なぜ広島で集中豪雨となったのか?
20日未明からの広島市内で集中豪雨により、大規模な土砂災害が発生しました。
広島市安佐北区では、午前4時半までの3時間に217.5ミリと、この地点としての観測史上1位の雨量を観測。一方、同じ広島市内でも、中区にある気象台では同時間の雨量は10ミリほどで、豪雨は局地的だったことが分かります。
高温多湿の空気が生んだ積乱雲
大きな災害が発生する時は、広い範囲での要素と、狭い範囲での要素が絡み合います。
今回、広い範囲の要素としては、日本海に前線が停滞していたことが挙げられます。前線の南側には、高温多湿の空気が充満し、九州から中国地方などに広がっていました。
この高温多湿の空気が、上昇した所で、強い雨を降らせる活発な積乱雲は発生しやすくなります。
風向き変わらず次々と積乱雲
では、なぜ限られた場所にだけ、活発な雨雲が発生したのか。
狭い範囲の要素としては、積乱雲を動かす「風」が挙げられます。
地面近くでは、南からの風が吹いていました。この風に運ばれた高温多湿の空気が、山口県~広島県の山地にぶつかるなどして上昇させられ、活発な積乱雲が発生。
一方で、上空の風は南西から北東へ。この風に積乱雲が次々と流され、風下の広島市安佐北区周辺などにかかり続けることになりました。
風向きが少し変われば、積乱雲の流される場所が変わり、豪雨が続くことはなかったはずです。今回は、「風向きに大きな変化がなかった」ことが、豪雨につながった一因と考えられます。
さらに詳細な原因については今後、コンピューターによるシミュレーションなどで明らかにされていくでしょう。
豪雨は予測できたのか?
「広島県で大雨の恐れがある」という気象情報が、気象台から出され始めたのが、前夜の22時半頃。その後、大雨警報より危険が差し迫っていることを伝える「土砂災害警戒情報」が出されたのが午前1時15分で、災害発生の2~3時間前です。
大雨の危険を、半日前や一日前から示せることも増えてきていますが、リードタイムを十分にとって予測できないことも、まだまだあるのが現実です。特に、今回のような狭い範囲の激しい現象が、予測の隙をついてくることは、すぐには無くならないでしょう。
そうなると、この「2~3時間」を、身を守るためにどう使うかです。
今回は、深夜ということもあり、情報伝達の難しさが改めて浮き彫りになりましたが、緊急地震速報のようにアラートを鳴らすなどといった、具体的な対策を検討していく必要があるのではないでしょうか。