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後前杏奈が母・畑中葉子に初めて明かす“本当の思い”

中西正男芸能記者
畑中葉子(左)と長女でタレントデビューした後前杏奈

 故平尾昌晃さんとのデュエット曲「カナダからの手紙」(1978年)などで知られる歌手の畑中葉子さん(60)。今年4月には長女の杏奈さん(27)が畑中さんのヒット曲にちなんだ芸名・後前(うしろまえ)杏奈としてタレントデビューしました。中学時代の不登校、そして、今もジュエリーショップ勤務と芸能界の二足のわらじを履く理由。これまで親子の中でも言葉が交わされていなかった領域にまで話が及び、秘めた思いを互いに贈りあうインタビューとなりました。

4月からタレント活動

杏奈:4月から芸能界のお仕事を始めて、今で2カ月弱くらい。こんなにたくさんお仕事を入れていただけるとは思ってなくて、皆さんにただただ感謝です。大学を出てからジュエリーショップで働いていて、今も、週5日はフルでジュエリーショップのお仕事をやりながら、休みの日に芸能のお仕事をさせてもらう形でやっています。

畑中:私が今所属している事務所の社長さんが杏奈と会ってくださったのが、芸能のお仕事をさせてもらうきっかけでした。

杏奈:子供の頃、モデルになりたいという思いはあったんです。ただ、身長が低くて、その道はあきらめていたんです。ただ、先日、母のライブがあって、そこで初めて事務所の社長さんとお会いしまして。そこで、今でも芸能界への思いはあるということをお伝えしたら「じゃ、やってみる?」という感じで(笑)。

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先輩として、母として

畑中:同じように芸能界の仕事をするとなると、いろいろ考えるところも、私は正直あるんです。私は小さな頃から「歌手しかない、歌手しか目標がない」という人間だったので、のほほんと仕事に対峙することへのイライラみたいなところもあるのはあるんです。私自身が、全ての時間、全ての力を芸能界でやっていくための勉強に傾けていただけに、そういう部分も必要じゃないのかなと思います。

杏奈:もちろん、母の言うことも分かるし、厳しい世界だというのも分かるんですけど、ジュエリーショップの仕事も大好きで、モチベーションにもなっています。どっちも大切なんです…。

畑中:今の子ですよねぇ(笑)。それも彼女の個性なんだろうし、それをつぶしてもいけないのかなと。ただ、この世界に食らいついて、何としてでもこの世界で生きていこうと思っている人はたくさんいますので、もう少しアピールをしてもいいのかなと。

母の盾

杏奈:やっぱり母の言葉は重みがありますし、この前(日本テレビ)「有吉反省会」に出演させてもらった時も、周りの方々がとても気を使ってくださると言いますか、母にすごく丁寧に挨拶をしてくださっていて。そういったところを見ると「そんなにすごい人だったんだ…」ということを思いましたね(笑)。

畑中:そんなところで思ってくれたの?(笑)

杏奈:あと、これはなんというのか、言葉にするのは難しいんですけど、母がいるから守られているというか。周りの方も遠慮というのとも違うんでしょうけど、なんとなくこちらを大切にしてくださるというか…。そういう“母の盾”みたいなところを感じたりもしました。

畑中:それでいうと、私は“平尾先生の盾”をすごく感じましたね。いきなり「カナダからの手紙」がヒットして、面白くない人もたくさんいたと思うんです。ただ、私のところにそういったネガティブな矢が飛んでこなかったのは、平尾先生という存在があったからだろうなと。ただ、どんなことでも、プラスとマイナスがありますからね。逆に、ある種の壁があって、同世代の新人さんと仲良くなれなかったりということもありました。これは、子どもに対する親の影響という部分でも言えることなんでしょうけどね。

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中学時代の不登校

杏奈:こんなところで言っちゃっていいのか分かりませんけど、母のツテであこがれていた芸能人に会えたとか、それは分かりやすいメリットでした(笑)。ただ、母の娘ということで、道を歩いていたら、いきなり知らない男の人から「畑中さんの娘さんだよね?」と尋ねられたりしたこともありました。

畑中:…え、そうなの。そこまでのことがあったとは知らなかったです。そう思うと、本当に良いことばかりじゃなくて、むしろ大変なことの方が多い。彼女は中学3年間、不登校になってほとんど学校に行かなかったんです。そこにも、知らないうちにいろいろな重荷を背負わせてしまっていたことが関係していたのかなと思います。

杏奈:これが不登校のきっかけになったという明確なことがあるわけではないんです。確かに、小学校の頃にいじめられたりということもありましたけど、それが原因ということでもなく、とにかく学校に行きたくない、行けない状況になっていったんです。

畑中:カウンセラーの先生に相談に行った時に言われたんです。「学校に行かせないか、娘さんを亡くすか、どちらかだと思ってください」と。その言葉を言われた瞬間は「え、そこまで考えないといけないことなの?」と驚きもしたんですけど、その先生にそこまでの意識をもらえたから良かったと思うことが多々ありました。

杏奈:小学校高学年の頃は、教室で後ろの方の席にしてもらったら、まだ大丈夫だったんですけど、そのうちにもっとしんどくなって保健室じゃないと居づらくなったり。中学になってからは、本当に学校に行けなくなりまして…。

畑中:彼女に話を聞くと「校舎が圧迫してくるような感覚がある」と。ただ、私自身はそういう経験がなかったし、学校には行くものだと思っていたので、なかなか理解ができなかったんです。ただ、そのカウンセラーの先生の言葉を聞いて、家に帰って「学校、行かなくてもいいんだよ」と言ったら、その瞬間、娘がワーッと涙を流したんです。それだけ心にたまったものがあったんだろうなと。

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秘めてきた思い

杏奈:親にも言ったことはなかったんですけど、実は、中学で不登校になったことに対して、負い目というか、親に申し訳ないという思いがありまして…。本当の思いとして。何とか頑張らなきゃいけない。高校に行って、大学に行って、仕事に就くといういわゆる“普通”にならないといけない。そんな思いがずっとあって。だから、頑張って大学にも行きましたし、今、ジュエリーショップに採用されて仕事ができているのもうれしいし。そんな思いもあって、今もジュエリーの仕事と芸能界を両方させてもらうことに私はこだわっているんです。そんな甘いものじゃないと言われる方もたくさんいらっしゃるでしょうけど。

畑中:そうだったのね。芸能界の先輩としては、歯がゆいところも多々ありますけど、母親としては、また別のことを考えるところもありまして。私、今年4月で60歳、還暦を迎えました。意外と人生って短いものだなとも思うようになって…。そう考えると、やりたいことがあるなら、何歳からでもやったらいい。できるところまでやったらいい。そんな二つの思いが事実として私の中にあるんです。

杏奈:今でもゲームやアニメが私は大好きなので、今後、もしお話をいただけるなら、アニメの声優さんだとか、そういうお仕事ができたらいいなと思っています!

畑中:こういうことがすんなり言えるのが、やっぱり今の子ですね(笑)。ま、私が直接力を貸すというか、私ができる範囲で後押しするのは今回のデビューまで。あとは、自分の人生を自分で選んでいってほしいと思います。本当に、そう思います。

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(撮影・中西正男)

■畑中葉子(はたなか・ようこ)

1959年4月21日生まれ。東京都八丈島出身。平尾昌晃歌謡スクールでレッスンを重ね、78年に平尾さんとのデュエット曲「カナダからの手紙」で歌手デビュー。同年のNHK紅白歌合戦にも出場する。80年、にっかつロマンポルノ「愛の白昼夢」「後から前から」に出演。自らが歌った映画主題歌「後から前から」も大ヒットする。音楽ディレクターとの結婚・離婚を経て、91年に一般男性と再婚。同年に長女(杏奈)を、93年には長男を出産する。現在、芸能事務所・ラフィーネに所属。6月3日発売の「週刊ポスト」に袋とじ還暦ヌードグラビアが掲載される。

■後前杏奈(うしろまえ・あんな)

1991年10月23日生まれ。東京都出身。神奈川大学法学部卒。身長148センチ、体重36キロ。ジュエリーショップに勤務しながら、今年4月からタレント活動を始める。日本テレビ系「有吉反省会」などに出演。アニメ、ゲームなどサブカルチャーに造詣が深い。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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