、有輝が演じる「高校生あるある」動画がTikTokを中心に大ヒットし、フォロワー数110万人以上の有輝のTikTok動画総再生回数は7億回を突破している。YouTubeチャンネル「土佐兄弟の青春チャンネル」登録者数46万人。テレビ朝日「あるある土佐カンパニー」、フジテレビ「千鳥のクセがスゴいネタGP」、文化放送「土佐兄弟のCultureZ」などに出演中。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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