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「教師不足」は「非正規教員だけの不足」なのか?という違和感

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:アフロ)

 文科省の行った「教員不足」の実態調査が注目されているようだ。しかし、「足りないのは非正規教員」と言っているような内容はシックリこない。

|全国で2558人の教員不足

 1月31日に行われた中央教育審議会の「『令和の日本型教育』を担う教師の在り方特別部会基本問題小委員会」の第2回会議で文科省が資料として配布したのが、「『教師不足』に関する実態調査」(以下、「調査」)である。

 文科省としては初の実態調査ということでも注目されているようだが、教員不足は以前から問題視されてきたことだ。そのため、「ここにきて、ようやく初めての調査か」と文科省の腰の重さを指摘する声も聞かれる。

 とはいえ「調査」では、昨年4月の年度当初時点で全国の公立小中高校・特別支援学校で2558人の教員が不足していたことを明らかにしている。文科省も教員不足を正式に認めたことになり、その意味は大きい。

 ただし気になるのは、「調査」での「教師不足」の定義である。その定義として、以下のように記されている。

「臨時的任用教員等の確保ができず、実際に学校に配置されている教師の数が、各都道府県・指定都市等の教育委員会において学校に配置することとしている教師の数(配当数)を満たしておらず欠員が生じる状態を指す」

 臨時的任用教員とは、いわゆる非正規教員を指している。つまり、非正規教員の不足を教員不足としていることになる。

 教員不足の要因を「調査」では、「産休・育休・病休者数の増加、特別支援学級数の増加により、必要な臨時的任用教員が見込みより増加したこと」としている。産休・育休、さらには病休者による穴は非正規教員だけで埋めるという前提だ。

|正規教員そのものが不足している

 しかし、それは、そもそも正規教員が不足しているから起きることである。産休・育休・病休者が出ることを前提にして、正規教員数を確保しておいてもいいはずである。病休者の増加傾向が止まらないのも過重労働が大きな要因であり、それも正規教員を増やすことで軽減できることである。非正規教員でしか補えないことではない。

 その非正規教員の労働環境は、じつに厳しい状況にある。非正規教員でも学級担任を任されるケースは少なくないし、正規教員と同様の過重労働を強いられてもいる。それでいながら正規教員にくらべて低賃金だし、将来的な補償もない。

 低賃金で都合良く働かされているのが非正規教員の実態なのだ。雇う側にしてみれば、だから正規教員ではなく非正規教員を増やしたいのだ、とも言える。「調査」では非正規教員の名簿登録者数が減少していることも教員不足の要因としているが、そんな過酷な労働環境では希望者が減るのも当然である。

「調査」では教員を確保するための取り組みとして、「学校における働き方改革の推進など勤務環境の改善を含めた教職の魅力向上」をあげている。しかし、低賃金で都合良く働かされる非正規教員の労働環境を根本的に変えないかぎり、働き方改革の推進も教職の魅力向上もあるはずがない。現在の非正規教員も正規教員にしていく施策こそが必要だし、正規教員も増やしていかなければ過重労働問題は解消しない。

 にもかかわらず、教員不足を「非正規教員だけの不足」と言い換えるような文科省の姿勢では、状況の改善は期待できそうもない。いつまでたっても教員不足は解消されないだろう。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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