国連が新型コロナ影響による食料への影響について協調呼びかけ その背景とは

 

 新型コロナウィルス感染症 (COVID-19、以下、新型コロナ)による世界の食料への影響について国際的な議論が始まった。世界で食料貿易が不安定化する中で日本の食料輸入が今後、他国の食料安全保障に影響をきたす可能性も出てきた。本記事ではその背景について説明する。

 日本のメディアではほとんど報道されていないが3月31日、国連の食料農業機関(以下、FAO)、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)事務局長が、新型コロナと食料安全保障や貿易について共同声明を出した(※1)。

 共同声明では、世界の多くの人々の食卓や食料安全保障が国際貿易に依存しており、各国の新型コロナによるパンデミック封じ込めのための行動が、世界の食料貿易と安全保障に影響を与えないよう、輸出制限などの措置を取らず協調する必要があると述べた。

 声明では、過去に起きた食料危機で低所得国や食料支援団体など「切実に食料が必要な」国々や関係機関に影響をもたらしたことも言及され、世界の食料安全保障を守るために団結し、新型コロナへの対応が意図しない基礎的食料の不足や飢餓を引き起こすことのないよう呼び掛けた。

  

食料輸出制限の動き

 国連機関らがこうした呼びかけをする背景には、食料輸出制限の動きが現実化していることがある。Bloomberg(※2)によれば、世界有数の小麦輸出国の一つカザフスタンは、小麦粉やジャガイモの輸出禁止を始めたという。世界三位のコメ輸出国ベトナムは、輸出の新規契約の一時停止措置を決めている。またFinancial Times(※3)によれば、新型コロナのパニック買いに加えて、ロシア・ウクライナが小麦輸出規制に動きが予想され、小麦価格を急騰させているという。

 ただしFAOが最近出した報告書“COVID-19 and the risk to food supply chains: How to respond?(新型コロナとフードサプライチェーンのリスク:どう対応するか?-引用者訳(※4))”では、世界の基礎作物であるトウモロコシ、小麦、コメ、大豆の備蓄はまだ十分在庫があるとされており、国際社会はパニックに陥る必要はないと主張している。その一方で戦々恐々なのが国際市場の影響を受けやすい食料輸入低所得国である。こうした国々は食料の輸出制限が進めば、たちまち食料不足に陥る可能性がある。 FAOもそうした国々に影響を及ぶことを認めておりパンデミックによる影響が、世界の飢餓やバッタ被害に悩むアフリカ諸国に及ぶことに警戒している。

 

新型コロナの影響はどこに

 世界食料安全保障にかかわる情報発信する国際農林水産業研究センターは、 新型コロナの途上国の影響を分析し、中でも国連貿易開発会議(UNCTAD)が緊急に出した報告書(The Covid-19 Shock to Developing Countries(新型コロナの途上国への影響―引用者訳))、2020年3月30日発表)に触れ、新型コロナに伴う世界的な経済低迷によって、とりわけ一次産品輸出に依存する途上国経済は2008年の世界金融危機を上回る打撃を受けることが予想されると警告している、と紹介する(※5)。

 しかしこうした国際機関の警告には、食料を貿易に依存するというそもそもの根本問題が語られていない。なぜなら国連らは世界の食料安全保障を貿易によって確保するという路線を継続しているからだ。食料貿易が戦後継続して拡大する中で、貿易における食料輸出国や多国籍企業の影響が大きくなり、世界で食料増産される一方で食料格差が開く問題あるフードシステムが確立された。2007-2008年に起きた世界食料危機では、その矛盾が露呈し、国際食料市場価格の高騰により、飢餓や食料不足が深刻化した。

 FAOも世界の矛盾あるフードシステムが食料廃棄や格差を生んでいることを認めている。また国際市民社会では、食料貿易こそが各国の食料自給率を低下させ、飢餓と食料格差の根本原因であると批判されてきた。

 

日本でどう受け止めるか

 こうした状況を世界有数の食料輸入国である日本はどう受け止める必要があるのだろうか。まず考えたいのは、国家として安易な食料安定確保を目指さないことだ。平成の米騒動と呼ばれた1993年には、国内のコメ不作で東南アジアから緊急輸入を行い、国際コメ価格高騰の引き金となり、セネガルなどアフリカのコメ消費国でコメ不足を引き起こした。

 一方で日本は主食の備蓄量増加を目指すべきではないか。仮に食料輸入の影響や国内で不作起こった場合、食卓に大きな影響が及ぶことが予想される。