大阪北部地震、デマだけでない!惑わされる拡散情報とは
熊本地震の際、SNSでのデマが拡散し、大きな問題になりました。「動物園からライオンが脱走」という、他国で撮られた写真をあたかも熊本市内を闊歩しているように見せかけたデマ写真は、その後、それをSNSに上げた本人が逮捕されると事件に発展しました。その記憶が薄れないうちに、また同様のことが今回の大阪北部地震でも起こっています。熊本でのライオン事件と同じように、全く無関係なシマウマの写真を上げて、シマウマが脱走したとのデマや、「(京都大阪間を走る)京阪電車が脱線した」や「(大阪市内になる)京セラドームの屋根に亀裂が入った」等、地震の被害を偽ったデマが広まったのです。前者と後者のデマは、それを最初に発した人の意識を考えると少し性質が異なります。前者は明らかに熊本での事件を意識した悪戯であり、後者は人々が混乱することを期待した、いわゆる愉快犯です。前者は事実でないことを明白した上での投稿と考えたかもしれませんが、平時ではなく、人々がパニック状態に陥っているときであり、それが思わぬ解釈となることを考えなくてはなりません。その投稿が人々に伝わる間に、伝言ゲームのごとく、曲解され、思わぬ内容になり得るのです。後者は結果的に悪意に満ちた投稿ですが、両者ともに目的は自分の存在の確認と主張です。正当な手段で自己を表現できないため、その劣等感から世間、あるいはネット上で話題になることによって自己主張しているのです。
もはや一つの性癖であるところの、これらの輩を完全に取り締まることは不可能なのです。たった一人の、それもたった一言のデマが社会的混乱を引き起こすことになるのですから。したがって最も有効で現実的な解決策は、無暗にリツイート等、それを引用してさらに拡散させている人たちの排除です。排除は言い過ぎとしても、このようなデマを拡散しないようにする必要があります。デマを拡散する人たちに悪意はないかもしれません。少しでも自分が知っている情報を役立ててもらおうと友人、知人に伝えている人がいる反面、愉快犯と同じように、自分が如何にもその話題に関係している、つまりいち早く接していることを自慢したい気持ちがないとは言えないのです。情報を拡散するときに、その発信源が信頼できるか、真偽を十分確かめてから投稿するように、と注意がなされています。しかし一番重要なことは、それ以上に、引用を含めて自分の書いた記事に責任を持つということです。他人が書いたデマであろうが、それを一旦自分がリツイート等、拡散した際には、そのデマは自分が書いたことと同じなのです。
デマではなく、真実を投稿する際にも気を付けなくてはなりません。部分的、あるいは一方向からだけ見た真実はデマに勝る不安を掻き立てるかもしれないからです。今回の大阪北部地震においては、新幹線の橋脚の一部が崩落している写真が話題になりました。確かに一部が崩れ落ち、その崩落したコンクリート片が地面に広がっていたのです。最初に写真を上げた人は、その事実とJRの職員に向けて確認を急ぐように述べるのみでしたが、次々とリツイートや引用がなされ、不安を煽る言葉で埋もれました。その後、新聞紙上でも取り上げられましたが、JRの職員が点検している写真も同時に上げて、大きな損傷がないことを付記するとともに、JRからの点検終了と運行に差し支えないことを明記しています。スーパーやコンビニでの品不足も、写真とともに、「水や食料の買い占めが始まる」などという真実を誇張した表現が、SNSで流れました。確かにスーパー等の棚に商品がほとんど陳列されていない写真は事実でしょう。しかし水や食料が極端に不足しているわけではなく、地震後での鉄道線路の点検や高速道路の点検による一時不通による配送遅れが原因であり、ましてや大掛かりな買い占めが行われたわけではないのです。余震に備えて、改めて当面の非常食や飲料水等の生活必需品を確保することは重要ですが、過度の買い占めに至るとパニックになりかねません。地震等での非常時の情報発信は極めて慎重である必要があるのです。その慎重さの根源となる意識が、リツイートであれ、引用であれ、その発言(情報発信)に重い責任を持つということなのです。