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「ピルロがディバラを手放すか?」 ユヴェントス、再び背番号10の放出説浮上で論争

中村大晃カルチョ・ライター
8月1日、セリエA優勝セレモニーでのディバラ(写真:ロイター/アフロ)

本当に、昨夏の繰り返しとなるのだろうか。

マウリツィオ・サッリを解任し、アンドレア・ピルロを新たに指揮官としたユヴェントスが、パウロ・ディバラを放出するかもしれないという。

背番号10を纏う“宝石”(ディバラの愛称)は、昨年の夏もプレミアリーグ移籍が取りざたされた。それでも本人は残留を望み、シーズンが進むにつれてクリスティアーノ・ロナウドとの連携を深め、セリエAの年間MVPに選出されるまでの活躍を見せたのは周知のとおりだ。

だが、『ガゼッタ・デッロ・スポルト』などは、この夏もユヴェントスはディバラを手放すかもしれないと報じた。まだ売却リストに載せたわけではなく、交渉もないとしたうえで、可能性を伝えている。

◆なぜ、売るのか

ユーヴェがディバラを売るとしたら、理由はやはり、新型コロナウイルスによる経済的打撃だ。

9年連続スクデットの偉業を達成したが、最優先目標のチャンピオンズリーグ(CL)でベスト16敗退に終わったユヴェントスには、やや閉塞感がある。“長老”たるベテランたちは絶対不可欠だが、一定の世代交代が必要だ。

期待されていた一部選手も、あまりインパクトを残せていない。『ガゼッタ』のアンケートでは、フェデリコ・ベルナルデスキやゴンサロ・イグアイン、アーロン・ラムジーらが厳しく評価されている。

8月13日付『ガゼッタ・デッロ・スポルト』参照、筆者作成
8月13日付『ガゼッタ・デッロ・スポルト』参照、筆者作成

改革の必要性を問う『ガゼッタ』のアンケートでも、約8割のサポーターが「イエス」と答えた。

だが、コロナ禍で資金が問題になるのは避けられない。そこで浮上するのが、ビッグネームの売却だ。そして、現在のユーヴェで超高額オファーを期待できるのは、C・ロナウドとマタイス・デ・リフト、そしてディバラしかいない

サラリーで他を圧倒するC・ロナウドを手放せば、支出を減らすには手っ取り早い。『コッリエレ・デッロ・スポルト』も、売るならディバラよりC・ロナウドの方が得と指摘した。だが、C・ロナウドの売却は、チャンピオンズリーグ(CL)敗退後にアンドレア・アニェッリ会長が「大黒柱」と否定している。

また、21歳になったばかりと将来があるデ・リフトも、アンタッチャブルな存在だ。すると、残るはディバラしかいない。もちろん、ディバラもユーヴェにとって必要不可欠な存在だ。少なくとも、ファンはそう考えている。『ガゼッタ』のアンケートでも、「ディバラとデ・リフト、どちらが売却不可能か」との問いに、約6割がディバラと回答した。

ただ、ユーヴェがディバラ放出を辞さないことは、1年前に分かっている。加えて、現在ディバラとは契約延長を交渉中だが、選手サイドは1000万ユーロ(約12億6000万円)超のサラリーを要求しているとみられ、クラブの負担が増す見込みだ。

◆条件次第で売却容認派も

実際、『ガゼッタ』アンケートでは、すべてのファンがディバラ放出に反対しているわけではない。6割強が断固反対という姿勢だが、売却資金を補強に費やすことを条件に認めるファンと容認派を合わせると、35%には達する。

8月13日付『ガゼッタ・デッロ・スポルト』参照、筆者作成
8月13日付『ガゼッタ・デッロ・スポルト』参照、筆者作成

OBの間でも意見は分かれる。ズビグニェフ・ボニエクは、『ガゼッタ』でディバラを「あの役割では世界でもトップ3に入る」と称賛。経営面を意識することに理解を示し、100%反対ではないとしつつ、「私ならディバラと続けるためにできる限りをする」と述べた。

ボニエクは26歳のディバラがこれから全盛期だと指摘。さらに、売る場合はメガクラブしか選択肢がなく、直接のライバルを強化することにもつながると懸念を示した。

一方で、マッシモ・マウロはCL敗退への怒りを強調。リヨンとのファーストレグでのディバラを批判し、「良いビジネスなら、なぜダメなんだ?ユーヴェには取引を検討する権利と義務がある。売却不可能は存在しない」と、条件次第で放出するのは当然と主張している。

ファビオ・リカーリ記者は、『ガゼッタ』で「エレガンスとサッカーIQのシンボルであるピルロの最初の一手が、最も美しい選手を厄介払いすることだとは想像できない」と記した。

一方で、同記者は「何よりも困惑は、ユーヴェがベストの選手を売却するようになるということ」だとし、例えば「インテルがロメル・ルカクを売却して収益増を狙うようなもの」と、ビッグクラブにふさわしくないと訴えている。

◆補強ポジションは明白

また、リカーリ記者は「明確かつ断固たるアイディアですぐに取り組むべき」と、ユヴェントスの問題が中盤とも指摘した。『ガゼッタ』のアンケートでも、ユーザーが望む補強必須ポジションは中盤だ。

8月13日付『ガゼッタ・デッロ・スポルト』参照、筆者作成
8月13日付『ガゼッタ・デッロ・スポルト』参照、筆者作成

ユヴェントスはすでにデヤン・クルセブスキとアルトゥールの加入が決まっている。それでも、シーズンを通じて批判されてきた中盤のさらなる強化を求める声は少なくない。『ガゼッタ』アンケートでも、大型補強をするなら「ポール・ポグバのようなMF」との回答が最多だった。

8月13日付『ガゼッタ・デッロ・スポルト』参照、筆者作成
8月13日付『ガゼッタ・デッロ・スポルト』参照、筆者作成

その中盤補強にユヴェントスは動くのか。その場合の資金を、ディバラ売却でねん出するのか。ネットでは、早くもファンの議論が白熱している。この夏のマーケットは、10月5日までの予定だ。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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