ユニフォームデザインだけではない J1札幌と契約した世界的デザイナーが考えるサッカークラブの未来

コンサドーレのクリエイティブディレクターに就任した相澤陽介氏(スタッフ撮影)

J1北海道コンサドーレ札幌のクリエイティブディレクターに就任した相澤陽介氏へのインタビュー連載企画。第1弾では、コンサドーレと契約した経緯・背景について伺ったが、第2弾となる今回は今後の展開や来季以降のユニフォームのデザインについて話を聞いた(取材日:2019年8月20日)。

パリコレはサッカーに例えるなら欧州CL

アシシ:ファッションデザイナーの仕事について、サッカーのサポーターはよくわからない部分が多いんですが、相澤さんはファッションウィークのパリコレクション、通称パリコレの公式スケジュールで今まで8回ショーを発表していると記事で読みました。日本人がパリコレでショーをやるというのがどれくらいすごいことなのか、簡単に教えていただけますか?

相澤:メンズブランドでいくと、日本人デザイナーのブランドは10ブランドくらい出ていますね。

アシシ:それはつまり、日本を代表するトップ10のデザイナーという位置づけですか?

相澤:いやいや、そういう訳ではないと思いますが、日本に無数にファッションブランドがあるので簡単なことではないです。日本のトップと言えばコム・デ・ギャルソンやイッセイミヤケ、ヨウジヤマモトさん、これがいわゆる日本の御三家、日本人のトップですね。

アシシ:そうなんですね。パリコレはサッカー界で例えると、欧州チャンピオンズリーグみたいなものですか?

相澤:世界中からファッションデザイナーが集まってくるので、ワールドカップみたいな感じかもしれませんが、4年に1度ではなく、毎年開催されますからね。常にパリで開催なので一番適しているのはアシシさんのおっしゃる通り、欧州チャンピオンズリーグですかね。

サカナクションとコンサドーレ

アシシ:そういえば先日、サカナクションのボーカルである山口一郎さんとコンサドーレの野々村社長と3人で食事した写真をインスタグラムのストーリーにアップしていたじゃないですか。さすがに話せないことも多々あるかと思いますが、何かコンサドーレとサカナクションのコラボ的な話に繋がったりしたんですか?

相澤:山口一郎さんとは前から仲良くしてもらっていて、北海道出身、しかも札幌のレコードショップで働いていたり、結成当時札幌のライブハウスで練習していたりと、札幌と縁が深いアーティストなので、札幌公演の時に野々村さんをライブに誘いました。一郎さんはライブでもコンサドーレが好きと公言してくれていますが、簡単に何かやるというには彼らがちょっとメジャーになりすぎてしまってますからね。

アシシ:たしかにそうですね…。

相澤:コンサドーレが一体どんなことに取り組んでいて、どういうビジョンで北海道に貢献しようとしているかを説明した上で、地元繋がりの縁で彼が共感してくれたら何か新しいことが始められるかも? くらいの緩い感じですね。たとえば、元オアシスのボーカル、ノエル・ギャラガーは、マンチェスター・シティのクレイジーなファンじゃないですか。

アシシ:よくプレミアリーグの中継で、VIP席で観戦しているのをテレビに抜かれてますね。

相澤:彼がマンチェスター・シティのユニフォームを着て、ライブしたら絶対格好良いではないですか。同じようにサカナクションが自然に赤黒のユニフォームを着てライブをやる、なんていうのも僕は夢見ていますよ。

ユニフォームの本来の価値を見定める

アシシ:そうやってコンサドーレを好きになってくれる人が増えていったら最高ですね。ちなみに相澤さんはコンサドーレのユニフォームのデザインは担当しないんですか?

相澤:そこ、聞いちゃいますか。

アシシ:これは守秘義務的にNGですか?

相澤:いや、NGってわけではないです。来年は手掛けません。

アシシ:既に来年分は何かしらの別契約があるんですかね。来年やらない、ということはつまり、再来年以降は考えている、ということですか?

相澤:そうですね。是非やりたいですね。ユニフォームのデザインがもともとやりたいことだったので。

アシシ:ユニフォームってクラブの顔そのものですもんね。

相澤:僕がコンサドーレに提案しているのは、ユニフォームの本当の価値と可能性をクラブ側がもっと理解した方がいいのではないかという点です。サードユニフォーム的な記念ユニフォームとか、日本代表選出記念の特別ユニフォームとか、コンサドーレは色々と出してますが、まだまだ改善の余地がありますよね。

アシシ:具体的な改善点を教えて頂けますか?

相澤:例えば、レアル・マドリードは5年前に、日本を代表するデザイナーである山本耀司さんがデザインした欧州チャンピオンズリーグのサードユニフォームを発表しました。リミテッドエディションを数量限定でリリースし、プレミア感を出してサポーターの興味を引きつけ、ビジネス上は確実に利益を取っていくのです。

アシシ:ファンは数量限定とか期間限定といった売り文句に目がないですからね。

相澤:Tシャツなどのアパレル商品と比べて、ユニフォームは利益率が大幅に違います。そういったユニフォームの本来の価値をしっかりと見定めた上で、クラブは販売戦略を練る必要があります。これはコンサドーレのスタッフにも提言したのですが、鈴木武蔵選手や菅大輝選手が日本代表に選出された時の記念ユニフォームなんかは、もっと良いやり方があったのではないかと思っています。

アシシ:背番号のプリンティングをゴールド仕様に変えただけのデザインでしたね…。

相澤:ある意味、僕が内部にいるということをもっと利用してほしいと思っています。内部にいるということはデザインの発注を会社内で行えるのでスピード感が変わってきます。移行昇華プリントなどは計画を持って動けば商品にする時間も短く、タイムリーに製品を作ることも可能です。

アシシ:これ、記事にはしない方がいいですかね…。

相澤:いや、書いちゃって問題ないですよ。こういう問題意識を、よりオープンにしていくのも意義があると思うので。とにかく、やりたいことや改善したいことが山積みなので、優先順位をつけてひとつひとつ対応していければなと思います。

(第2回 了)

第1回 世界的なデザイナーはなぜJ1札幌と契約したのか サッカークラブが抱える収益の課題

第3回 選手が欲しくなるものを コンサドーレが目指すサッカーとファッションの融合