Yahoo!ニュース

中国で「520」はどんな意味? 5月20日に結婚するカップルが多い理由

中島恵ジャーナリスト
中国での披露宴の様子(写真:ロイター/アフロ)

今日は何の日?

今日、5月20日は日本ではごく普通の日だが、中国では特別な1日だ。中国語で「520」は「ウーアーリン」と発音するが、これが「我愛ni」(ウォーアイニー=私はあなたを愛しています)に似ていることから、5月20日は語呂合わせで「愛を告白する日」と呼ばれるからだ(同じく、発音が似ている5月21日を指すこともある)。

中国語では「網絡情人節」(ネット・バレンタインデー)という。

また、1314「一生一世」(イーサンイースー=一生あなたを愛します)という意味に似ていることから、520と1314を続けて、誰かに愛を告白するメッセージとしてこの数字(5201314)をSNSで送ることが流行っている。

5月20日の13時14分にメッセージを送る人もいる。

今日(5月20日)午前10時の段階で、中国の検索サイト「百度」をチェックすると、「520」は検索ランキングで第1位となっており、多くの人が朝から「520」に関心を持っていることがわかる。

結婚登記所には長蛇の列

520関連のニュースを見てみると、結婚登記所の話題が最も多い。

中国では結婚したいカップルが揃って結婚登記所に行き、結婚証を受け取ることで正式に結婚が認められるが、今日は「縁起のいい520」ということから、全国各地にある結婚登記所に長蛇の列ができているからだ(披露宴やパーティーは別の日に行うため、登記所には普段着で行く人が多い)。

結婚登記所での手続きの様子(中国の百度図片より筆者引用)
結婚登記所での手続きの様子(中国の百度図片より筆者引用)

中国メディア「光明網」(5月20日付)によると「5月20日は国内結婚登記のピーク日だ。今年は土曜日に当たることから、例年よりも多くの人々が押し寄せることが予想される。北京、上海、湖北、浙江などの各行政部署によると、登記所の職員の労働時間は長時間になるだろう」とある。

他メディアでも同様のニュースが多数掲載されており、うれしい悲鳴を上げている。

というのも、中国では婚姻数が年々減少しており、若者が結婚しないことが大きな社会問題のひとつになっているからだ。

結婚する若者は減少の一途

中国の「2021年民政事業発展統計公報」によると、2021年の婚姻数は約763万6000組で前年比で6.1%減少した。

婚姻数のピークは2013年で約1347万組だったが、それ以降、年々減少しており、2017年には約1063万組、2019年には1000万組を割った。まさに、坂を転げ落ちるような減少ぶりだ。

要因は結婚適齢期の若者の人口が減少していること、若者の結婚への関心が薄くなったこと、結婚にかかる費用(マンション購入、結納金など)が負担になっていること、ライフスタイル、考え方が変化していること、コロナ禍の影響――などがあるが、非婚化は少子化にもつながっているだけに、政府にとっては深刻な問題だ。

そうしたこともあり、結婚登記所の職員は残業するのもウエルカムだ、という記事が飛び交っているのかもしれないが、実際のところ、多くの人々にとって520はただの消費イベントのひとつになっている。

520元セットが人気

中国メディア「華商網」によると、5月20日前の2週間、各通販サイトではギフト関連の検索が急上昇し、3週間前よりも190%も増加したという。

さらに、「恋人に贈る(のに最適なギフト)」「夫に贈る」「妻に贈る」「母親へのプレゼント」などのキーワードも多く検索されたことがわかった。

人気のプレゼントは、化粧品、有名ブランドのバッグ、衣料品、靴、花束など。SNSで520元の紅包(ホンバオ=現金)を送金する人もいる。

飲食店では、520元(約1万円)の特別セットや限定セット、カップルで来店した場合の特別メニューなどを売り出して消費促進に躍起になっている。

SNSを見ると「520はもはや618(6月18日に行われる特別セール)やダブルイレブン(双十一、ネットショッピングの最大のイベント日)と同じようなものだ」と書いている人もいる。

実際、この日に合わせて結婚をしなくても、語呂合わせのよい日なので、恋人だけでなく、家族や友だち、親しい人に「520」とメッセージを送る人も多く、コミュニケーションを大事にする中国人にとって、大事な1日となっている。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミアシリーズ)、「中国人のお金の使い道」(PHP研究所)、「中国人は見ている。」、「日本の『中国人』社会」、「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」、「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」、「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」、「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国などを取材。

中島恵の最近の記事