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タイランドドリームを実現した男・ぼんちきよし

中西正男芸能記者
タイで“住みますアジア芸人”として活躍中のぼんちきよし

 「ピース」綾部祐二さんがアメリカンドリームを狙って新たな領域に飛び込むずっと前に、タイランドドリームを実現させたのがぼんちきよしさん(41)。2015年から、吉本興業のアジアプロジェクト「住みますアジア芸人」の1人としてタイに渡りました。ネズミに足を噛まれて50針縫う、コントで使う吹き矢で国境警備隊に拘束されかける、出演ギャラがアヒルのくちばしのから揚げ…などなど、数々のハプニングを経験しながらも、昨年はタイ全土で放送されるCMに出演し、都心の超高級コンドミニアムを手に入れるまでになりました。学生時代は名門・啓光学園(現・常翔啓光学園)高校ラグビー部で活躍したラガーマンでもありますが、持ち前の体力と根性で「まだ道半ば。まずはタイの隅々まで知って、日本とタイの懸け橋になりたい」と夢を語りました。

ラストチャンスやと思って

 タイに渡って3年目です。やっと地に足がついてきましたけど、最初は大変でした。

 タイとのご縁は吉本のアジアプロジェクトが始まるもっと前からで、6年ほど前になりますかね。タイ古式マッサージの資格を取るために何回も現地に足を運んでいたんです。

 というのも、啓光学園ラグビー部時代から、言うても、練習で体がヘトヘトになるんで、独自にマッサージはやってまして。それを芸人になってからも坂田利夫師匠ら多くの師匠方にさせてもらって「きよし、お前、マッサージうまいなぁ」と言われる中で、じゃ、やるならば本格的にやってみようと。そんな流れで、タイにも頻繁に行くようになり、向こうで単独ライブをやったりしてたんです。

 そんな中、それまで組んでいたコンビ「つばさ・きよし」を解散することになり、何の流れか、“住みますアジア芸人”のプロジェクトがあると。妻と2人の娘、そして、師匠のぼんちおさむにも相談して、ラストチャンスやと思ってオーディションを受けました。

アリやネズミに足を噛まれても…

 実は、その頃は、大阪の天下茶屋というところにマッサージ店をオープンさせまして、そのお店も順調な時期やったんです。いろいろな方から「マッサージのツボは分かるのに、お笑いのツボは分かってない」と言われてもいたものの(笑)、芸人とマッサージ、二足のわらじで相乗効果も生んで、決して悪い状況ではなかった。でも、でも、やっぱりお笑いで勝負したい。そう思って、人生をタイにかけてみたんです。

 ただ、タイには何回も行ってるものの、旅行というかピンポイントで行くのと、そこにガッチリ住むというのでは全く違うことを思い知りました。最初に住んだアパートは、激痛で目が覚めました。タイの中のスラム街みたいなところにあるところで、とにかく汚いんです。夜に「なんや、これは!?」とびっくりして足を見たら、信じられないくらい巨大なアリの大群に足を噛まれているんです。また、このアリがいくら駆除しても、駆除しても、また出てくる。これは寝られませんよ…。

 アリだけじゃなくて、ネズミに足を噛まれて50針縫ったこともありました。飛び込みで営業をかけて出演したイベントのギャラが、アヒルのくちばしのから揚げということもありました。

お茶漬けがおいしかった

 コミュニティーFMみたいなところでのラジオの仕事をもらった時は、そのスタジオが水上バスでしか行けない場所で、ギャラが1回日本円で150円。水上バスの運賃が片道90円で往復180円。行けば行くほど赤字がかさむという仕事もありました。

 食べるものにも困る中、どうしても日本の味が食べたいと思って日本からお茶漬けのもとを送ってもらったけど、アリに噛まれるアパートにはキッチンもないし、お湯も沸かすことができないし、器もなかった。なので、屋台で売っているご飯を買って、コンビニのビニール袋を器代わりに、そこにご飯、お茶漬けのもと、コンビニのお湯を入れて、ビニールの端を歯で噛みちぎりながらお茶漬けをすするということもやってました。コンビニの前を通るタイの人から、これ以上ない「なんやねん、コイツ…」という白い目で見られましたが、そのお茶漬けはムチャクチャおいしかったです。

 おかげさまでというか、日本にいた時の85キロから72キロまで一気に痩せました。

エアコンのCMに起用された

 ただ、もうタイに来てますし、日本でのすべてをリセットして、家族にものすごく無理を言って勝負に出てますから。「売れたい」ではなく「売れるしかない」。毎日早起きして言葉の勉強をしながら、忍者のコントを作って、それを持って企業イベントなどに売り込みに行ったんです。そうしたら、それが少しずつ広がっていって、注目されるようになった。そして、ご縁がつながって、昨年にはタイ全土で流れる三菱電機のエアコンのCMに起用していただけるようになったんです。

 ありがたいことに、道で声をかけていただくことも多くなって。仕事でタイに来た宮川大輔さんと一緒にバンコクを歩いてると、大輔さんが「お前ばっかり声かけられるやないか!!」と(笑)。大輔さんのすごいのは、そこで自分が出演している番組を道行く人に携帯電話で見せながら「これ、オレ、オレ!!」とアピールされていて、アグレッシブさを勉強させていただきました(笑)。

タイと日本の懸け橋に!

 これも、本当にありがたいことなんですけど、家の変遷でいうと、最初の巨大アリのアパートから、郊外やけど何とかキッチンとかもあるアパートに移って、そこから今のプール・ジムつきのコンシェルジュの方が常駐してくださっているコンドミニアムになりました。

 ただ、まだまだ道半ば。今やっているのは、タイの全てを知ろうと。タイは日本の国土の約1.5倍。全77県あるんですけど、そこを全部回って、隅々まで情報を集めるという旅を続けてるんです。全てを知らないとホンマの話はできないなと。今は77県のうち50県までは回りました。

 少しずつ始めているんですけど、日本からタイに行こうと考えている方にナマの現地の情報をお伝えする。また、日本に行こうと思っているタイの人に日本のきめ細やかな情報をお伝えする。どちらも本当に、本当にいい国です。だからこそ、おこがましいですけど、その懸け橋にちょっとでもなれたらなと。

 やっぱりこれだけどっぷりタイにいたら、顔も日に日に“タイ仕様”になっているみたいで。この前、久々に大阪に戻って娘と会ったら、これ以上ないというくらいに他人行儀な会釈をされました(笑)。

■ぼんちきよし

1976年2月29日生まれ。大阪市出身。本名・佐藤協相(さとう・きよし)。学生時代はラグビーに打ち込み、啓光学園高校(現・常翔啓光学園)時代にはフランカーのポジションで活躍する。94年にぼんちおさむに入門し、2000年に大木こだまの弟子の大木つばさ(現在は引退)と漫才コンビ「つばさ・きよし」を結成。コンビ解散後はピン芸人として活動する一方、マッサージ店「ほぐし屋きーぼー」もオープン。経営も順調だったが、2015年に吉本興業のアジアプロジェクト「住みますアジア芸人」の一員としてタイに移住した。家族は妻と2人の娘。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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