コンサドーレがJ2優勝をたぐり寄せた「フクアリの奇跡」 現地で体感したサッカーの魔力とは

千葉対札幌で劇的逆転弾を決めた内村圭宏(撮影者:みー @8046miiiii)

応援が試合結果を左右するなんて、サポーターの思い込みである。実際にプレーするのは選手たちであって、僕らサポーターは単にスタンドから声援を送ることしかできないのだからーー。

客観的に見れば至極まっとうな意見である。そりゃそうだ。勝利を祈るサポーターの多い方が試合に勝つのなら、そもそもサッカーという競技が成り立たなくなる。

だがしかし、2016年11月12日に千葉県のフクダ電子アリーナ(通称:フクアリ)で行われた明治安田生命J2リーグ第41節、ジェフユナイテッド千葉対北海道コンサドーレ札幌の一戦は、まさに札幌サポーターの執念の応援が試合結果を突き動かしたと表現したくなるほどに、後半アディショナルタイムに劇的な結末が待っていた。

背水の陣で挑んだコンサドーレ

多くの札幌サポーターにとって、元々この千葉戦は消化試合にする腹づもりだった。というのも、5月にJ2首位に躍り出て以降、連勝街道を突っ走っていたコンサドーレは、一時期2位の松本山雅FCに勝ち点差9を付けるほど首位を独走していたのだ。絶好調の夏頃には「早ければ10月にはJ1昇格決められるね」と捕らぬ狸の皮算用をしていたくらいだ。

それが36節~40節の5試合において、コンサドーレは1勝1分け3敗とよもやの大ブレーキ。たった5試合で勝ち点9差を一気に詰められ、2位の松本との勝ち点差はゼロになった(3位の清水エスパルスとの勝ち点差は3)。そんな背水の陣で、千葉戦を迎えたのである。

仮にこの試合に負けると、他会場の結果次第で自動昇格圏外の3位に落ちる可能性がある。フクアリに現地参戦した3千人もの札幌サポーターは、試合前からとてつもない緊張感を味わっていた。

札幌サポーターがフクアリを「ホームジャック」

試合は前半31分に千葉に先制される苦しい展開。今季札幌は相手に先制された試合ではこれまで9戦1勝2分け6敗と勝率11%。

そんな崖っぷちに立たされた状態でも、札幌サポーターは諦めずに声を枯らして応援を続けた。僕は今季、コンサドーレのアウェイ21試合中13試合を現地参戦したが、その中でもこの千葉戦が最も声が出ていたように思う。

ゴール裏の隣にあるコーナーゾーンの札幌サポーターもほぼ総立ちで応援していた。それほどまでに現地参戦した札幌サポーターは皆、決死の覚悟で応援していた。

同点弾を決めたFW都倉賢(撮影者:みー @8046miiiii)
同点弾を決めたFW都倉賢(撮影者:みー @8046miiiii)

そして後半26分、セットプレーから都倉賢のヘディングゴールで札幌が1点を返し、スコアは1-1に。この同点弾で札幌ゴール裏の応援のボルテージは最高潮に達した。

そんな中、象徴的なシーンがあった。ボールがタッチラインを割り、スタジアムに一瞬静寂が訪れたタイミングで、札幌ゴール裏は「スティング」という応援歌を繰り出した。僕は試合後に映像をチェックしたのだが、スカパー!の実況でこういうやり取りが行われていた。

(札幌の応援歌がスタジアムに響き渡るのを聞きながら)

実況:「札幌のサポーターの声がコンサドーレのイレブンの背中を押します」

ピッチレポーター:「それを受けて今長谷部監督がジェフのゴール裏に頼む煽ってくれというジェスチャーを見せましたね」

まさにフクアリを札幌サポーターが「ホームジャック」した瞬間だった。

見事な逆転劇にゴール裏が歓喜の渦に

とはいえ、応援をどんなに頑張ってもスコアに反映されないという苦い結果を、僕は幾度となく経験してきた。それでも僕たちは勝利を信じ、終了のホイッスルが鳴るまで全力で歌い続けた。すると、後半50分にドラマが待っていた。

札幌の最終ラインからロングボールが前線に供給される。競り合ったヘイスの頭上をボールが通過し、斜めからDFの背後を取ってうまく抜け出してきたのは、FW内村圭宏だった。ハーフボレーでジャストミートしたボールは美しい弧を描き、ゴールネットを揺らしたのだった。

逆転弾を決めたFW内村圭宏(撮影者:みー @8046miiiii)
逆転弾を決めたFW内村圭宏(撮影者:みー @8046miiiii)

ゴールを決めた内村が看板を乗り越えて、アウェイゴール裏に一目散に飛び込んでくる。選手らと喜びを分かち合おうと、サポーターが最前列に詰め寄る。その煽りをくらって、ひとりのサポーターがスタンドから落下したほどだ(その後規定に基づき出禁処分が下された)。

僕は止めどなく流れる涙をぬぐおうともせず、隣の見知らぬおっさんとハグをした。周りを見渡すと、フクアリ名物の喜作ソーセージがタッパーから飛び出して散乱していた。とにかく札幌のゴール裏はカオスと化していた。

その後、終了のホイッスル。2-1のスコアで、札幌が劇的な逆転勝利をおさめ、首位の座を堅守したのだ。ゴール裏では、試合前から覆っていた独特の緊迫感から解放されたからか、多くのサポーターが人目をはばからずにおいおいと泣いていた。

"I was there."と言える歓び

結果、札幌は次の最終節で金沢と0-0で引き分けて勝ち点1を積み上げ、見事J2優勝を果たした。この「フクアリの奇跡」が札幌のJ2優勝という結果を大きくたぐり寄せたと言っていい。

タイトルの懸かった大一番で、後半アディショナルタイムの逆転弾で勝利するなんて、何十試合、いや何百試合に1回の割合でしか見れないだろう。あの究極の歓喜は、一度体験すると病みつきになる。これぞサッカーの魔力だ。

クラブ創設20周年という記念すべき年において、歴史に刻まれるような伝説的な試合を現地で応援できたことを僕はいちサポーターとして誇りに思う。

そして、この神がかった試合展開に、何mmかは僕ら現地参戦した札幌サポーター3千人の応援の力が作用したと信じたい。

世界共通言語ともいえるサッカーでは、海外でサポーターが"I was there."という決まり文句をよく使う。直訳すると「僕はそこにいた」。意訳すると「(その歴史的な試合に)僕は現地にいたんだ」ということ。

こういった歴史的な試合に立ち会うべく、僕はこれからもサッカーの「現地参戦」にこだわっていきたい。そしてサッカーの魅力について、サポーター独特の視点でこれからも情報発信していこうと思う。