G20サミット、日本メディアの偏向性が生む問題 ~G20大阪サミットに残された問い、市民社会の声

G20サミットに参加する日本・安倍総理大臣、米国・トランプ大統領ら(写真:ロイター/アフロ)

G20サミットとは

 アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで開催されていた20カ国・地域(G20)首脳会議、通称G20サミットが1日(日本時間2日未明)に閉幕した。外務省によるとG20サミットとは、G7(仏、米、英、独、日、伊、加、)、欧州連合(EU)、亜、豪、ブラジル、中、印、インドネシア、メキシコ、韓、露、サウジアラビア、南アフリカ、トルコの首脳が参加する国際会議で、リーマン・ショックを契機に経済・金融危機に対処するため、従来のG20財務大臣等会議を首脳が参画する会議に格上げし毎年開催されるようになったとされる。2019年のG20サミットは、日本の大阪で開催されるためメディアでも注目が集まっている。

G20ブエノスアイレス・サミットの国際メディアセンター(撮影:堀内葵(JANIC:国際協力NGOセンター))
G20ブエノスアイレス・サミットの国際メディアセンター(撮影:堀内葵(JANIC:国際協力NGOセンター))

  

 

メディアが取り上げなかった議題

 G20ブエノスアイレス・サミットでは、各国の対立で採択が心配されていた首脳宣言も無事合意され閉幕したが、現地の会議に参加するNGO(非政府組織)から日本のG20サミット報道に偏りがあるとの声が上がっている。

 日本のメディア報道のどこに問題があったのか。2019・G20サミット市民社会プラットフォーム事務局としてG20サミットに参加する堀内葵氏(国際協力NGOセンター、以下JANIC)は「日本メディアは貿易摩擦や保護主義を巡る議論を紹介するのみで、議長国アルゼンチン政府が推す主要議題には触れておらず不十分な報道内容」と指摘する。

 G20ブエノスアイレス・サミット首脳宣言をみると確かに、日本のメディアでは取り上げられていない議題が並んでいる。中でも堀内が指摘するアルゼンチン政府が設定した主要議題についての言及はほとんど見られない。

 今回のサミット閉幕後日本がG20議長国を引き継いだ中で、このメディア報道の偏りは大きな問題を孕む。なぜならG20の運営はトロイカ体制と呼ばれ議長国が前議長国(アルゼンチン)並びに次期議長国(サウジアラビア)と協力し緊密に連携して会議開催を行うことになっているからである。

国際非営利組織法センターら主催のサミット関連イベント「金融・銀行のリスク回避行動」で登壇する堀内葵氏(撮影:稲場雅紀)
国際非営利組織法センターら主催のサミット関連イベント「金融・銀行のリスク回避行動」で登壇する堀内葵氏(撮影:稲場雅紀)

 

アルゼンチン議長国提案とは

 アルゼンチン政府が設定したG20サミット主要議題は次の4点で、首脳宣言「公正で持続可能な発展のためのコンセンサスの構築」でも大きく取り上げられた(※1)。

1.仕事の未来(Future of Work)

2.開発のためのインフラ(Infrastructure for Development)

3.持続可能な食料文化(A Sustainable Food Culture)

4.上記すべてに関わるものとしてのジェンダー視点(Gender Perspective)

 こうした議題は、G20大阪サミットでも引き続き大きな論点となる。例えば、サミット閉幕時に安倍総理大臣は「アルゼンチンが優先課題の一つとして掲げた開発のためのインフラを引き継ぎ、我が国が推進してきた質の高いインフラを通じて、連結性を強化したい」と発言したということだ(堀内氏談)。日本のメディアや市民社会でもその内容を検討することが必要といえるであろう。

 ここでは筆者の専門分野である議題3の持続可能な食料文化について、現地のNGOからの情報や政府関係資料を参考にしてその議論を紹介しよう(この議題は首脳宣言で言及されているが外務省の首脳宣言の主要なポイントのまとめからはすっぽり抜け落ちている)。アルゼンチン・生産労働省・アグロインダストリー部門・大臣秘書官(Argentine Secretary of Agroindustry)の記者会見に参加した堀内氏によると、会見では「日本への牛肉の輸出、中国との投資協定、ロシアとの漁業協定について言及され、会場ではアルゼンチン農産物であるマテ茶や蜂蜜、ワインなどがPRされ有機農業推進の取り組みも紹介された」ということだ。

 また会見の配布資料では、アルゼンチンが世界7番目の農業大国で4億人に食料を供給し、農業者の9割が持続可能な不耕起農法に取り組む一方で世界三番目の大豆生産国であると、自国の農業生産の特徴が紹介されている。しかし現地NGOによるとアルゼンチンはまた世界有数の遺伝子組換え作物栽培国であり、農村では農薬による深刻な被害も報告されている。

アルゼンチン・生産労働省・アグロインダストリー部門・大臣秘書官(Argentine Secretary of Agroindustry)の記者会見(撮影:堀内葵(JANIC))
アルゼンチン・生産労働省・アグロインダストリー部門・大臣秘書官(Argentine Secretary of Agroindustry)の記者会見(撮影:堀内葵(JANIC))

G20大阪サミットに向けて

 首脳宣言の食料安全保障の部分では、「飢餓や栄養不良のない世界を実現するために重要な食料安全保障の課題に対処」の方策として「農業食料グローバル・バリューチェーンにおける付加価値、生産性、効率性、持続可能性及び品質向上を促進」が明記された。

 しかし世界では、農業・食料グローバル・フードチェーンこそが世界の食料格差を拡げる要因という批判もあり、宣言が目指す目的とのズレがある内容ともいえる。世界有数の食料輸入国でもある日本での開催では、真の意味でグローバルな観点から持続可能な食料文化について議論を進める必要があるといえる。

 2019年のG20サミットは6月28~29日に大阪で開催される。G20サミットで行われる決定をより良きものにするために、世界のNGO/NPOをはじめとする市民社会が様々な働きかけを行っており、日本でも開催国の市民社会として責任を果たすべく「2019 G20サミット市民社会プラットフォーム」が設立されている(※2)。

 金融・世界経済に関する首脳会合とも呼ばれるG20サミットは、加盟国GDPが世界の約8割以上を占め、経済分野で大きな影響力を有する。主要議題は基本的に経済分野だが、世界経済や貿易・投資に加え気候やエネルギー、雇用など幅広い関連分野も議論され市民社会に直結する内容も多い。だからこそその議論においては、グローバルな市民益をふまえて行われるべきといえる。日本のメディアも多角的な視点から情報発信をしてくことが求められるであろう。

G20ブエノスアイレス・サミット首脳宣言を持つ2019 G20サミット市民社会プラットフォーム事務局メンバー。宣言への意見を募り来年のサミットに生かしたいと述べる(撮影:アルゼンチンNGO関係者)
G20ブエノスアイレス・サミット首脳宣言を持つ2019 G20サミット市民社会プラットフォーム事務局メンバー。宣言への意見を募り来年のサミットに生かしたいと述べる(撮影:アルゼンチンNGO関係者)

(※1)G20ブエノスアイレス・サミット首脳宣言(骨子、仮訳)サミットの主な成果については、外務省HPで公開されている。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page23_002490.html

(※2)2019 G20サミット市民社会プラットフォームは、2018年11月に設立され東京と大阪で活動を展開している。

http://www.civil-20.jp/

☆G20ブエノスアイレス・サミットのさらなる情報に関しては、上記2019 G20サミット市民社会プラットフォームのサイトや堀内葵氏のサイトを参照のこと

FB:https://www.facebook.com/aoi.horiuchi

Twitter:https://twitter.com/aoihoriuchi/status/1068714546922180608