OKサインは白人至上主義の印? 禁止の風潮にざわつくIT・通信業界 新たな「言葉狩り」への対応と限界

裁判所で「OKサイン」の手の形をつくるニュージーランドのモスク襲撃事件の被告(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 親指と人差し指を丸くつなげて作る「OKサイン」。普段何気なく使われるジェスチャーだが、近年は白人至上主義のシンボルとして、使用を戒める風潮が強まっている。一部報道では、SNSやメッセージのやり取りの絵文字からOKサインが外されるとの観測も出ており、IT・通信各社の動向が注目される。

 「言葉狩り」のように、特定のジェスチャーやボディランゲージをタブー視しようとする「仕草狩り」が今後、増えていくかもしれない。

 一方、日本の手話ではOKサインとほぼ同じ手の形が平仮名の「め」を表しており、そうした話法の変更まで検討しなければならないとは考えにくい。

 差別されていると感じる人に寄り添うことはもちろん必要だが、どこまで配慮し、どこから許容されるべきだろうか。

ユニバーサル・スタジオのスタッフ解雇

 米紙「USAトゥデイ」などによると、フロリダ州にある「ユニバーサル・オーランド・リゾート」で今年3月、着ぐるみを着た従業員が少女の肩に手を乗せ、OKサインをしてみせたことを理由に解雇された。一緒に撮った写真を見た母親がその仕草に気付き、問題が発覚した。ユニバーサル側は「私たちは二度とこの家族が受けたような経験をゲストにさせたくありません。容認できないことであり、申し訳なく思っています」(We never want our guests to experience what this family did. This is not acceptable and we are sorry…)と謝罪したという。

OKサインはWP?

 現状では恐らく多くの日本人は気にならないであろう、この従業員のOKサイン。2017年にネット上の匿名掲示板「4Chan」で、白人至上主義者たちの間で取り交わされる秘密の合図だとして、徐々に広まってきた。親指と人差し指で丸い輪っかを作り、3本の指を立てた手の形が「WP」(White Power; ホワイトパワー)の文字に見え、白人至上主義者を自認するサインとして使われ始めたとされる。

ADLより
ADLより

 2019年、ニュージーランドで起きた死者51人のモスク襲撃事件で、裁判所に出廷した被告も右手でOKサインを出していた(冒頭の写真)。男は白人至上主義を掲げていたようだ。

 懸念を強める反差別を訴えるユダヤ系団体「名誉毀損防止連盟」(ADL; Anti-Defamation League)は先月、極右などが用いる差別的なシンボルのデータベースに、OKサインを追加した。他には「ナチスの鉤十字」などが登録されている。

絵文字削除は行き過ぎ

 こうした風潮を背景に、米アップルの基本ソフト「iOS」の絵文字からOKサインがなくなるとの一部報道もあった。日本の通信大手各社は「OKサイン」をめぐる現状をどのように捉えているだろうか。

各社の「OKサイン」の絵文字(auのウェブサイトをもとに筆者作成)
各社の「OKサイン」の絵文字(auのウェブサイトをもとに筆者作成)

 最初にユニバーサルの従業員解雇のニュースが伝えられた今月上旬、日本人読者の反応は不思議がるコメントが目立った。また、背景や最近の動きを知った上であらためて問題の画像を見返したら納得した、といった声も聞かれた。

 白人を含む多くの人にとって、このOKサインは単に「OK、大丈夫」を示す意思表示であって他意はない。国が違えば、民族、文化が違えば、あるジェスチャーが全く意図しない別の受け止め方をされるケースは少なくない。誤解を生まないために、使う側が慎重になったり、相手にどう伝わるかを事前に調べて学んだりする努力は、するに越したことはないだろう。被差別意識を持つ人への配慮、理解は不可欠だ。

 ただ、過度に規制したり、自重したりすることには違和感を覚える。近年、「言葉狩り」に対して「行き過ぎだ」との批判が高まっているように、体の言葉=ボディランゲージまでも束縛されていくような社会は危機的だ。

 OKサインは、日本の手話で平仮名の「め」を表す形とほぼ同じだ。OKサインを使わない風潮が一層強まるような事態になれば、手話自体も変更するのだろうか。およそあり得ない。

 意図したものとは別のネガティブな意味合いを持つサインも、悪意なく使われ、そのことが相手にも確かに伝わるのであれば、許容されるべきではないだろうか。

 根源的には発話者、メッセージを発信する側の意識の問題だ。その意識が一部では悪意に満ちた差別的なものであるから、いっそ規制しようという動きにつながっていることも、被差別者の心情に照らせば理解はできる。ただし限度はある。

 この「論争の的となるシンボル」(controversial symbol<USAトゥデイ>)の議論は始まったばかりで、今後より深まっていくだろう。