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外国ルーツの子の保護者も驚いた「学研教室」の秘密

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:アフロ)

●問題児が急成長

 日本企業に勤める中国人のMさんは、公立小学校中学年の男の子の父親でもある。いわゆる「外国にルーツをもつ子ども」というわけだ。Mさんが興奮気味に語った。

「学校では問題児あつかいされていたのに、ある学習塾のおかげで、すごく成長したんですよ。もう、びっくりしています」

 Mさんの息子が「問題児あつかい」されていたのは、日本語の力が不足していたからである。家庭では両親の母国語である中国語で会話しているので、それも無理はない。Mさんが続ける。

「うまく日本語が使えないので、友だちとケンカになっても、言葉で反論できないので、手がでてしまう。当然といえば当然なのですが、授業にもついていけないので成績も悪い。学校からは、『知能指数(IQ)が低いのではないか』とも言われてしまっていました。しかし私は、自分の子どもがIQが低いとはおもえない」

 Mさんの息子だけでなく、日本の学校でIQが低いと評価されてしまっている「外国にルーツをもつ子ども」は増えてきている。そのため、特別支援学級にいかされる例も少なくない。

 IQテストは日本語で行われる。日本語が不自由であれば、結果が低くなるのは当然でもある。それを理由に特別支援学級にいかされるのは、通常級では面倒をみきれないからにほかならない。

●学校には欠陥がある

 教室では当然だが日本語で授業されるので、日本語が不自由だとペースについていけない。そういう子をフォローしながら授業をしていけば、授業ペースはどんどん遅れることになる。そうならないためには、「外国にルーツをもつ子ども」を置き去りにするか、特別支援学級に放り出すしかなくなる。そこからは見えてくるのは、「外国にルーツをもつ子ども」を支えていく力に欠けているという学校の現実である。

 Mさんの息子も、そうした学校の被害者のひとりでしかない。それが、ある学習塾にかよいはじめて「激変」したというのだ。もちろん、良い方向に、である。

 その学習塾とは、学研エデュケーショナルの「学研教室」である。Mさんの息子は、同教室の「鷹番3丁目教室」と「荏原4丁目教室」を運営する向井かつえさんの指導を受けた。向井さんが言う。

「『外国にルーツをもつ子ども』だけを対象にした特別なコースがあるわけではありません。そういう子に対しても、日本人の子どもたちと、まったく同じ指導をしています」

●「外国にルーツをもつ子ども」も伸びる指導

 学研教室は全国に1万5000ほどの教室があるが、「外国にルーツをもつ子ども」が在籍しているところもは少なくないそうだ。それだけ、「外国にルーツをもつ子ども」は増えている。

 といっても、どこも特別なコースを設けているわけでもないし、そういう子たちを特別に集めようとしているわけでもない。それでも、Mさんが感激するほど「外国にルーツをもつ子ども」に対して効果的な指導をしているのだ。学校ではやれないことが、学研教室ではできている。

 それは、どんな指導なのか。向井さんが、次のように説明した。

「ひとことで言えば、学年を戻ることです。学研教室では、学習指導要領にもとづいた各学年の各時期に応じた教材を本部でつくっています。それを子どもたちが個々のレベルに合わせて問題に取り組み、分からないところがあれば指導員に質問するというのが、大まかな学研教室でのやり方です。 

 診断テストでレベルを見極め、それにあった段階の教材をやってもらいます。日本語がちょっと拙かったりして学力に遅れがあると、たとえば4年生であっても、3年生の初めの教材に戻ってやったほうが理解できます」

 その診断テストでの教材選択方法も、機械的に組まれているわけではない。「診断テストにくわえて、面談しながら、丁寧に教材選びをやっていきます」と、向井さん。

「この『戻る』ということが学校では難しいのではないでしょうか」と、向井さんは指摘する。たしかに、そうなのだ。4年生のクラスで1人だけ3年生の内容をやるわけにはいかないし、教員の目も届かない。だから同じ4年生の授業を受けることになるのだが、理解できなくて置き去りにされてしまうことになる。

 では、よくつくられた教材の問題を解いていくだけで終わりかというと、そうではない。向井さんの話にも、「分からないところがあれば指導員に質問する」とあった。さらに、向井さんが説明する。

「指導員は前の席に座っているので、質問があれば、そこまで子どもたちはやってくることになっています。しかしMさんの息子さんもそうでしたが、引っ込み思案だと、なかなか自分から質問にはきません。だから、こちらから行って、『どう?』とか『分かる?』とか声がけをします。そうしていくうちに、ほかの子と同じように質問にくるようになります」

 学校で肩身の狭い思いをしていれば、学研教室でも消極的になってしまうのかもしれない。その気持ちが、気遣いと声がけでほぐれていく。

「質問しにきたら、アドバイスやヒントのハードルを上げすぎないように気をつけています。ヒントのハードルが高すぎると、『せっかく訊きにいったのに分からない』となってしまいますからね。そうなると、訊きにいくのもおっくうになってしまいます。最初のころだと、もう答ギリギリのヒントをあげることもあります。それで理解できれば、自信になるし、意欲にもつながりますからね」

●少人数だからこそ効果的な指導

 向井さんの教室は、1回の受講時間での子どもたちの数を10人に制限している。向井さんのほかにスタッフもいるが、それでも目の届くのは10人までだという。ここも、現在の学校には真似のできないところである。

「しかも、学年ごとの区切りはないんです。この教室は3歳から中学3年生までが在籍していますが、3歳の子と中3の子が同じ時間に問題に取り組んでいる姿も珍しくありません。だから、4年生であっても3年生の問題に取り組んでいることに違和感を感じなくていいんです」

 だから、子どもたちも着実に成長していく。「Mさんの息子さんも、最初のころにくらべると、ずいぶん明るくなったし、積極的にもなりました」と、向井さん。当然ながら、「学力」の面でも成長している。Mさんも驚くくらいの変化なのだ。

 ここまで読んでいただいて、お気づきだろうか。同じことは、日本人の子にも起きるのだ。学研教室のシステムは「外国にルーツをもつ子ども」のためのものではなく、むしろ日本人の子どもを対象としている。学年を戻って学びなおすこともできれば、逆に先にすすむこともできる。少人数のなかで積極的に質問することで、力を伸ばしていける。

 それが、「外国にルーツをもつ子ども」も置き去りにしない実績にもつながっている。いまの学校に欠けているものが、ここにはあるような気もする。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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