Yahoo!ニュース

悪夢の原因は「シンプルにデリケート」? 負傷続きのセンシ、EURO前再離脱で恋人は揶揄に怒り

中村大晃カルチョ・ライター
5月23日、セリエA最終節ウディネーゼ戦でのセンシ(写真:Maurizio Borsari/アフロ)

歯車が狂い出したのは、ユヴェントスとのビッグマッチだった。

新生インテルの中盤で躍動し、大きな脚光を浴びていたステーファノ・センシは、2019年10月6日のセリエA第7節ユヴェントス戦で太ももの筋肉を負傷。途中交代と戦列離脱を余儀なくされた。

それまでの6試合で3得点・4アシストを記録し、チームをけん引していたセンシは、あのアンドレス・イニエスタとも比較されるほど高い評価を受けていた。だが以降、その輝きは失われている。復帰しては負傷で再離脱を繰り返しているからだ。

この2年弱、センシは蟻地獄に陥ったかのように、ケガの悪夢に苛まれている。

ユヴェントス戦以降の昨季のリーグ戦では、31試合のうち23試合を欠場。チャンピオンズリーグ(CL)とヨーロッパリーグ(EL)の10試合でも5試合を欠場した。41試合のうち、出場したのは7試合だけだ。復活が期待された今季も、悪夢は終わらなかった。リーグ戦出場は18試合。公式戦で合計21試合出場、プレー時間は635分。ゴールはない。

『コッリエレ・デッラ・セーラ』紙によると、インテル加入以降、センシは9回の筋肉の負傷で218日間の離脱を強いられてきた。

同時期に加入し、歳も近く、同じイタリア人であるニコロ・バレッラは、インテルでの2年間で飛躍的な成長を遂げ、クラブとイタリアを代表する選手となった。そのバレッラがまだ頭角を現す前に賛辞を集めていたセンシは、対照的に存在感を失っている。

それでも、イタリア代表のロベルト・マンチーニ監督は、まもなく開幕するEURO2020にセンシを招集したが、一部から疑問の声も寄せられた。アタランタの躍進に貢献したマッテオ・ペッシーナや、今季の公式戦で50試合出場・12得点を記録したマッテオ・ポリターノが外れ、今季無得点のフェデリコ・ベルナルデスキと、満足に稼働できなかったセンシが選ばれたからだ。

そして、マンチーニの決断は裏目に出た。6月3日の練習で、再び太ももの筋肉を痛めてしまったからだ。EURO出場は難しいとみられ、マンチーニはペッシーナを代わりに呼ぶとみられている。

SNSでは、センシを揶揄する声もあるようだ。それを受けてか、恋人は怒りをあらわにしている。報道によると、「どうして一部の人がこうも愚かで、無礼で、無神経で、悪質で、敬意を払わず、信じられないほどに無知でいられるのか、本当に理解できない」と投稿した。

「自分たちがどれほど愚かなのか気づけるように、あなたたちが2倍に同じ扱いを受けることだけを願っている」

ピッチで活躍すれば、愚かな言葉を投げかけてきた者を見返すこともできる。だが、ピッチに立てないだけに、選手の精神的打撃はなおさらだ。

その点で、『コッリエレ・デッラ・セーラ』の報道は気になるところだ。箇所が異なる負傷の繰り返しは、トレーニングの負荷が原因ではないという。同紙は「シンプルにデリケートな選手なのだ」と伝えた。才能は確かながらケガにキャリアを狂わされたジュゼッペ・ロッシとの比較にも触れている。

センシは輝きを取り戻せるのか。インテルはアントニオ・コンテが退任し、新たにシモーネ・インザーギが新監督に就任した。これを機に、狂った歯車が再びかみ合い出すのを願うばかりだ。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

中村大晃の最近の記事