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「ついに来た!」アベノマスクを受け取った在日中国人たちの意外に前向きな反応とは

中島恵ジャーナリスト
アベノマスクの到着にさまざまな反応を見せる在日中国人たち(写真:YUTAKA/アフロ)

「ついに来た!アベノマスク!10万円の給付金のほうも待ってるよ!」

「アベノマスク、うちにも着きました。少しひもが痛いかも…」

「ようやく来ました!ちょっと感動!」

 安倍晋三首相が4月に感染防止策として打ち出した通称「アベノマスク」政策。東京都内では4月中旬から、5月12日からは大阪、福岡などでも配布が始まった。466億円を投じた重要政策の一環ということだが、受け取った日本人の反応がイマイチなのは、すでに報道の通りだ。

 一方、日本に住む外国人のうち、最も人口が多く、100万人にも上る在日中国人たちは、この2枚のガーゼ製マスクのことをどう思っているのか?

お守りとして大事にします

 SNSを見てみると、到着した人は上記のようなコメントとともに、アベノマスクの封筒の写真や、自分がアベノマスクをつけた自撮りの顔写真などを掲載している。

 反応の多くは「到着した!」という一言のコメントと写真のみで、とくにそれ以上のことは書いていないが、中には意外でおもしろい反応もある。たとえば、こんなものだ。

「ありがたいです。お守りとして大事にします!」

「これは家宝にいたします!」

「いったん神棚にあげて、あとは引き出しにしまっておきます」

「マスクに向かって思わず一礼しました!(苦笑)」

「真っ白で意外ときれい。日本人はこういうマスクを給食の時間につけていたの?」

 私が見るかぎり、投稿の多くが批判的ではなく、肯定的で明るいものだ。

 SNSの格好のネタとして面白がっているフシはあるが、別に茶化したり、バカにしたりしているわけではなく、「自分も日本に住む一員」としてちゃんと認められていて、その証拠として、日本人と同じくアベノマスクを配布してもらえた、ということを素直に喜んでいるようだ。

 日本人の多くも郵便ポストに届いたら、思わず「あっ」と声を上げ、家族に向かって「やっと着いたよ~、あのマスク」と言ってしまったり、スマホで写真を撮ってしまうのではないだろうか(それをSNSに載せるかどうかは別として、何となく記念として)。都内に住む我が家にも3日前に届いたばかりだが、思わずしげしげと眺めてしまった。

 何となく「ついにその日がきた」といったような「来るべきものが来た感」があるが、それと同じような一種の感慨が、中国人たちの反応にも同じように出ているのがおもしろいところである。別に待っているわけではないし、マスクはまだ家にあるのだが、あまりにも配布に時間がかかるため、来ないとちょっと気になる。

 アベノマスクはすでにそんな存在になってしまっているのかもしれない。

中国でもアベノマスクは話題に

 中国語でマスクは「口罩(コウジャオ)」という。アベノマスクは「安倍口罩(アンベイコウジャオ)」で、中国のニュースサイトなどで検索すると、大量に記事や中国版ブログなどがヒットする。

「安倍口罩」の関連キーワードとして、なぜか「加藤口罩」(加藤勝信・厚労相のマスク)、「安倍洋子」(安倍首相の母)、「安倍昭恵」なども出てくる。中国国内でもアベノマスクに興味を示す人はかなりいるようだ。

 10万円の特別定額給付金の支給もそうだが、日本に住む彼らにとって「アベノマスク、収到了ma?(受け取った?)」は今や挨拶代わりとなっている。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミアシリーズ)、「中国人のお金の使い道」(PHP研究所)、「中国人は見ている。」、「日本の『中国人』社会」、「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」、「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」、「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」、「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国などを取材。

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