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中国で地下鉄にソファを持ち込む男性が話題に 筆者も「お風呂の椅子」を持ち込んだ人を目撃した過去が…

中島恵ジャーナリスト
地下鉄のホームで、持参したソファに座る男性(中国メディアの動画より筆者引用)

4月4日、中国メディア「杭州日報」に、地下鉄の車内にソファを持ち込んだ男性がいると報道され、SNS上で話題になった。

動画を見てみると、ネット上で「西瓜」(スイカ)と名乗る、若くて長身の男性が、地下鉄に、かなり大きくて茶色い“マイソファ”を持ち込み、ホームに堂々と座っている様子が映し出された。

電車が入ってくると、男性はソファを背負い、車内のドア付近に再びソファを下ろし、そこにどっかりと座り、車内にいる他の乗客と何やら楽しそうに談笑した。

しかし、周囲の人は、その男性を奇異な目で見る感じでもなく、車内はいたって平常だ。男性は最寄り駅に到着すると、再びソファを背負い、エスカレーターに乗って去っていった。

映像はそこまでだが、その一部始終がわずか十数秒の動画としてまとめられ、SNSに流された。

車内のドア付近にソファを置き、くつろぐ男性(中国メディアの動画より筆者引用)
車内のドア付近にソファを置き、くつろぐ男性(中国メディアの動画より筆者引用)

この報道によると、その男性は事前に地下鉄職員に「ソファを持ち込めるか」を確認したという。

現場係員が目測したところ、ソファは「ギリギリ持ち込みできるサイズ」であること、ソファが日用品であり、規則に違反していないことなどから、車内への入場を許可したとされる。

中国の地下鉄は、飛行機に乗るときのように、すべての駅で手荷物検査が実施されているが、この大きなソファも、そこを無事に(?)すり抜けられたようだ。

ネット上では「ゆったりとしていて、楽しそうだ」「こんなに大きなものを持ち込むなんて、びっくり」などのコメントがあったが、批判している人は少なく、微笑ましい光景として認識されているようだった。

筆者もこの動画を見て、思わず笑ってしまったが、この動画から、筆者もかつて、中国の車内で見かけた、ある“珍風景”を思い出した。

お風呂の椅子を持ち込むのもアリ?

確か7~8年前のことだったが、ある日、上海で地下鉄に乗ろうとしたとき、比較的高齢の男性(おそらく60~70歳くらい)が、日本の浴室でよく使うような、小さな椅子を持ち込み、そこにちょこんと腰かけたのだ。

車内の椅子は満席で座れない状態だったが、かといって、混み合っているというほどではなく、ドア付近はかなり空いていた。その男性は、それを承知の上だったのか、大きな袋から、「お風呂の椅子」のようなものを取り出し、平然と座っていた。

驚いたのは、すぐそばに立っていた筆者だが、大きなマイソファを持ち込んだ男性の周囲にいた乗客と同様、高齢男性の周囲にいた人々も、まったく驚いた様子はなく、平然としていた。

周囲の誰も、その男性をジロジロと見ていなかったことに、逆に筆者は驚かされた。

筆者は職業柄、何かあると、「これは中国でいま起きている何かの社会現象なのか?」「高齢男性がこうした行動を取る背景には、一体何があるのか?」などと考えてしまうクセがあるが、この場合、そんなことではなかったと思う。

ただ、座席に座れないと疲れるので、椅子を持ち込むことを思いついた、ということだったと思うが、改めて、「自由すぎる」中国人の行動、そして、彼らのユニークな発想に、クスっと笑ってしまったのだった。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミアシリーズ)、「中国人のお金の使い道」(PHP研究所)、「中国人は見ている。」、「日本の『中国人』社会」、「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」、「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」、「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」、「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国などを取材。

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