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教員不足で尻を叩かれる校長たちは悲鳴をあげている

前屋毅フリージャーナリスト
(提供:イメージマート)

「とっくに、精一杯やっているのに」という校長たちの悲鳴が聞こえてきそうだ。文科省は教員免許をもっている人材の掘り起こしなどに積極的に取り組むよう求めているが、実際に取り組んでいる校長たちの努力を軽視しているようにも聞こえてしまう。

|とっくに掘り起こしには必死になっている

「自分たちは、できうるだけの手段をこうじて取り組んでいます」と、ある公立小学校の校長は言った。そして、「私たち現場に任せるだけでなく、教育委員会、もっと言えば文科省が実質的な取り組みをして欲しい」とも言った。

 6月20日、文科省は都道府県教育委員会や政令市教育委員会に、教員免許をもっている人材の掘り起こしなどに積極的に取り組むよう通知した。「努力が足りない」と言っているようだ。

 その通知をだしたのは、教員不足が悪化しているからである。文科省が都道府県や政令市の教育委員会に2023年度の始業日における状況を尋ねたところ、2022年度と比べて「悪化した」との回答が4割を超えたという。実際、「担任がいないクラスがある」といった現場からの声も珍しくない。

 この状況を改善するために文科省は、各教育委員会に掘り起こしなどの対策を求めたことになる。これを受けての教育委員会の動きは、各学校長へ掘り起こし強化の指示をすることになる。教育委員会が教員免許所持者に直接連絡するのではなく、校長にやらせる、というわけだ。

 しかし、すでに多くの学校長は躍起になって掘り起こしに取り組んでいるのが現状である。決して、怠けているわけではなく、必死である。それでも、教員不足が起きてしまっているのだ。

 校長が言葉を尽くして説得したところで、教員免許所持者が簡単に応じてくれないのも現実である。そもそも教員免許をもちながら教員という職業を選択していない人たちは、学校の現状に不信と不満をもっているからこそ拒否している。

 それが改善、解決されなければ、教員になろうとはおもわない。説得にあたっている校長は、その改善・解決については、ほぼ力がない。そういう立場で勧誘してみても、説得力に欠けるのは当然である。

|丸投げの丸投げ

 改善・解決について、校長より権限をもっているのは教育委員会である。その教育委員会が改善・解決のための具体策を示しながら、勧誘・説得を行えば、応じる人はいるかもしれない。それを教育委員会はやらないで、ただ校長に「やれ」と言うだけなのだ。

 もっといえば、文科省は改善・解決の権限をもっているはずだ。その文科省が具体策を示して掘り起こしに取り組めば、事態は変わるかもしれない。それをやらないで、ただ「努力せよ」の通知をだすに留まっている。

 これでは掘り起こしも成功する可能性は低く、教員不足が解消できる明るい見通しもたたないのは当然ではないだろうか。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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