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NY流、幼稚園選びの基準は『TODS』!!

宮下幸恵NY在住フリーライター

競争はすでにスタート!

9月に新学期が始まったばかりのアメリカ。「Back to School」と呼ばれる新学期に備えた文具セールが一息ついたかと思えば、ニューヨークではすでに来年9月入学に向けた“園選び”がすでにスタートしている。

自分から動かないと道が開けないのがアメリカ。学校だって、「あなたの子供は今年入園ですよ、小学校入学ですよ」なんて誰も教えてはくれない。全部自分で調べて申し込みをしなければ、学校にだって入れないのだ。

私自身、アメリカを拠点にしてから7年目とはいえ、初めての子供で学校選びも初体験。頼みの綱は先輩ママの経験のみ! さっそく、NY在住の日本人ママによる学校選びの情報交換会に行ってみた。

先輩ママが語るポイントとは?

マンハッタンのとある教会に集まった20組近い親子。配られた1枚の配布資料を握りしめ、みんな先輩ママの話に聞き入った。

まずは教育システムの一般事項から。アメリカと日本では教育システムが異なるが、幼稚園的存在のPre-Kindergarten(通称プリケー)に入学するのは4歳になる年の9月から。

例えば、今年9月のPre-K入学対象となるのは、2008年生まれの子供たち。9月の時点ですでに4歳8か月になっている1月1日生まれの子も、まだ4歳になってない12月31日生まれも対象になる。(学校によっては、3歳入学のプリケーもある)

懐が広いというか、時には柔軟なアメリカ。その子の成長度合いによって、1年遅らせて入学する事も決して珍しい事ではないという。

申し込みはネットで

例年、パブリック(公立)のPre-Kの申し込み期限は4月上旬。インターネットによる申し込みが主流で、抽選により“合否”が決まるため、日本のように徹夜で並ぶ事はない。申し込み期限を考えると、入学より1年前の今時期から学校選びが本格化するのも頷ける。

Pre-Kの後は、日本の幼稚園年長にあたるKindergarten(通称キンダー)へ進み、晴れて小学生になるのだ。公立校の場合、このキンダーから小学校へエスカレーター式で上がるので、みんな幼稚園選びから必至というわけ。

日本の義務教育のように、各学校が教育要項に沿ってしっかり指導してくれるわけではない。学校独自の進め方があるので、環境や先生の手腕によって雲泥の差が出てしまうのが、アメリカらしい。

ならば、少しでもいい学校へ!!というのが親の切なる希望なのだ。

NY基準の『TODS』って?

パブリック(公立)、プライベート(私立)も合わせると星の数ほどある学校のなかから、自分の子供に合う学校をどう選んだら良いのか? そのヒントになるのが、NYらしい学校選びの基準、『TODS』だと言う。

最初の「T」は、最も気になる「Tuition」、学費だ。

マンハッタンのプライベートスクールともなれば、年間2万ドルを超えるものも少なくない。日本でもお馴染みのレディーガガや、パリス・ヒルトンらセレブを輩出する超名門女子校「Convent of the Sacred Heart」http://www.cshnyc.org/index.aspxの4歳児の1年間の学費は約2万6600ドル!! また、ドイツの思想家ルドルフ・シュタイナーの理念をもとにしたシュタイナー教育を実践する「The Rudolf Steiner School」http://www.steiner.edu/page.aspx?pid=317は、半日プログラムでさえ年間2万4900ドル!! 庶民には夢のまた夢・・・のような金額だったりする。

しかし、収入を申告し学費を免除してもらう「ファイナンシャルエイド」という制度を利用すれば、低所得者でも超名門私立に通わせる事ができるそうだ。

ただ!!

以前聞いたことがある体験談によると、「ニューヨークには桁違いのお金持ちがいる」って事。子供の誕生日会をどこで開催するのか、週末をどこで過ごすかなどで、価値観が違ってくるという。どんだけ〜?!の世界だが、一般庶民には想像もできないセレブな世界もあるみたい。経済的事情から価値観の違う“ご学友”に囲まれるほど、しんどいものはない。

さらに、「O」とは?

「Open Door Policy」と言い、いつでも親が学校を見学できるかどうかも、1つの基準になるという。

「将来、娘を完璧なバイリンガルに!」と淡い夢を抱く私。近所にある1歳半から入学できるモンテッソーリ教育の学校に興味があったけど、オープンハウス(学校見学会)は先月末ですでに終わってた・・・。なんて、悲しい事もある。

しかし、個人的に連絡を取れば、いつでも個人的に見学ツアーをしてくれる学校があるそうだ。その方が、見学会に向けて整理整頓された学校よりも、生徒が実際に遊んでいたり、勉強している姿を見る方が、よっぽど参考になるという。

逆に、「いつでも見せてくれない学校なんて、辞めた方がいい」。きっと、見せたくない部分があるに違いない!

続いての「D」は?

「Discipline」、しつけのことだ。

先生の言う事を守れなかった場合、悪さをした場合、学校がどう対応するのか? 叱り方が自分の教育方針に合っているかも見極めのポイントになる。

もう1つ、多様性という意味を持つ「Diversity」もNYでの学校選びには欠かせない。

ここは人種のるつぼ、ニューヨーク。居住地域によっては、8割以上ヒスパニック系が占めたり、アジア系の生徒が多く通う学校も・・・。どんな環境に自分の子供を起きたいのか、そこも重要になると言う。

最後の「S」は?

「Separation」、子供との分かれ方だ。

登校初日から、「はい、お母さんたちはここまで〜」と保護者と子供が離ればなれになるか、学校によっては、子供が慣れるまで親が教室に付き添っていい場合もあると言う。かわいい子には旅をさせろと見送るのか、慣れるまで見守りたいのか、要は自分がどうしたいのかが問われている。

もちろん、『TODS』とはいえ選ぶ基準は人それぞれだが、ある先輩ママさん曰く・・・

「自分の子育てと学校のフィロソフィーが合わないと、のちのち葛藤することになる」

自分のメモ書きで埋まった資料を手に思う事。まずは、幼稚園選びのその時まで、ゆっくり、じっくり子供と向き合って行こう。

NY在住フリーライター

NY在住元スポーツ紙記者。2006年からアメリカを拠点にフリーとして活動。宮里藍らが活躍する米女子ゴルフツアーを中心に取材し、新聞、雑誌など幅広く執筆。2011年第一子をNYで出産後、子供のイヤイヤ期がきっかけでママ向けコーチングの手法を学ぶ。NPO法人マザーズコーチ・ジャパンの認定コーチに。『「ダメ母」の私を変えたHAPPY子育てコーチング』(佐々木のり子、青木理恵著、PHP文庫)の編集を担当。

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