新型コロナ感染のリスクがあるから子どもを預けるなと言われているようだ、と看護師が嘆く現実がある

(写真:アフロ)

 看護師として働いている母親から連絡をもらった。仮に、Aさんと呼ぶことにする。「保育園に、子どもを預けづらい」という。

 新型コロナ感染症(新型コロナ)の影響で休業が広がっているが、病院はそういうわけにはいかない。もちろん、看護師も休むことができない。問題は、子どもの預け先である。

 在宅勤務ができれば子どもの面倒もみられるのかもしれないが、看護師という仕事では、そうもいかない。近くに親や親戚がいれば預けることも可能なのだろうが、そういう環境にないので、Aさんは普段から子どもを保育園に預けている。

「その保育園も、新型コロナ騒ぎのなかで、登園者は減って、いまは5人前後になってしまっています」

 在宅勤務したり、祖父母に預けることができる保護者は子どもに登園を控えさせているからだ。登園を控えるのが行政や保育園の方針でもある。しかし、Aさんのように、子どもを預けられるところが保育園以外にない人たちもいる。

 緊急事態宣言が発出されてから、外出する人に対して冷たい視線を投げかける風潮が強まってきているようだ。Aさんのように出勤しなければならない立場の人たちがいるにもかかわらず、それを理解しようとしない傾向が強まってきている。保育園でも、それは同じだとAさんは言う。

「最近では、朝、子どもを連れて行くと、『おはようございます』もなくて、いきなり『お迎えは何時ですか?』とつっけんどんに訊かれるようになっています。預けてもらっては困る、という態度が見えみえです」

 それまでの保育園の雰囲気は消えてしまい、保護者と保育士の関係があからさまにギスギスしたものになってしまっているという。新型コロナが保護者と保育士の関係を壊している。もちろん、全部の保育園や保育士が、そうではないはずだ。しかし、Aさんのような立場の保護者を苦しめている保育園、保育士が存在することも否定できない事実である。さらに、Aさんは続けた。

「私が病院で働いているので、新型コロナに感染するリスクが高いと思われているのかもしれません。看護師の子どもだから、露骨に『預けるな』という態度をとられているのかもしれないと思ってしまいます」

 そう考えるまでに、Aさんは追い込まれている。ただ、保育士を一方的に責めることもできない。政府は感染防止のために「3密(密閉空間、密集場所、密接場面)」を避けるように指導している。しかし保育園は、まさに3密の場所なのである。それを完全に避けようとすれば、保育は成り立たない。保育士は、そういうリスクのなかで働いているのだ。

 にもかかわらず、行政がじゅうぶんに配慮しているかといえば、そうではないのが現実でもある。自粛要請のために子どもの数は減ったとはいえ、登園してくる子には普段どおりの保育を保障しなければならない。開園しろと行政は指導しても、じゅうぶんな対策を講じてくれるわけでもない。保育士たちの不安が高まるのも無理はないのだ。

「保育園の先生たちも、できれば在宅ワークしたい気持ちはわかります」と、Aさんも理解を示す。そして、「私だって、可能なら休みたいです」とも言った。

「子どもが熱でも出せば休まざるを得なくなりますから、わざと寒い環境に置かれて風邪をひかされるのではないかと、不安が募るのも事実です」

 とも、Aさんは言った。そう思ってしまうほど、保育園との関係は悪化してしまっている。新型コロナが終息しても、この関係を修復するのは簡単ではなさそうだ。

 Aさんのように、子どもを休ませたくても休ませられないで働いている保護者がいることを、保育園側はもっと親身になって理解できないだろうか。そうした保護者の子どもたちを預かる保育園、保育士の環境をもっともっと改善することに政治も行政も心を砕き、支援する手立てはないのだろうか。

 こうした現状を改善するには、なにより、こんなことが新型コロナの影響で起きている事実に、多くの人が目を向けることではないだろうか。「医療関係者に感謝しよう」と口だけで言ってみたところで無意味だ。医療関係者だけでなく、新型コロナのなかでも外にでて働かざるをえない人たちがいる。「わたしは在宅勤務できているから関係ない」で済ませてはいけない。こんなときだからこそ、ほんとうの気遣いを考えてみたい。