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【台風19号】災害時無料Wi-Fi 00000JAPAN の利用で最も注意することは?

森井昌克神戸大学大学院工学研究科 特命教授・名誉教授
台風19号に対して最大限の注意を!(写真:ロイター/アフロ)

この災害時無料Wi-Fiを悪用し、サイバー攻撃に用いられ、利用者が被害に遭うというのです。いくつかの攻撃方法が想定されており、たとえば、パスワードがなく、暗号化もされていないことから、盗聴の可能性が指摘されています。もちろん、利用するサービス自体が暗号化されている場合は盗聴されても内容を見られることはありません。

出典:災害時無料Wi-Fiの利用には十分注意を! その00000JAPANは本物か?

災害時に無料で誰でも使える、無料Wi-Fi  00000JAPAN が公開されています。10月12日17:00時点で、特に台風が通過し、暴風となる可能性が高い、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県、静岡県、茨城県の全域で運用が行われています。全域といっても、どの地域、地点でも使えるわけではなく、各キャリア(携帯電話通信会社)が設置している公衆無線LANスポットと呼ばれる地域のみとなります。主だった駅や公の施設、人が集まる商業施設等で設置されています。その付近では、スマホの無線LANを使おうとすると、SSIDと呼ばれる無線LANスポットの名前00000JAPAN が表示されます。今回のような災害が予想される非常時には、ドコモ、au、それにソフトバンクと言った各キャリアが協力して、平常時、それぞれの会社が独立に、そして契約者のみ利用できていた公衆無線LANを全ての人、そして誰でもが使えるように解放するのです。その統一されたSSIDが  00000JAPAN  なのです。今までの災害時でも、スマホを用いたインターネットからの情報が避難や対策にとって重要で、SNSでの安否確認を含めて、非常に有効であることが実証されてます。その利用については是非もありません。ただし、過去にもその利用についての注意点がいくつか挙げられています。それは

  • 認証や暗号化を行なっていないことから、誰でも盗聴できる可能性があり、念のためにも、個人情報やクレジット情報等、他に漏れては困る重要な情報を入力しない。
  • 00000JAPAN  というSSIDに対するなりすましが横行する可能性がある。従って、それが本物であるかどうか見極める。

という点です。詳しくは先の拙稿「災害時無料Wi-Fiの利用には十分注意を! その00000JAPANは本物か?」を参照ください。

ただ、改めて述べますが、一番大事なこと、そして心がけることは、

結局、災害時、気が動転したり、高ぶっていることもあって盗聴を防いだり、偽装されたSSIDに誘導されたりしないようにすることは一般の人にとって極めて難しいと言わざる得ません。被害を未然に防ぐためには、特に00000JAPANを含む無料Wi-Fiを利用するにあたって、出来る限り個人情報を入力しない、ネットバンクやネット通販を利用しないことです。輻輳(ふくそう、数多くの人がネットを同時に利用することによる混雑、回線遅延)を防ぐためにも、災害時緊急通信という本来の目的に沿った必要最小限の通信だけに留めるべきでしょう。

です。そしてもう一つ、悪人である詐欺師は多くの人が注目することを利用し、その中での個々の「心の隙」に狙いを定めるのです。今回の台風19号の場合、その防災、あるいは避難に関する情報だけでなく、付随するイベントの中止や災害によるサービスの遅延や保障を利用して、フィッシング詐欺、例えば、住所氏名、クレジットカード番号やそのセキュリティコードを入力させる画面に誘導するようなことが行われます。災害という非常時ですから、焦る気持ちは理解できますが、一息入れるという、ほんの少しの注意は必要です。

神戸大学大学院工学研究科 特命教授・名誉教授

1989年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程通信工学専攻修了、工学博士。同年、京都工芸繊維大学助手、愛媛大学助教授を経て、1995年徳島大学工学部教授、2005年神戸大学大学院工学研究科教授。情報セキュリティ大学院大学客員教授。情報通信工学、特にサイバーセキュリティ、インターネット、情報理論、暗号理論等の研究、教育に従事。加えて、インターネットの文化的社会的側面についての研究、社会活動にも従事。内閣府等各種政府系委員会の座長、委員を歴任。2018年情報化促進貢献個人表彰経済産業大臣賞受賞。 2019年総務省情報通信功績賞受賞。2020年情報セキュリティ文化賞受賞。電子情報通信学会フェロー。

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