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理想追うナポリへの期待高まるも、根強い「優勝候補はユヴェントス」の声

中村大晃カルチョ・ライター
ユーヴェの10番を継承したパウロ・ディバラはスーペルコッパで2得点(写真:ロイター/アフロ)

現地時間8月19日に開幕する2017-18シーズンのセリエAで、優勝を争うとみられているのが、初日に登場する王者ユヴェントスと昨季3位のナポリだ。後者が前者の覇権に終止符を打つとの見方も出てきているが、一方で7連覇を目指すユーヴェの有利は変わらないとの声もある。

イタリア『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は18日、全チームの順位予想で、前人未到の6連覇を成し遂げた王者ユーヴェを2位と予想した。優勝候補に挙げたのは、1990年を最後にスクデットから遠ざかっているナポリだ。近年のユーヴェの強さを考えれば、驚きの予想と言えるだろう。

◆評価される魅力的なサッカー

ナポリの評価が高いのは、マウリツィオ・サッリ監督が「イタリアで最も美しい」との呼び声も高い魅力的なサッカーを展開しているからだ。しかも、今夏のナポリは大きな補強に動かず、主力を全員残留させた。サッリのサッカーを理解するメンバーでさらに磨きをかける継続路線を選んだのだ。

結果が何よりも重視されるイタリアにおいて、魅力的なサッカーでタイトルを目指すのは理想を追い求めるのに近い。それも、ビッグネームを獲得せず、既存メンバーを中心としたチームづくりでそれを目指すとなれば、もはや夢物語に近いとも言える。だからこそ、ナポリへの期待も小さくない。

実際、今のナポリにはそれだけの力があるとも言える。16日のチャンピオンズリーグ予選プレーオフでも、ニースを圧倒して2-0と快勝。決定力不足は気になったが、近年のイタリア勢が苦手としていたCL予選突破が期待される。

◆武器を失い不安視される王者

対照的に、王者ユーヴェの評判は芳しくない。特に懸念されているのが、ダニエウ・アウベスに加え、レオナルド・ボヌッチまで去った守備陣。これまでユーヴェ最大の武器だったディフェンスだが、プレシーズンマッチから失点の多さが指摘されている。

攻撃陣にはドウグラス・コスタやフェデリコ・ベルナルデスキが加わった。中盤でもブレーズ・マテュイディを獲得している。伝統の背番号10を託されたパウロ・ディバラは、13日のスーペルコッパでいきなり2得点と、早くも期待に応えた。

だが、直後の失点でラツィオに2-3と敗れたのも事実だ。ジュゼッペ・マロッタCEOはユーヴェが優勝候補だと強調したが、マッシミリアーノ・アッレグリ監督は初戦を前に「必ず勝てると思ってごう慢に開幕へと臨めば、優勝候補ではなくなる」と気を引き締めている。

◆それでも「ユーヴェ有利」?

こういった状況から、ユーヴェ時代の終えんとナポリ優勝という予想が出てくるのも不思議ではない。だがそれでも、ユーヴェを推す声は根強い。

例えば、OBのアレッサンドロ・デル・ピエーロは、『コッリエレ・デッラ・セーラ』で「信じてくれ。優勝候補はユーヴェで変わらない」と述べている。

また、元イタリア代表監督のアッリーゴ・サッキも、『ガゼッタ』で優勝候補がユヴェントスなのは「疑いない。経験、歴史、クラブの運営能力から上回っている」とまで断じた。

ジャーナリストのアレッサンドロ・ヴォカレッリも、『コッリエレ・デッロ・スポルト』で「ユーヴェのサイクルが終わったと性急に断じ、優勝候補から外す」声を一蹴。「実際には当然、ユーヴェは優勝候補だ」と主張している。

それぞれ共通しているのが、ナポリとサッカーを称賛している点。サッキに至っては、昨季後半戦のナポリが、かつて自身が率いた黄金期のミランを思い起こさせたほどだとサッリを絶賛した。

それでも、彼らは優勝候補にユヴェントスを挙げた。近年のイタリアサッカーを支配してきた王者には、「魅力的なサッカー」を上回る物があるというわけだ。

主将ジャンルイジ・ブッフォンのラストシーズン(予定)となる今季、ユーヴェは重圧をはねのけて再びトロフィーを掲げるのか。カリアリとの開幕戦は、まもなくキックオフを迎える。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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