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校長先生、学校をダメにしていませんか? 学校現場のモチベーションを落とすチェックリスト

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:アフロ)

 学校において校長は、大きな権限をもっている。それだけに、「裸の王様」にもなりやすい。

 小学校の副校長であるAさんが教員仲間と話をしているとき、ひとりが「校長の言動に悩まされている」という話をはじめた。それを皮切りに、次から次へと「グチ」が飛びだしたという。それほど、誰もが校長の言動に不満をもっていたことになる。

「一言でいってしまうと、『前に向いていない』ということです。そういう言動は現場のモチベーションを下げます。モチベーションの下がった職場は雰囲気も悪いし、仕事もうまくまわらない。教員がそれでは、子どもたちにとっても良いわけがありませんよね」

 と、Aさん。そこで、職員室のモチベーションを落としている校長の言動をまとめてみよう、となった。そして完成したのが、ここに掲げている30の項目である。

Aさんたちが作成した30項目のチェックリスト
Aさんたちが作成した30項目のチェックリスト

 考えを否定する、話を全く聞かない、話を最後まで聞かない、(話を聞いて・・・)「でもね・・・」と言う、怒鳴る、こうした項目を読んでいくと、浮かんでくるのは校長の「独裁者」としての姿である。Aさんがいう。

「学校の教員組織は『鍋ぶた』なんです。鍋のふたのツマミだけが飛びだしているように、校長だけが飛びだしていて、あとは『その他』でしかありません。それだけ校長のパワーはすごくて、ほかの先生たちは従うしかない」

 これでは自分の力を過信してしまうのも頷ける。そして、ほかの教員のことを「疑う、信じてくれない」となり、「全て自分で指示、命令、判断する」ようになる。教員たちのモチベーションが上がるわけがない。それどころか、わざわざ下げているようなものだ。

「提出した書類にベタベタと付箋を貼って返してくる校長がいるという話もありました。直すべきところがあれば口で説明してくれればいいのに、ひとことの説明もなしで付箋を貼って返してくる。これって、もう嫌がらせですよね」

 そういってAさんは苦笑した。「忙しいから、ついつい、そうなってしまう。別に悪気も、威張る気もない」という校長からの反論もあるかもしれない。自分にその気がなくても、周りから見られている姿が残念ながら真実なのだ。それに気づかないからこそ、「裸の王様」なのだ。

 拙著『学校の面白いを歩いてみた。~公立だってどんどん変わる~』のなかで、横浜市日枝小学校の住田昌治校長は「私が心がけているのは、機嫌よくしておくとか暇そうにしておく」と語っている。住田校長が暇なわけではなく、忙しくても教員が話しにきやすい環境をつくるために、意図的に暇そうに見せているのだ。それで教員が話しにきたら、「何を差し置いても話を聞くようにしています」という。これでモチベーションが下げるわけがない。

 職員室のモチベーションを上げることは、かなり重要なことである。そのために校長ができることは、じつは大きい気がする。モチベーションを下げず、上げるために、チェックリストを見ながら自らの言動を問い直してはいただけないだろうか。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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