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これからのキャリアを考える ー 「外発的キャリアアップ」よりも「内発的キャリアデザイン」を大切に!

三城雄児治療家 ビジネスブレークスルー大学准教授 JIN-G創業者
内発的キャリアデザイン、キャリアは自分でデザインする(提供:イメージマート)

私たち日本人は、「キャリアアップ」という言葉をよく使います。このキャリアアップ(Career Up)という言葉は、英語圏ではあまり使われない和製英語です。日本人が好んで使う横文字単語の一つです。英語圏では、キャリアデザイン(Career Design)やキャリアディベロップメント(Career Development)という言葉を使うことが一般的です。

このことからもわかるように、私たち日本人には、キャリアを考える際に「会社の中でより上位階層を目指す」あるいは「より上位の会社を目指して転職活動をする」という無意識(前提となっている考え方、バイアス)があるように思います。

様々な企業でキャリアデザインワークショップをした際に、「会社と自分の関係を〇印を使って絵で表現してください」という課題を与えると、会社という大きい円の中に自分がいる絵を描く人や、会社と自分の円が分離した絵を描く人が多いようです。

このような無意識にもとづいてキャリアを検討する行動様式を、ここで「外発的キャリアアップ」と定義してみます。外発的キャリアアップは、自分の外側に何かを追い求める思考と行動を伴います。もっと上を目指したい、昇給したい、昇格昇進したい、いい会社にはいりたい、上司に褒められたい、などです。

一方で、英語圏でよく使われるCareer DesignやCareer Developmentという言葉の語感からは、自分自身が主語であり、自分自身が主体者である感覚を感じとることができます。

自分自身の内面に、大切にしたい価値感や自分自身が実現したい世界観などがまずあって、それを活かすためにキャリアを育てていく感覚です。

これを「内発的キャリアデザイン」と定義してみます。内発的キャリアデザインは、自分の内側にある根源的な欲求を満たしにいきます。やっていて心地がいい、身体が元気になる、過去の苦悩体験が活かされることで自己の過去が癒される、ずっと実現したかった世界をつくることができる、などです。

内発的キャリアデザインでキャリアを捉えている人に、先ほどと同じように「会社と自分の関係を〇印を使って絵で表現してください」とお願いすると、多くの場合、自分というものが一番大きい円で描かれていて、その円の中に手段としての会社が小さめに描かれる絵を描いたり、会社の円と自分の円が重なって表現される絵を描いたりします。外発的キャリアアップの方たちの絵とは対照的です。

「社畜」という言葉が流行ったことからも、日本では、会社の方が大きくて強い存在で、その会社の制約の中で自分を定義している人が多いのかもしれません。つまり、外発的キャリアアップの無意識を持つ人たちが多いのではと推察します。

・なんで私は評価されないのだろう、もっと評価されたい

・給料を沢山もらいたい、もっと早く昇進したい

・もっといい会社があるはずだ、もっと知名度の高い会社に行きたい

こうした外発的キャリアアップにおける欲求には限りがありません。上には上があり、下には下がある世界、そういう外側の世界と自分を比較して、常に自己否定感や自己肯定感のアップダウンを感じながら過ごしていきます。

一方で、内発的キャリアデザインにおける欲求は、自分自身の内面からでてくる感性にもとづく欲求なので、比較対象はありません。外側の世界に影響を受けることはなく、自分が喜べるものであればそれ自体が目的になります。

外発的キャリアアップと内発的キャリアデザインでは、モチベーションの源泉が異なります。

外発的キャリアアップは、不安と恐怖が栄養素です。このままではまずい、同期に後れを取りたくない、といった不安や恐れの感情にもとづいて発生するモチベーションです。

一方で、内発的キャリアデザインは、自分の感性(身体感覚)の喜びや癒しが栄養素です。身体や心が喜んだり癒されたりすれば、それ自体が幸福に直結します。身体や心が勝手に求めます。モチベーションという言葉をあえて使う必要もありません。なぜなら、やりたいというその感性には、理由がないから、説明する必要もないのです。

こう考えると、幸福なキャリアを描くためにも、内発的キャリアデザインの方が良さそうです。

さて、皆さんは、自分自身のキャリアをどちらで捉えていますか?

・外発的動機にもとづくキャリアアップなのか?

・内発的動機にもとづくキャリアデザインなのか?

僕は、ある時から内発的キャリアデザインで仕事をするようになりました。そして、後から振り返ってみると、沢山の仕事をしている自分に気づきました。大学教授、会社経営者、会社員、タイ古式ヨガマッサージセラピスト、などなど。すべてやりたいことをやっています。

外側に答えを求める外発的キャリアアップだけで考えていたり、不安と恐怖を源泉として動いていたら、このようなことにはならなかったと思います。もちろん、外発的キャリアアップの思考が今でも全くないという訳ではないのですが、それだけだと、エネルギーはでなかったし、気づけなかっただろうなと思います。

僕は、人と組織が本来の力を取り戻すのをみるのが本当に好きで、これは僕自身の人生経験や過去の出会いや問題意識からくる純粋な意欲なのです。そこを大切にしていたら、気づいたら沢山の外側の仕事が増えていました。探しに行ったというよりも、大切にしているものを表明していたら機会が向こうからやってきた感覚です。

キャリアを考えるときは、まずは自分自身の身体や心の声に、無意識の声に、耳を傾けてみてください。そこには、誰も真似できない、比較しようのない、本当の自分が実現したいものがあるはずです。これは、本当の自分を通じて実現されたがっているキャリアとも言えます。キャリアに感情があるとすれば、そのキャリアは、あなたという人生を使って活躍の場をつくりたがっているはずです。

内発的キャリアデザインを身につけ、自分の内側にある声に気づき始めると、なんだか運がよくなってきた感覚を得ることができます。だまされたと思って、まずは自分自身の内面にある欲求に、純粋に耳を傾けてみませんか?

治療家 ビジネスブレークスルー大学准教授 JIN-G創業者

早稲田大学政治経済学部卒業。銀行員、ベンチャー企業、コンサルファームを経て、JIN-G Groupを創業。グループ3社の経営をしながら、ビジネス・ブレークスルー大学准教授、タイ古式ヨガマッサージセラピストの活動に取組む。また、会社員としてコンサルファームのディレクターとしても活動し、新しい時代の働き方を自ら実践し、お客さまや学生に向け、組織変容や自己変容の支援をしている。組織/個人に対して、治療家として、東洋伝統医療の技能を活用。著書に「21世紀を勝ち抜く決め手 グローバル人材マネジメント」(日経BP社)「リーダーに強さはいらないーフォロワーを育て最高のチームをつくる」(あさ出版)がある。

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