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黄砂の予測はなぜ過剰に出るのか?

増田雅昭気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
22日の黄砂予測図(気象庁HPより)。実際には、発生源で黄砂が観測されていない。

気象庁のホームページで公開されている「黄砂予測図」。日本への黄砂の飛来が、頻繁に予測されますが、実際には飛来していない場合が多いです。今の黄砂の予測には、大きな弱点があります。

スタートから違っている

今のコンピューターによる黄砂予測の大きな弱点は、「実際に黄砂が飛んでいるか分からないまま、その先を予測している」ということです。

簡単に言うと、黄砂の発生源である中国~モンゴルの砂漠地帯や黄土地帯で、積雪がない、土壌の水分が少ないなどの際に、風が強いと予測されると、「黄砂が飛ぶだろう」として、その後の飛ぶ様子を計算するのです。

ただ、そういった場合でも、本当に黄砂が巻き上がっているとは限りません。実際、コンピューターが「黄砂が舞い上がるだろう」とした日でも、発生源近くの中国やモンゴルでは黄砂が観測されていないことがよくあります。

そういう場合は当然、発生源で舞い上がっていないわけですから、日本へも飛んできません。

なのに、コンピューターは、勝手な推測で「発生源で舞い上がった“だろう”。それが風に乗って日本へ来る“だろう”」と予測し、結果的に過剰となるわけです。

もちろん、気象庁もその弱点は把握していて、黄砂が実際に飛んでいるかどうかを計算に組み込むよう改良に取り組んでいる最中です。

情報を確かめることの大切さ

13年3月に、関東で大規模に砂ぼこりが舞い、「黄砂か?」と大騒ぎになったことがありました。ただ、実際は関東平野の砂ぼこりなどが舞ったもので、黄砂は飛んできていませんでした。

我々、気象予報士は、実際の大陸での黄砂の状況や、風の流れなどを確認しています。そのうえで、コンピューターの予測が適切かどうか判断し、本当に飛んできそうだ、という時に注意喚起を行います。

ですので、たまに実際の状況を確認せず、予測図だけから「黄砂が来る」という情報が流れているのを見ると、残念な気持ちになります。

もちろん、みなさんも実際に黄砂が飛んでいるかどうか確認できます。各国の気象台(人)による観測や、自動観測が、ネット上で公開されています。

■黄砂情報提供ホームページ:

http://www.data.kishou.go.jp/obs-env/kosateikyou/kosa.html

コンピューターの予測は、一見、本当らしく見えてしまいます。

ただ、「今どうなっている」のスタートが間違っていると、その後の予測はあてになりません。天気予報の世界において「観測」が重要視される理由は、ここにあります。

見栄えが良い情報を鵜呑みにせず、実際に起こっていることは何かという情報を確かめるようにしてください。

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気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

TBSテレビ・ラジオ気象キャスター。大学在学中に気象予報士を取得し、民放キー局の報道番組に学生予報士として出演。気象キャスターに携わりながら、企業への予報やアドバイザーも長年担当し、甲子園での高校野球の大会本部気象担当を務めたこともある。災害から身を守る気象情報の使い方など講演も行うほか、Twitterで気象情報を毎日発信。著書に『TEN-DOKU クイズで読み解く天気図(ベレ出版)』がある。1977年滋賀県甲賀市生まれ。

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