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新しいMac PCはVRを夢を見るか?

武者良太ガジェットライター
imac(写真:ロイター/アフロ)

日本時間で2017年6月6日の未明、アップルはWWDC(開発者向けイベント)において多くのニューモデルを公開しました。アップデートされたハードウェアはタブレットのiPad Pro、ノートパソコンのMacBookとMacBook Pro、そして一体型パソコンのiMac。さらに新シリーズとして、Mac史上最高スペックを実現したiMac Proもラインナップの仲間入り。

ここで注目したいのはMacBook Pro(の一部)とiMac(の一部)、そしてiMac Proです。Mac PCの一団です。なぜならば、これらのモデルはアップル自らVRコンテンツに対応するPCだと公言したから。Final Cut Proで360度動画の編集も可能となり、新たなコンテンツを作って楽しめます。

VRコンテンツをPCで楽しむには、ほぼWindows PC一択という状態が続いてきました。HTC ViveやOculus Riftなど、PCと接続できるVR HMDを駆動するには高いハードウェアスペックが必要、その条件を満たしやすいのがWindows環境だったんですね。デスクトップPCならプロセッサやGPUを交換しやすいし、ノートPCもVRゲームにも対応するゲーミングPCのモデル数が増えてきました。

現在はニッチな市場ではあるけども、ソニーのPlayStation VRの人気を見るに、今後の規模拡大は約束されたようなもの。クリエイティブワークに必要なスペックを満たしたことが導因となったのかもしれませんが、2017年にリリースされる多くのMac PCがVR readyとなるのは事実です。

VRをはじめるからMacを買う、という潮流は起きるのか

だからといって、VRコンテンツを求めるユーザーがMac PCを手にするのかといったら話は別です。VR環境を満たしていないモデルもあるからです。PCとVRに詳しい人であれば、どんなCPUとGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)が必要か判断できるでしょう。VRコンテンツに対応したWindows PCはVR readyのマークがつけられていることが多く、どのモデルを購入すれば問題ないかが判断できますが、本体にしろ梱包箱にしろ、人一倍エクステリアに気をつかうアップルがVR ready表記を行うかと考えると不安が残ります。

ノートPCのMacBook Proは外付けGPUボックス+グラフィックボードと接続できる設計ですが、すでに発売されているサードパーティ製のGPUボックスの価格は5万円超え。VR readyのグラフィックボードも購入するとなると、8万円近い出費を余儀なくされるでしょう。iMac Proは問題なし。iMacも27インチモデルであれば大丈夫。しかし21.5インチモデルはスペック面でアウト。

だれもがリアルな店舗でMac PCを購入するならば問題ないでしょう。スタッフに尋ねれば、適切なモデルを教えてくれるでしょうから。しかしオンラインで購入する場合、選択したMac PCがVR readyモデルかどうかの案内がなければ迷ってしまうかと。

アップル自ら、新しいMac PCがVRに対応したとアピールしたのですから、ビギナーが迷わずVR readyなMac PCを選べるユーザビリティが必要と考えます。

価格面でもWindows PCに軍配が上がります。そしてパソコンショップのプライベートブランドや、一部の海外メーカー製でよければ、本体価格10万円以下のVR readyなWindowsのデスクトップPCが存在します。後からパーツを交換してさらなる性能を入手することも可能です。

コストパフォーマンスだけで選ぶのが全てではないものの

WWDCにおいて、新Mac PCのVR性能は華々しくアピールされました。SteamVR、Unreal Engine、Unity Editorといったアプリが対応することも伝えられました。スター・ウォーズシリーズやトランスフォーマーシリーズのVFX・3Dアニメーションを担当している、インダストリアル・ライト&マジック(ILM)のジョン・ノール氏によるデモンストレーションは高解像かつ高フレームレート。このクオリティがMac PCで体感できるのかと思うとワクワクするものでした。

それでも、アップルは本当にMac PCをゲーミングマシンとして売り込もうとしているのか、不安に感じてしまいます。ビギナーに優しい動線こそ文化構築には重要なのですから。

願わくば、この不安が現実とならないことを祈ります。

ガジェットライター

むしゃりょうた/Ryota Musha。1971年生まれ。埼玉県出身。1989年よりパソコン雑誌、ゲーム雑誌でライター活動を開始。現在はIT、AI、VR、デジタルガジェットの記事執筆が中心。元Kotaku Japan編集長。Facebook「WEBライター」グループ主宰。

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