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年末年始は大雪予想 緊急時に心配される「一酸化炭素中毒」対策のポイントは?

市川衛医療の「翻訳家」
画像:FUKKKO DFESIGN/JVOAD

この年末年始は、北日本から西日本に強い寒波が襲来すると予測されています。

先日、新潟や群馬に記録的な大雪を降らせた寒気のように、積雪が急増したり、太平洋側でも降雪のおそれがあるとされています。

年末寒波で大雪のおそれ 東京は元旦に氷点下の可能性(ウェザーニュース12月24日)

前回の大雪では、新潟、群馬県の関越自動車道の上下線で、最大時でおよそ2000台の車が立ち往生し、52時間にわたって動けなかったケースもあったといいます。

東日本高速が新潟県に謝罪 関越道の大雪立ち往生で(産経新聞12月22日)

もし、車に乗っていて大雪による渋滞などで立ち往生し、救助を待つときに必要なことはどんなことでしょうか?また、万が一の時のために、どんなものを準備しておけば良いのでしょうか?

エンジンは切るべき?心配される一酸化炭素中毒とは

大雪の中で長時間動けないわけですから、窓を閉めエアコンをつけて暖をとりたいもの。ただそのときに気を付けたいのが、一酸化炭素中毒のリスクです。

長時間停車した際、排気口(マフラー)や外気の取り入れ口が雪で埋まると、排気ガスが車内に入り込む危険があります。

排気ガスに含まれる一酸化炭素は、血液中で酸素を運ぶ役割をしているヘモグロビンと非常に結びつきやすい性質があります。そのため、あまり吸い込むと、血液が酸素を運搬できなくなり、体内で酸欠状態が起きてしまいます。

軽度のうちは軽い頭痛や疲労感などが起き、重度になると判断力の低下、錯乱が起き、意識を失ってしまうこともあり、最悪の場合は命にかかわります。一酸化炭素は無色・無臭・無刺激で、車内にたまっても気づきにくいことが、対策を難しくします。

JAF(日本自動車連盟)が行った実験では、クルマの周囲を雪で埋め、ボンネットの上まで雪を被せた状態でエンジンをかけ、空調を外気導入モードにして車内の一酸化炭素の濃度の変化を調べました。

すると、16分後に一酸化炭素の濃度は400ppmに上昇し、その後6分で1,000ppmに達しました。1,000ppm を超えるような高濃度の一酸化炭素を吸うと、短時間で昏睡→心肺停止→致死の危険があるとされます。

なお実験では、5センチほど窓を開けていた場合も調べましたが、マフラー付近が雪で埋まっていた場合、風向きや風の強さによっては換気がうまくいかず、一酸化炭素がたまってしまう危険性があることもわかりました。

雪に埋まった車
雪に埋まった車写真:陸上自衛隊/ロイター/アフロ

車内で救助を待つ場合は、原則エンジン停止 つける場合は排気口付近をこまめに除雪

そこで、車が埋まるほどの大雪の際に車内で救助を待つ場合、十分な防寒対策を取ったうえで原則エンジンは停止することが勧められています。

防寒などを目的にやむをえずエンジンをかける場合は、排気口(マフラー)付近をこまめに除雪することが大事です。

実際、上記のJAFによるテストでは、クルマがボンネットの上まで雪で埋まった状態でエンジンをかけても、マフラー周辺を除雪しておいた場合は、車内の一酸化炭素濃度はほとんど上がらなかった、という結果が出ています。

とはいえ、天候や状況によっては短時間のうちにクルマが雪に深く埋まってしまい、除雪不能な状態になることもありえます。万が一に備え、冬場の運転の際は除雪用のスコップのほか、防寒着や毛布、寝袋などを車内に用意しておくことが勧められます。

暴風雪時の歩行や運転の際に気を付けたいその他のポイントについては、下記の図を参照してください。

画像:FUKKKO DFESIGN/JVOAD
画像:FUKKKO DFESIGN/JVOAD

なお、車内に長時間閉じ込められるようなケースでなくとも、例えば大雪の日に除雪のために自家用車を移動させようとしたところ、一酸化炭素中毒で死亡したケースも報告されています(除雪のために移動した自家用車内で一酸化炭素中毒となり死亡 職場のあんぜんサイト)。

上記では、豪雪時に除雪するの際の注意点として、下記のことが指摘されています。

  1. 豪雪時は除雪を延期する、または複数で行う。
  2. 車両で待機することなく、近くの建物に避難する。
  3. 一酸化炭素中毒についての教育を十分に行う。

知っておきたい「冬の荒天」への備え

急な大雪や暴風雪などによるリスクは、一酸化炭素中毒だけではありません。低体温や転倒、さらには雪下ろし中の転落などで毎年命を落とす人が報告されています。

とはいえ筆者自身、東京在住でふだん雪に慣れていないため、急な大雪や暴風雪の際にきちんとした対応ができるか、と言われると自信がありません。

こうした気を付けておくべきポイントと対策法について、一般社団法人FUKKO DESIGNなどが中心となり、専門家の有志がまとめた対策資料「コロナ禍でもすぐできる!冬の荒天への備え2020年版」が無料公開されています。(ちなみに筆者も、たいへん微々たることですがアドバイスをさせていただきました)

この後に資料の画像を貼りつけておきますので、荒天が予測されるこの年末年始に備え、よかったら目を目を通してみてください。筆者もじっくり読み、とても参考になりました。なおPDF版はこちらでダウンロードできます。

画像:FUKKKO DFESIGN/JVOAD
画像:FUKKKO DFESIGN/JVOAD

画像:FUKKKO DFESIGN/JVOAD
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医療の「翻訳家」

(いちかわ・まもる)医療の「翻訳家」/READYFOR(株)基金開発・公共政策責任者/(社)メディカルジャーナリズム勉強会代表/広島大学医学部客員准教授。00年東京大学医学部卒業後、NHK入局。医療・福祉・健康分野をメインに世界各地で取材を行う。16年スタンフォード大学客員研究員。19年Yahoo!ニュース個人オーサーアワード特別賞。21年よりREADYFOR(株)で新型コロナ対策・社会貢献活動の支援などに関わる。主な作品としてNHKスペシャル「睡眠負債が危ない」「医療ビッグデータ」(テレビ番組)、「教養としての健康情報」(書籍)など。

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