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東京に初の本格的な中国湖北省の料理店がオープン!多様化する日本の中華

中島恵ジャーナリスト
湖北省の名物料理、熱干麺(武漢ごまソース混ぜ麺)

 10月1日は中国の国慶節(建国記念日)。現在、700万人以上の中国人が海外旅行に繰り出しているが、そんな中、東京・銀座のど真ん中に、中国でも珍しいといわれる湖北料理店がオープンして話題になっている。

 湖北料理と聞いてもピンとくる日本人はほとんどいないだろう。中国の中央、内陸部に位置する湖北省の郷土料理だ。省都・武漢は交通の要衝であり、長江とその支流、漢江の合流点に位置する巨大な経済都市。昨今のテニスブームで「武漢オープン」が開催されることでも、その名が知られるようになった。

銀座4丁目に近いbinoビルにある同店
銀座4丁目に近いbinoビルにある同店

 店名は『珞珈壱号』(かっかいちごう)。日本人には馴染みのない漢字が並ぶが、経営者であり、自身も湖北省の出身である徐耀華氏によると、湖北省の名山、珞珈山からその名を取ったという。日本で初の本格的な湖北料理なのでこう名づけた。

 

 徐氏は東京・六本木で雲南料理店『御膳房』などいくつもの中国料理店を経営し、日本に本格的な中国料理を広めてきた人物だ。

「豆皮」と呼ばれる名物ごはん料理
「豆皮」と呼ばれる名物ごはん料理

 同店の名物メニューは「豆皮」(武漢おこわオムライス)、「熱干麺」(武漢ごまソース混ぜ麺)、「武漢面窩」(武漢風ドーナツ)、「武漢珍珠丸子」(武漢もち米団子の蒸しもの)、レンコンと豚スペアリブのスープなど。

日本の中国料理店では聞いたことのないメニューばかりだが、武漢の特産品であるレンコンやもち米、魚、豚肉などを使った素朴な家庭風の料理も多い。

 湖北省は周辺を湖南省、河南省、安徽省、江西省などに囲まれているため、周辺地域の料理の影響も受けており、辛い料理、淡泊な料理など多彩な料理が味わえるのが特徴だ。

 よく中国四大料理(北京、上海、四川、広東料理)といわれるが、湖北省の料理は、その古い国名「楚」にちなみ「楚菜」といわれ、中国十大料理のひとつに数えられる。だが、北京や上海などでも湖北料理店は数が少なく貴重な存在だ。

私自身も試食してみたが、とくにスープや蒸し物は日本人の口にも合うと感じた。

 オープンに駆けつけた湖北省出身の朱峰玲子氏は「懐かしい故郷の味がして感動した。本格的な湖北料理が日本にも浸透したらうれしい」と話していた。

いわゆる中華風ではない洗練された内装
いわゆる中華風ではない洗練された内装

 日本には古くから中華街がある横浜に広東料理店、新興の中華料理店が並ぶ池袋に東北料理店が多いといわれている。

 在日中国人や訪日中国人観光客も増えていくなかで、十把ひとからげに「中国料理といえば麻婆豆腐とエビチリ」という時代はそろそろ終わっていくべきだろう。

 多文化を受け入れていく日本で、これまでにない多様な中国料理がもっと食べられる日も近いかもしれない。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミアシリーズ)、「中国人のお金の使い道」(PHP研究所)、「中国人は見ている。」、「日本の『中国人』社会」、「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」、「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」、「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」、「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国などを取材。

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