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教員の働き方改革「直ちに取り組む施策」に期待するのは、現場丸投げにならないことだ

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:イメージマート)

 中教審(中央教育審議会)の「質の高い教師の確保」特別部会は6月26日に第1回会合を開き、そこで貞廣斎子部会長が「(教員の働き方改革について)直ちに取り組むべき施策に関し、他の検討事項に先だって整理を行うことにしたい」と述べ、『教育新聞』(6月26日付 Web版)は「7月下旬に予定される次回会合で、教員の働き方改革に向けて緊急提言の策定に取り組む考えを表明した」と伝えている。

 そう聞くと、緊急提言には即実行できる策が盛り込まれ、教員の働き方改革は改善に向かって大きく動きだすのか、と期待してしまう。

|誰が「ただちに行う」のか?

 特別部会の審議では、「着手できることは直ちに行う姿勢が重要」といった発言が相次いだそうだ。教員の働き方が「限界」にきていることは、出席した委員の共通した認識のようだ。そうした認識がないのなら委員になる資格はない、といえるのかもしれない。

 ただし、「教員がいかに魅力的な仕事である」ことを緊急提言で発信すべきと述べる委員もいたという。大事なことではあるが、ただ抽象的な目標を掲げるだけの方向に引っ張る危険性もあり、それでは緊急提言の意味がない。

 緊急提言の「直ちに取り組む施策」は、あくまで具体的で、かつ即実行可能なものでなければならない。しかも、「働き方改革を急げ」と学校現場に抽象的な指示を丸投げするようなものでも、実効性はあがらない。

 むしろ、文科省や教育委員会が率先してやるような施策こそが必用なのではないだろうか。たとえば山梨県は今年4月、国などから教育現場に対してだされる通知や連絡などの内容を事前に県教育委員会で精査し、事務処理の負担軽減を目指す「文書半減プロジェクト」をスタートさせることをあきらかにしている。

 現場に丸投げするのではなく、教育委員会みずからが、率先して教員の負担を軽減し、働き方改革を前進させる努力をしている、というわけだ。それなら、そもそも国、つまり文科省が通知や連絡を精査して減らせば、かなりの負担軽減につながることになる。「直ちに取り組める施策」でもあるはずだ。

「直ちに取り組む施策」を、わざわざ「緊急提言」するのなら、なにより文科省や教育委員会が、すぐに実行すべきことを示すべきではないだろうか。それなら、効果も大きいにちがいない。それを優先してこそ、「教員の魅力」も引き出されるにちがいない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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