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富士山山開き。ひとあし早く山頂まで行ってきました

増田雅昭気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
山開きを間近に控えた吉田口の登山道

7月1日(月)は、富士山の山開き。今年は世界文化遺産に登録されたことで、例年以上に登山者が増えることが予想されていますが、年によっては、積雪のため山開き時点で山頂まで行けないこともあります。

今年はどうなのか。先日、登山道で行われた雪かきを、取材してきました。

今年は残雪が少ない

吉田口登山道でおこなわれた、雪かきなどの登山道整備。写真は9合目(標高3600メートル)付近。
吉田口登山道でおこなわれた、雪かきなどの登山道整備。写真は9合目(標高3600メートル)付近。

山開きを前に、山梨県側の吉田口登山道では、山小屋関係者やガイドの方々によって、雪かきなど登山道の整備が行われました。

6月末でも、多い年だと8合目付近より上に積雪があって、深い所で2~3メートルの雪が残っていることもあるそうです。ただ、今年は山頂付近でも10~20センチ前後の雪が、登山道の数か所にあった程度。避けて通れる状態で、山頂まで雪に邪魔されることはありませんでした。その後の山梨県などの調査で、山頂まで開通はOKに。

今年は、春の時点で積雪が少なかったうえ、富士山頂での自動観測によると、5月後半から6月の気温が平年を上回る日が多く、早く雪解けしたと考えられます。

静岡県側も、御殿場口登山道、須走口登山道は山開きから山頂まで行けるとのこと。富士宮口登山道は、残雪などの影響で、山頂まで行けるのは8日からの予定だそうですが、それでも雪の量は例年より少ないそうです。

近年は異様に雪が多かった

山頂火口の反対側から望む旧富士山測候所
山頂火口の反対側から望む旧富士山測候所

2004年に富士山頂での気象庁職員による有人観測が終了して以降、公式な積雪の観測は行われておらず、雪の量に関しては、我々も関係者のお話に頼るしかありません。

山小屋関係者やガイドの方々のお話によると、ここ6年ほどは異様に積雪の多い年が目立ったそうで、雪が少ないのは久々だそうです。

富士山にまとまった雪をもたらすのは、本州南岸を東へ進む「南岸低気圧」です。この低気圧は、冬型の気圧配置が崩れる春先に多く発生し、富士山の積雪は概ね4月後半にピークを迎えます。今春は南岸低気圧の発生がそれほど多くなく、それが富士山の積雪にも影響したようです。

雪少なければ、雷多し?

富士山頂。晴れても、あっという間に雲の中に入ることも。天気の急変に気が抜けない。
富士山頂。晴れても、あっという間に雲の中に入ることも。天気の急変に気が抜けない。

雪が少なかった年の夏はどういう天候だったのか?積雪の観測記録が残る2004年までを調べてみました。

すると、1990年以降の15年間で、春に雪が少なかった年と多かった年に分けると、雪が少なかった年は多い年よりも、7月の富士山の雷日数は平均約2倍に。

積雪の多寡によって地表面の熱量が変わり、大気の流れに影響を与えている可能性もあるのかもしれませんが、ハッキリしたことは分かりません。

ただ、7月と8月だけでも、平均的に6日~7日は雷が起こる富士山。今年はそれより多くなる可能性もあるわけです。

もし雷に遭遇したらどういう行動をとるのか。体力が低下して苦しい中で、ベストな判断はできないかもしれないというのが、登った際の実感です。登る前に、「ここの場所で遭遇したら、どこに進むか、戻るか」といったことをイメージしておくのは大事だと思います。

世界遺産に登録決定! 富士山頂の気候とは(片平敦 6月22日)

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

TBSテレビ・ラジオ気象キャスター。大学在学中に気象予報士を取得し、民放キー局の報道番組に学生予報士として出演。気象キャスターに携わりながら、企業への予報やアドバイザーも長年担当し、甲子園での高校野球の大会本部気象担当を務めたこともある。災害から身を守る気象情報の使い方など講演も行うほか、Twitterで気象情報を毎日発信。著書に『TEN-DOKU クイズで読み解く天気図(ベレ出版)』がある。1977年滋賀県甲賀市生まれ。

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