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セリエAで得点3位、失点5位の4連勝アタランタ 5人の「賢者」は欧州復帰を後押し

中村大晃カルチョ・ライター
11月11日、セリエA第12節でインテルに勝利したアタランタ。V字回復で現在8位(写真:ロイター/アフロ)

イタリア屈指の選手育成力を誇るアタランタは近年、若き才能を輩出するだけにとどまらず、欧州の舞台にも立つほどの躍進を遂げている。

2016-17シーズンのセリエAで旋風を巻き起こし、クラブ史上最高の4位フィニッシュを果たしたアタランタは、翌シーズンのヨーロッパリーグ(EL)でエヴァートンやリヨンといった欧州常連組も撃破。敗れはしたが、ボルシア・ドルトムントとのラウンド32で善戦したのは記憶に新しい。

◆EL敗退に沈むもV字回復

欧州と国内の両立を図り、昨季も7位でシーズンを終えたアタランタは、今季も予選からELの舞台に登場。プレーオフまで勝ち進んだが、コペンハーゲンにPK戦の末に屈し、惜しくも2年連続のEL本大会出場を逃した。

“コペンハーゲン・ショック”の影響や負傷もあり、アタランタは今季のセリエA第2節から不振に陥る。7試合白星から遠ざかり(3分け4敗)、10月のインターナショナルウィークを迎えたときには、降格圏すれすれの17位まで転落した。

だが、それから1カ月半でアタランタは見事に復活した。キエーヴォ、パルマ、ボローニャと下し、前節はついに強豪インテルも沈めた。それも、7連勝と絶好調だった優勝候補の一角を相手に、見事なパフォーマンスを見せての4-1という快勝だ。

12節を消化したセリエAで、アタランタは8位に浮上している。得点23はユーヴェ、ナポリに次ぐリーグ3位、失点14はリーグ5位タイ。EL出場ラインには、勝ち点1差まで迫った。

◆3年連続で欧州の舞台へ?

ロベルト・ガリアルディーニ(インテル)、フランク・ケシー(ミラン)、アンドレア・コンティ(ミラン)、マッティア・カルダーラ(ミラン)、レオナルド・スピナッツォーラ(ユヴェントス)と、この2シーズンで主力を相次いで引き抜かれながらも、健闘を続けるアタランタを評価する声は少なくない。

11月23日付の『ガゼッタ・デッロ・スポルト』では、かつてアタランタを率いた指揮官たちが古巣に言及し、それぞれ欧州への切符を得るにふさわしいと称賛した。

『ガゼッタ』が「5人の賢者」と称したのは、チェーザレ・プランデッリ、アンドレア・マンドルリーニ、エディ・レヤ、ルイジ・デルネーリ、デリオ・ロッシだ。

プランデッリは「絶対に目標とすべき」、デルネーリは「義務」と、欧州を狙うのは当然と評価。レヤも出場を競うのは「確実」とし、ロッシはそのための「すべてを備えている」と賛辞を寄せた。一方、マンドルリーニはEL出場が可能としたうえで、「とらわれてはいけない」ともつけ加えている。

◆ガスペリーニには賛辞の嵐

アタランタを現在の躍進に導いたのが、2016-17シーズンから指揮を執るジャン・ピエロ・ガスペリーニだ。インテルで苦しんだものの、その後徐々に評価を取り戻していった指揮官に、先人たちも賛辞を寄せた。

プランデッリは「哲学と勝利への飢えが素晴らしい」と述べ、デルネーリは「グループを何よりも優先させ、修正はするがコンセプトは変わらない」と評価する。

また、マンドルリーニは「すべての選手が完璧にやるべきことを分かっている」と、そのコンセプトを浸透させる力もあるとし、ロッシも「選手たちがすべてにおいて彼についていっている」と続いた。

レヤに至っては「素晴らしい監督で、アタランタにとって完璧」と大絶賛だ。

◆待っているのは「確かな未来」

もちろん、シーズンは長い。実際にアタランタが再び欧州へのチケットを手にすることができるかは、まだ分からないだろう。

ただ、プランデッリはアタランタには「確かな未来」があるという。「革新的な計画を持つアバンギャルドなクラブで、全員が同じ方向を目指している」からだ。デルネーリも「年を経て、メンバーが代わっても、アタランタは残る。これをプロジェクトというんだ」と話した。

「哲学が変わらない」と指摘するロッシは、「ピッチでの成功は遠いところから始まる」と述べている。欧州の舞台に立つかどうかによらず、アタランタには多くのクラブが参考にできる点があるのではないだろうか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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